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「たらい回しにされてきたけれど、私の居場所はどこにもなかった。どこに行っても、地獄しかなかった。だから」
「……じゃあ、あの飛行機での行動は」
「私が死にたくて、ちょうど良かったから」
そう言って佐羽は食事を再開する。同情なんて求めていはいない。自分には手に負えない過去であることを知らしめることで、澤渡を自分から遠ざけようとする。当然のこと、死のうとしただけで、助けた覚えはない。こんな、死を望む人間を相手にする時間は無駄なのだ。
これからどうしようか考えていると、澤渡が語り始めた。聞き流そう、そう思った佐羽だった――が、澤渡の言葉に、思わず耳を傾けてしまう。
「……あの飛行機には、僕の両親も乗っていた。でも、両親といっても、本当の両親ではないんだ」澤渡は珈琲カップを両手で触りながら言葉を紡ぐ。「僕ね、本当の両親から虐待を受けて、一時期失声症を患った。言いたくはないけれど、僕も一緒だ。保護された後も、何度も死のうと考えた。でも……あの二人が僕を救ってくれた。襤褸雑巾みたいな僕を、何の価値もない僕を、二人は引き取ってくれた」
幸せ。その言葉が滲み出すような微笑みが、佐羽の喉元を締め上げてくる。
「あの二人は、僕に生きる希望を与えてくれた。本当の家族ではないけれど、愛情を教えてくれた。知らないものを、知らなかったことを教えてくれた。僕にとって、あの二人は大切な家族で、心から感謝している、恩人なんだ。だから、もしあの日、爆弾で飛行機が墜落してしまっていたら、間違いなく二人は死んでいた。もしそんなことになっていたら、僕は……死んでも死にきれなかった」
澤渡が立ち上がり、佐羽は身体をびくりとさせる。何故だろうか、指先が震え出す。
「大切な家族を救ってくれたきみは、僕にとって、最大の恩人だ。いくらきみが死を望んでの行動だったとしても、結果的に僕はきみに救われた」
涙を流し、澤渡は頭を下げる。何度も「ありがとう」と呟く。そして、彼は言うのだ。
「佐羽ちゃん、死を望む理由がきみの運命にあるのなら、力にならせてくれ。僕を頼ってくれ。僕は……今のきみを放っておけない」
――やめて、優しくしないで
胸が痛み始め、顔をしかめる。喫茶店、店内にベルが鳴る。頭にベルの音が響く。ガンガンと頭の中をハンマーで殴ってくるかのような、そんな感覚に、食べたばかりのハンバーグを戻しそうになる。
優しくされたくて話したのではない。救いたくて救ったわけではない――否定されてきた人生、今になって誰かに縋るつもりはない。だが、この澤渡が嘘を吐いていないということだけは、今までの経験からはっきりと佐羽は感じ取る。本気で佐羽に感謝し、放っておけないと思ってくれている。
頼ってもいいのだろうか? 澤渡の優しさに甘えてもいいのだろうか? こんな最低な人間が、少しでも幸せを感じたいと願ってもいいのだろうか?
(でも……私は人殺しの)
「――
耳障りな、乾いた声。佐羽と澤渡はテーブル横にやって来た薄ら笑いの男を見た。譲羽佐羽、自分の名前を知っている人間が目の前に居る。嫌な雰囲気に、胸の奥が騒めく。
「ああ、失礼した。俺は
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