ひざまくら(改稿1)

ぴおに

はじまり

昼まで、あと2時間。

デスクで仕事中、LINEが入る。

こっそり確認。

リリーからだ。


「いつもお世話になっております。

申し訳ないのですが今日は誰も都合がつきませんでした。私でもよろしいでしょうか?」

短く返信

「いいですよ」

仕事に戻ると、他の社員が受け持つ仕事を頼まれる。自分の仕事と、頼まれた分を済ませ、正午きっかりに席を立つ。同僚達は誘いあってランチへ行ったり、デスクで弁当を広げる中、足早にオフィスを出て近くの料亭に入る。

座敷に入るとリリーがすでに座っていた。

いつものランチ懐石が運ばれてくる。

「ごめんなさいね、今日はみんな出払っちゃって」

「いえ、大丈夫です。レンタル、忙しいんですね」

「忙しいというより、人が少ないのよね。今、5人だから。もう少し増やさないと。あ、来週新しい人が入るんだけどね。今日もおじさんなら空いてるんだけど…」

「おじさんは…ちょっと…」

「おじさんとご飯食べてもつまんないか。私もおじさんだけど」ニッコリ笑う。

「それはそうと、仕事はどう?まだ不等な扱いされてるの?」

「はぁ、まぁそんなとこです…」

「なんだろうねぇ。山田さんなんて、ほんとに真っ当な人だと思うけど。周りがおかしいのよね、きっと。今の世の中はまともな人ほど排除されるのよ。」


なんとなく、はは…と力なく笑った。





午後5時少し前

同僚がバタバタとやってくる。


「山田さーん、ごめん、これお願いできる?ちょっと間に合わなくて。」

「あぁ、はい…」

「じゃ、よろしく!お疲れっす!」

山田に残務を押し付け、退社する同僚達。

暗くなり、山田のデスクにだけライトがついている。

もちろん、残業代は出ない。

同僚の用事はコンパだ。

山田には恋人はいない。

コンパに行ったことはない。

残業を変わる義理はない。

家に帰っても、特段やりたいことはない。



リリーからLINEが入る。


「いつもお世話になっております。

来週は新人が参ります。至らないことがございましたら、私の方までご連絡下さい。宜しくお願い致します」


「わかりました」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る