第2話給料日七日後の第七兵舎
「シュタッツェ、これで納品は全部だな」
「ああ、確認した。全部だ」
今日は仕事で王城にある兵舎に来ている。今回は窓口が王立養成学院時代の同期だから気が楽だった。シュタッツェは、戦士科の次席であったが腐ることなく鍛錬に励み、今では北方軍に属する列記とした隊長格の一人だ。正直、軍に入るとは思わなかったが、中央軍に配属させないことを条件に肯いてくれた。
「出発は来週ぐらいか?」
「そうだな。先遣隊の話では、天候も落ち着いていて、雪解けも順調らしい」
冬の季節も終わり、北の街・リーヴへとつながる北の街道の点検、保守も北方軍の仕事でもある。北部駐留部隊から外されたシュタッツェは、是が非でも今回の北部巡察遠征に参加したがってたのをしってたから。無事、任遠征部隊に任命されてよかった。
「あと、こっちは例のブツだ」
「見つかったのか!?」
大切な同期の友人の願いだ。かなり無茶したが、恩を売っておいて損はない。別にこいつが良い奴だとか、貴族のくせに平民出の俺を貶さなかったとか、学生時代によく飯を奢ってもらったとかはまったくもって関係ない。恩を売るためだ。
「すまんな、助かる」
「出世払いな」
神妙な顔で頭を下げるシュタッツェに、ニヤッと笑って返事を返す。
「ああ。まかせろ」
軽く拳と拳をぶつけ合う。剣は主に、盾は友に。
ホントは最後に飯でもと思ったが、シュタッツェもこれから忙しくなる。何年先になるかわからないが、その時を楽しみに待っておこう。それは思ったより早く、お互いの立場はあまりにも変わっていた。
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