読書感想文『世界史を変えた詐欺師たち』

茜町春彦

読書感想

◎労働とは、何なのでしょうか?


労働とは、商品を製造することやサービスを世の中に提供をすることだと思います.


たとえば原価500円の材料があったとして、これから労働者が1500円の商品を作ることが出来れば、その労働者は1000円の労働をしたことになります.そして労働の対価として、1000円を受け取る権利が発生することになるのです.


この労働の結果、世の中の保有する資産が増えています.


単に金銭を稼いだからと言って、労働をしたことにはなりません.たとえば、ギャンブルや証券取引で現金を手にしても労働したことにはなりません.




◎ギャンブルとは、何なのでしょうか?


ギャンブルとは、未来を予想して当たれば金銭を得て、外れたら金銭を失うことです.


その金銭は、外れた人から、当たった人へ移動しているだけです.ギャンブルで現金を手にしても労働したことにはなりません.


得をした分と損をした分を合計すると、プラスマイナスゼロで、世の中が保有する資産は増加しません.




◎証券取引とは、何なのでしょうか?


例えば株式証券の投機であれば、売買価格の変動を予想して、当たれば金銭を得て、外れたら金銭を失うことになります.安値で買って高値で売った人は、その差額を儲けたことになります.しかし、高値で買って底値で売ったひとは、その差額を損しています.金銭は、外れた人から、当たった人へ移動しているだけであり、世の中が保有する資産は増加していません.つまり投機は、未来を予想する単なるギャンブルです.


株式証券への投資も、ギャンブルです.


どういうギャンブルかと云うと、株式会社の社員の労働の成果をピンハネする権利を買って、将来その株式会社が利益を出したら配当を受け取り、損失を出したら配当がない、と云うギャンブルです.


証券が取引されても、世の中が保有する資産は増加しません.移動するだけです.従って、投機や投資で儲けたとしても、労働したことにはなりません.




◎営業・宣伝とは、何なのでしょうか?


自分の会社さえ儲かればいいと云う、ゼロサムゲームです.


営業・宣伝の結果、自社には利益があっても、世の中が保有する資産は増加しません.自社の商品が1つ売れたと云うことは、他社の商品が1つ売れなかったと云うだけのことです.




◎経済活動における政府の役割と企業について


経済活動を行なう主体は、企業です.


スポーツに例えると、政府はレフリーであり、議会はルールメーカーであり、司法はジャッジです.


飽く迄も、プレーヤーは企業です.


たとえば、スマホのような新しい商品やサービスが登場したとき、電波を割り当てなどに関するルールを決めるのが議会で、それを監視するのが政府で、揉めたら判断を下すのが司法です.


レフリー役の政府に景気を良くする力はありません.


企業がやるべきことは、消費者が欲しいと思う商品やサービスを開発・製造することです.政府に近づいて補助金や援助を乞うことではありません.




◎通貨の発行と物価について


仮に、世の中に1兆円分の商品があり、貨幣が1兆円流通していて、バランスが取れているとします.そこへ、たとえば商品が5000億円分増えたら、貨幣も5000億円分増やして、経済規模と通貨量のバランスを取るべきでしょう.


また、商品が増えていないのにもかかわらず、貨幣を増やしたら、見かけ上の商品価格は上昇します.しかし、これは景気が良くなったわけではありません.結果的に給与が増えても、物価が上がっているわけですので、自身の経済状況の実質は変わりません.




◎景気を良くする方法


労働することです.


労働者が働いて、世の中が必要とする商品やサービスを提供することです.


政府が金融政策をあれこれ出したら、自動的に景気が良くなるなんてことは無いと思います.




●ちょっと引用してみます.

(P310)・・・デフレ克服のためのインフレターゲット政策というのは、ポール・クルーグマンという経済学者が日本向けに提案したものだった・・・ところが、実際にアベノミクスに繰り入れられ、2013年に日銀が本格的に採用するとなったときから、それは経済学上の論争ではなくなり、ただの「フェイク」対「フェイク」の罵り合いと化したのであった・・・いろいろ問題が多い提案だったが、のちに国際貿易論でノーベル経済学賞を得たことでも分かるように、クルーグマンも決して馬鹿ではない・・・しかし、日本銀行は2%の目標を掲げてそれを2年間でやると意気込んだ.ちまたの啓蒙的エコノミストたちは「お金を増やせば景気が良くなる」と単純な話に落とし込んで煽った・・・案の定、黒田東彦日銀総裁がインフレターゲット政策を実施したが、インフレ率は低いままだった・・・期待インフレ率が上がれば伸びるはずだった消費は全く伸びなかった.もうこのあたりで物価上昇予想と消費行動の間には必ずしも因果関係が期待できないと思うべきだったのに、インフレターゲット論者たちは、社会調査を軽蔑していることもあって無視した・・・アベノミクスは当初、金融政策・財政政策・成長戦略の「3本の矢」ということになっていたが、2015年9月から、希望を生みだす強い経済・夢を紡ぐ子育て支援・安心につながる社会保障の「新3本の矢」に変わった.国民の多くは「なんのこっちゃ」と思ったが、いまやこんなことすら忘れ去られている.もうひとつ笑えるのは、アベノミクス支持派(厳密に何を支持しているのかは問わないとして)が「株価もGDPも伸びて、失業率も・・・

●引用を終わります.


読んだ本の題名:世界史を変えた詐欺師たち

著者:東谷暁(文春新書、980円税別)

発行:2018年7月20日第1刷

(了)

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