アルバム

勝利だギューちゃん

第1話

彼女がいた。

そう、「いる」ではなく、「いた。」

つまりは、過去形になる。


つまり、今はいないと言う事になる。


断っておくが、その子は生きている。

本意ではなかったが、自分から別れを切り出した。


彼女の将来のために・・・


彼女の事は、皆が知っている。

少なくとも、日本人で知らない人は皆無だろう。


彼女は女優、それも、売れっ子の女優。

彼女が出るドラマや映画は、必ずヒットする。


しかも、彼女は主役にはならない。

脇役に徹する。


「脇役にいいのがいれば、作品はヒットする」

これは、ドラマに限らず、漫画やゲームにも言えることだ。

彼女はその典型だ。


よく名優は、主役はやらず脇役になるというが、

彼女もそうだろう。


まだ、彼女と付き合っていた頃、彼女はよく言っていた。

「私は今に、大女優になるわ。そしたら君は私とは、付き合えないわよ」

もちろん、冗談だった。

もし彼女が大女優になっても、互いに別れるつもりはなかった。


しかし、運命というものは、実に意地悪だ。


彼女がデビューする時、「恋人はいてはまずい」ということになり、

彼女のマネージャーから、「別れてくれ」と嘆願された。


僕は、彼女が好きだった。

そして、彼女の成功を願った。


(もし、僕と別れれて彼女が成功するなら、それでいい)


そして、彼女に別れを告げた。

「君の成功のために、身を引こう」と・・・

彼女の言っていた、「私と付き合えなくなるわよ」は、皮肉にも現実となった。


彼女とは幼馴染で、最初は兄妹のような関係だった。

しかし、思春期になるころから、異性として意識するようになり、付き合うようになった。


こちらからは、連絡をしていない。

彼女からも、連絡はこない。


彼女はこれからも、活躍していくだろう。

「誤解は解いておきたい」

それが本音だが、それは我がままだろう。


先日、彼女が婚約したというニュースを見た。

相手は、同じ俳優で、いわば職場結婚だ・・・


僕は、これからは彼女の1ファンで陰ながら応援しよう。

もう、戻れない。


こうして、彼女とのアルバムは閉じた。

これは、墓場まで持っていこう。


さよなら、僕が一度は愛した人よ。

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アルバム 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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