猫と紅茶と喫茶店
紫月 真夜
オッドアイのあの子
コーヒーを片手にアンティークな雰囲気の街を歩く。見知らぬカフェの目の前で佇んでいる子猫。可愛いな、と思いながら通り過ぎた、今日の午後三時。
*
全く変わらない、何処か退屈ないつも通りの日常。何か刺激が欲しくなって、いつもと違う、あの子猫を見たカフェに行ってみることにする。
チリンとベルが鳴り、広がる紅茶の香り。今日は紅茶を頼もうかな、なんて考えながら窓際のテーブル席に。ふと辺りを見回すと、あの日の子猫が丸まっている。この子はお店の看板っ子なのかな。
メニューを覗きながら、どの品種のお茶にするか考える。ダージリンやアールグレイも良いけれど、真っ白なあの子を見てると、ミルクティーが飲みたくなってくる。ミルクの欄を眺めて、お気に入りの茶葉を探す。パッと笑みが零れる。見つけたのは、お気に入りのイングリッシュブレックファースト。ちょっぴりお腹も空いているので、チーズケーキも頼むことにする。
注文して、紅茶が運ばれてくるのを待つ。その間には、お気に入りの小説を読む。この小説に出てくる猫は白のオッドアイの子だったけれど、ここの子はどうなのかしら。帰り際に見ていくことにする。
結局、紅茶とチーズケーキが運ばれてきたのは、残り少なかった小説を読み終えたあと。紅茶もチーズケーキも、いつものコーヒーショップとは全く違う、とても濃厚な味わい。いつもはかなり時間がかかるのだけど、甘すぎない味のおかげですぐに食べ終えることができた。
美味しかったしここにも通おうかな、なんて考えながらお金を払う。その時に聞いてみたのだけれど、あの子猫はやはりこのお店の子。黄色と水色のオッドアイの子らしい。撫でさせてもらったのだけれど、毛がふわふわしていていつまでも撫でれる。実はハウスダストアレルギー気味で動物は避けていたのだけど、もしかしたら猫は大丈夫なのかも。猫、飼ってみたいな。
「ごちそうさまでした」
その一言を呟き、お店を出る。名残惜しそうにこちらを見つめる子猫の目。ふふっ、また来るからね。そう囁き、その場を後にした。
*
家に帰ると、待っているのはいつも通りの退屈な日常。けれど、いつもと違って、やる気がどんどんわいてくる。これは、子猫とカフェ、どっちのおかげなのかな。
おかしな話だけど、一日中、あの子のことを考えていた。まるで、恋する乙女ね。どうせなら、猫を飼いたい。子供の頃から、ちゃんと面倒を見れるかわからないからペットは飼っていなかったのだけれど、子猫ならちゃんと面倒を見れる気がする。今日はもう遅いし、明日にでも猫好きの友人に相談してみようかな。
*
ふんわりと柔らかい陽射しと、小鳥のさえずりで目が覚める……なんてことはなく、目覚まし時計のうるさいアラームで飛び起きる。そういえば、友人と会う約束をしていたのを忘れていた。少し急がないと。
家を出て、待ち合わせしているカフェに向かう。昨日行ったカフェとは違うところだけど、コーヒーが美味しいところ。昨日よりも、幸せな気持ちで歩けている気がする。これも、あの猫のおかげかな。ふふっ、これからが楽しみね。
*
退屈な日常に花を芽生えさせたのは、一匹の真っ白な子猫でした。
猫と紅茶と喫茶店 紫月 真夜 @maya_Moon_
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