第1話 赤との邂逅

参ったものだ。

彼は苛立たしさを覚えながら廊下を歩いていた。

慣れない場所で道に迷っている、というのもあるが何よりもすれ違う人全てに奇異の目で見られるのはたまったものではない。

そもそも仕方ない事とはいえ聖騎士団の本部にいること自体、あまり好きではないのだ。

そう考えていると苛立ちは更に増していく。その時、

「おい、そこのお前。今日入団したとかいう新人だろ?」

そう声をかけてきたのは金髪で細身の男だ。制服を着てる様子から聖騎士団に入っていることがすぐに分かる。

「だったら?」

「おいおい、先輩にしかも由緒あるルーベルス家の人間に対してその態度はねえんじゃねえのか?挨拶をしろよ。挨拶を。」

「急いでるんだ。用がないならどいてくれ。」

「おいおい、敬語を使えよ。そんな事もできねえのか?」

なおも、道を譲る様子はない。

その様子を見て、ついに苛立ちがピークを迎え金髪の男を睨みつける。

男は少したじろいだがすぐに平静を取り戻し、

「ああ?やんのか?」

と凄みにくる。

二人の険悪な雰囲気がピークに達しかけたその時、

「すみません!その人私の小隊の新人さんなんです!」

1人の女性が割って入った。陽の光を受けて赤く輝く髪が目を引く。

金髪の男は舌打ちをし、

「お前の隊の奴かよ。目上への言葉使いがしっかりできるようにしつけておけよ!」

そう言い捨てると不機嫌そうに去っていった。いつの間にか集まっていた野次も少しつまらなさそうに解散していく。

「あ、あの…新しく隊に入るフェル君、だよね?私は第151小隊のガーネット。よ、よろしくお願いします。」

そう自己紹介をした彼女は宝石のような赤い瞳でじーっとフェルのことをみている。

「何?」

「あ、いや……団長さんから聞いてたけど本当に綺麗な白い髪だな…って」

「あっそ。それだけなら早く案内して。」

「ご、ごめんね?すぐ案内するね。こっちだよ。」

そうして、ガーネットが先導して廊下を歩いていく。

その後ろ姿にふと「あの人」の姿が重なり――

頭を振り、忘れぬように自分の心を確認する。

そうして、彼女の後を追って行った。

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