熔鉱炉 (現代ドラマ)


それはそれは意地悪な人がいた。


その表情はどすぐろい影の奥に沈んでいるようだった。




それはそれは優しい人がいた。


その表情は自ずから白くかがやくヤマザクラのようだった。





・・・・・



思い切り砂浜を駆け下りていって、真っ青な海に飛び込んだ。



そこに溶け込むように大きなおだやかな波に揺られながら、一点のむらもなく広がる空の青を見上げた。




ユミはこのとき久しぶりに、ああなんてことはない、自分はもともと一人の人間だったんだと思い出した。



 終

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少々不活発感ただよう短編小説集 イヌヒコ @fukutarou

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