ワイフィリア

ミホーチカ

第一章 私の都眞(つま)(2013年 冬)


 私は夜、都眞つまの、長く艶のある髪をブラッシングする。

 私の両足の間にちょこんと座る彼女は、嬉しそうに頭を揺らす。髪は腰を隠す程ある。櫛を右から左へ。本当は一本一本丁寧に梳いてやりたいがそんな時間はない。少しずつ片手ですくって、ゆっくり梳く。

 都眞は、大きな目でテレビを見つめている。いま流行りのハーフ顔をしたニュースキャスターを気に入っているようだ。短くした髪にはウェーブがかかり、瞼には淡い青色のシャドウを塗っている。シャドウの色と合わせ、オレンジ系の口紅が目立つ。

 都眞は私をちらりと見る。私は首を横に振った。

 都眞のお気に入りは、やっと画面から消えてくれた。絡まった毛先をほどきながら尋ねる。

「今日は、何をしていたの?」

 にゃあにゃあと鳴き、床に寝転ぶ猫を指した。黒猫は興味なさそうにそっぽを向いている。

 

 都眞は小柄だ。百六十センチもない身長に、体重はちょうど五十二キロ。女性の平均体型だろう。朝食はシリアルと苺を食べさせ、昼はずっと寝ているから用意していない。夕食は作ってやっている。好き嫌いがないのでとても楽だし、作るものは美味しそうに平らげてくれる。

 私にとても忠実で、言いつけを絶対に守る。他の女と違ってヒステリーを起こさないし、喚きもしない。私の身体も拒まない。

 もしかしたら都眞は、私の分身なのかもしれない。

 彼女の首筋を指でつ、となぞると、恥ずかしそうに俯いた。

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ワイフィリア ミホーチカ @mihochka2018

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