仕組まれた出会い
朝早くからテラスに躍り出て天気を伺うまだ朝日が顔をのぞかせたばかりなのにもかかわらず、テラスから望む山々や野に陽光が差し込んでいる。
清々しい風を感じてミエルは思わず笑みをこぼす。さっそく室内に戻り昨日、メイアやリリアーナが用意してくれた、服を身に付ける。黒の詰襟の軍服だ、ひざ上丈のスカートは多少短いような気もするが、中にはタイトな下履きを身につけるようになっている。
(動きやすさ重視かな……?ミルズでまだ女性騎士に遭遇したことがないけど、きっと女性物はこういう仕様なのね~)
ブーツは同色で編み上げになっている。一番上まできっちり紐を通してあまった分は上部でぐるぐると巻いて邪魔にならないように仕上げておく、仕上げにリリアーナ持参のヘアピースをかぶる。
姿見の前で身体をひねり、確認すればそこにいるのは別人だ、さすがに愛剣は持っていけない特殊な装飾なので目立ってしまう。
「あなたはお留守番ね。ごめんね」
こたえるはずもない愛剣に別れをつげて、テラスから身を乗り出し、あたりを伺う
「………よし!」
ここに案内されてより、出口までの道順がまったく覚えられていないので出るときはここからだと決めていた。メイアに用意させていたロープをテラスから下ろし慎重に降りていく。
「……あぁ~~あんな所から……ひぃ!」
庭植木の陰に潜みながら小さく叫ぶ
「何となくあそこから出るんじゃないかって思ってたけど……まさか本当にすると…あぶないっ!」
両手に木の枝をもってひそむメアイとリリアーナは高所から降りていくミエルをはらはらしながら見守る。
「ほんと、まじか? って感じだよね?」
「本当にその通りですよ……」
「あれで王女とかありえない、猿か?おれ今猿見てんの?」
「「……………」」
恐る恐る振り向くと、両手に枝木をもってしゃがむ人物に腰が抜けそうになる、ゆったりめのローブを頭まですっぽりかぶり長い前髪に隠れる藍色の目をもつその男は、インシグと旧知であり、噂では特殊な仕事をしているらしいという噂しかない、有名人だ。
式典を行う際にはかならず祭事を筆頭するので重要人物であることは確かだ。無表情の彼からは機嫌を伺うことは困難だ
「「ジェイド様!?」」
「し──猿に気づかれちゃうから」
「あ、あのっあれは、その、非常訓練というか抜け出していうか、逃亡じゃなくって猿芸とか……」
慌てて言い訳をしだすリリアーナはすでに目を回し始めている。
「君、面白いね。大丈夫、君達を責めにきたわけじゃないからね。あ。降りきったみたい」
両手にもっていた枝木を放り捨てて、植木から立ち上がるので葉がばさばさと二人に落ちてくる
「きゃ……」
頭に突如降りかかってきた葉に思わず驚くリリアーナを一瞥したジェイドは
「あぁ。ごめん。───葉っぱ取ってあげる」
そういうなりリリアーナの頭に乗っていた葉を手で払いのける、リリアーナもその行動に驚いて顔を見上げると、ジェイドの指が顔にも近付いてきた
「ぇ?」
「額にも付いてるよ?」
そう言って、男性にしてはほっそりとした指で葉を取り除いて
「じゃぁね~おれもう行かないといけないから、後始末はしっかりね?」
ジェイドは足早に立ち去るとそこには顔を真っ赤にしてしゃがみこむリリアーナと呆然としたままのメイアだけが残っていた。そのはるか上層階・執務室のルーフテラスの淵に頬杖をついたインシグがやりとりを眺めていたのはジェイドだけが知っていた。
「あのじゃじゃ馬め。まさかテラスから出ていくとは」
その姿はすでに兵装に着替えられており、目の色も髪の色もジェイドに変えてもらっていた。
ジェイドは相手の加護の力を自在に操れるという特殊な力をもっている。生まれ持った力は受け継がれる事はなく、また何が影響するのかも解明されていないために力を備わって生まれてきた者はミルズ国では重要視されてきた。信仰深い者達はそれを神の使いだとしているためにジェイドは幼いころから祭殿で育てられてきた。
「さて、後れをとらないように俺も出掛けるとしよう」
城門を潜ろうとすると、城門手前で何やら騒がしい塊を見つける。茶髪に黒の兵装を身に付けたミエルと押し問答する兵士だ。
「騒がしいな。どうした?」
インシグが声をかけると兵士がインシグの胸のエポーレットを見るなり、見事な敬礼をとった。
「楽にしろ、それで何があった?」
「はっ!そ、それが通行証をもたない騎士が門を通せと……」
困り果てた様子で横の騒ぎを見る、その視線の先のミエルを見たインシグは、コツコツと石畳を踏みながらミエルに近づく
「そこのお前。なぜ通行証を所持していない?部屋でも忘れてきたか?」
いきなり現われた、黒い軍服に白い飾緒、腰には金色のグルメットで固定されたサーベル。黒曜の髪と瞳にミエルは驚いたが、さも良い言い訳を見つけたと言わんばかりに
「その通りです、急用でして部屋まで戻る時間も惜しく……」
ミエルは通行証がなければ城門をくぐれないとは知らないだろうし、そもそも用意させるつもりもインシグにはなかった、まして城を囲む高い塀を飛び越えもでないし、どのみちここで息詰まる、それはインシグの予定通りだ。
「そうか。ならば俺がこいつの保証人になってやろう。それでいいだろう」
「へ?……少佐が?───少佐がそうしてくださるなら」
困惑気味に周囲の兵士と顔を見合せながら了承を取る
「で。お前はどこへ行く?急用というくらいならそこまで送ってやろう」
すらすらと進む会話に呆気にとられているミエルを見下ろす
「少佐には良くしていただきましたが自分で行けますので結構です」
「ほう……そういえばお前、見たことのない顔だな?新顔か?どこの部隊に所属している?階級は?」
ずいっと顔をミエルに近付ける、ミエルは多少ひきつった顔をしてみせたが
「あぁ!そうだ急ぎでしたので、やはりここは少佐に送って頂くことにします」
「そうか?ならばさっそく行くとしよう」
城門の脇には軍馬が用意されている
「おい、そこの!」
「はっ!」
「昨日、馬を用意しておけと指示しておいたが、準備はできているのか?」
「はっ!少佐がお乗りになるとお聞きしていましたので、いつもの軍馬をご用意しております!」
元気に答える兵士は、繋いであった馬に鞍をのせにかかる。両手に皮手袋をとおす少佐を横目にミエルは
「助かったけど……一難去ってまた一難……」
ぽつりとつぶやいた。
「いつでもご出発戴けます、少佐!」
「ご苦労」
短く労うとサドルステッチに足をかけ颯爽と跨ると、ミエルに手を差し出してきた。ミエルも乗馬は特異としているが、とにかく一頭しかいない今は相乗りするしかないので少佐の後ろに乗ろうとする
「悪いがお前は前だ。俺は後ろから抱きつかれるのは好みじゃないんでな」
「はぁ?わたしだって後ろから抱きつかれる趣味はないですよ」
「安心しろ。お前に抱きつく趣味はもちあわせてないからな」
そういうなり強引に手を引っ張られ前に座らせられる。
「で、どこへ行くんだったか」
「図書館です!王立図書館へ!」
やけっぱちに応えるミエルが面白くて笑うと、何が面白いんですか!と返ってくる
「もうしゃべるな舌をかむぞ!」
勢いよく走りだしたので、あわててミエルは鞍にしがみついた。城を出て大路地に着くとやっと馬の足を緩める。ほっとしたミエルは改めて待ちの様子に目を見張る
(着いた時は、周りを見る余裕がなかったけど、こんなに活気がある街は初めて……)
色とりどりの屋根を持つ店や、大きなガラス窓の中から覗く豊富な品々、果物屋では恰幅のいいご婦人が行きかう人々に商品をアピールしている。
肉屋のおじさんはお客と歓談している。大路地の真ん中は整備されている歪みのない道を荷馬車が行きかっている、ときどき役人が馬ですれ違ったり治安もよさそうだ。街にあふれる人々の身なりも悪くなく不自由さなどどこにも見つからなかった。ミエルは色々な国を見てきたがここまで素晴らしいといいきれる国は見たことがなかった……
「あれは何かしら……?」
真っ白な建物はある意味、この街から少し浮いているように見える、建物としては3階ほどの高さだろうか、少し無機質なそれを指さす
「あれは、研究所だ。」
「研究所?」
「病を治す、怪我を治す、そういった薬や方法を研究するための施設だ」
(そんなものまで……やっぱりここを選んで良かった……)
「もうすぐお前がいっていた、王立図書館が見えてくるぞ、ほら」
そう言われて、前方に目を凝らせば、木々で周囲をぐるりと囲まれた中に建造物が見える。近づくにつれてその大きさに驚いた。敷地内に入ると、馬を厩舎に繋ぎ徒歩で進むことになる、豊かな芝生に整った植木、所どこにはベンチが置かれているがあり本を読んでいる人もいる
「借りてきた本をああやってベンチで読んではまた借りに行くというやつもいるし、ほら、あそこで本を枕代わりにして寝てるやつもいる」
指さした方向を見ると確かにくつろぐ人々も思いのほか多い。テラコッタの道をまっすぐ進むといよいよ入口が見えてくる。
「すごい………」
レンガ作りのその建物には縦長に並ぶガラス窓には黒い枠がはめられており重厚な趣があるミエルの少し後ろを歩くインシグはその様子をつぶさに観察している。
図書館内は大理石の床に天井にはシンプルながらも美しい光をはなつ月光石が下がっている、ただしここに下げられているのは見たこともないほど巨大な月光石だ。壁一面に寄り添うように立てられた本棚は脚立にあがらなければ一番上まで届きそうにないほどに高い、さらにそれが等間隔に丸く円を描くように何列もある、その中央には本を読むための机が並べられている、小さな月光石がそれぞれの机にあるようで、広い館内は素晴らしく明暗を分けている。
「ここここ、これは……よ、ようこそおいでくださいまました」
しどろもどろの早口に驚き振りむくと、そこには短い茶色の髪があちこちにとびはね、いかにもきよわそうに垂れ目の目元には二重掛けのメガネがかかっている、手をしっかりと組んで話す彼は助けを請うようにさえ見えてしまう
「あぁ、君は確か、クロームの愛弟子だな?そう……サシャといったな」
「ああああああああはいそ、その通りでございまして……!このたったびは、へい───うがが」
「落ち着いてくれるかな……サシャ。事前に書簡を送っていたのは知ってるな?それは何故かな?驚いてほしくなかったからだ、ん?」
サシャの口をふさいだまま鬼気迫るインシグにサシャは白目をむく
「ちょっ……少佐その人殺す気ですか!?」
慌てて止めにはいるが、まだ少佐の顔は鬼の形相だ。
「わかってくれたかな?サシャ?」
「───びゃい」
口をふさがれながらも何とか返事をしたサシャにミエルは驚くも、何とか落ち着きを取り戻した後、こじんまりとした個室を案内される
「ここは?」
「ここは来賓用の個室です、といっても扉はありませんので集中したい方用の空間といいますでしょうか……あ、あの、それではぼくは下がらせていただきますが、御用があれば職員にお声をかけていただければ対処いたしますので───これで失礼いたします、へい」
ゴホン!と咳払いをした少佐にサシャはすぐさま踵をかえして去ってしまった。
(変わった人もいるものね、返事にへいなんて使う人初めてだわ)
すっかり個室に設置されていた椅子に座って本を開き始める少佐を見てミエルは首をかしげる
「少佐もこちらに御用があったのですね?」
「ん?あぁ!たまには軍事から離れておかないとな。頭が鈍るだろう?」
椅子で斜にかまえて本を掲げて見せる。
「お前も何か急用があったんだろう?調べものか?まぁ、俺には関係ないから好きに過ごせ、帰るときには声かけろよ。どのみち帰る場所も同じだ送っていく。」
断わろうにもすでに本を熱心にめくり始めているのでタイミングを逃したミエルは一つため息をついて、目的の本を探すために広い図書館内をとりあえず散策することに決めた。図書館は5階仕立てになっている
一階から最上階まで吹き抜けになっていて解放感もある。広い廊下の脇には水花壇があり白い花が咲くその下には清らかな水が滞ることもなく流れている、静かな館内には上質な大理石を踏む足音と紙をめくる音、水の音がみごとな調和をなして、とても心地よい
「この膨大な蔵書の中から探すのは時間がかかりそう……」
「何かお探しですか?」
高い本棚を前にしてつぶやくミエルにそっと優しい声がかかる。隣には背の高い美女がほほ笑んでいた。やわらかい茶色の髪をまっすぐ後ろにながし、切れ長な瞳は紫の虹彩を持っている。
グレーのネックにクリムゾンレッドの外套をまとっている。
「すみません、何かお困りのご様子でしたのでおもわずお声掛けしてしまいました」
「いいえ、とんでもない……」
「私はここに長い事通い詰めていますから、もしおっしゃってくれたら見つけられるかもしれませんよ?」
この美女に頼ってしまっていいものか考察するも結局は探しきれなければ、また来なければならなくなり、しかも次は上手くいくかわからないのだ。
「古文書を……さがしているんです。あとはこの国の記録を」
「古文書、は、そうですね……この国の記録というのはどういったものですか?」
「過去に起こった災害だったり、あとは何かが大量死したとか大発生したとかの記録です」
「それならこちらにあったと覚えてます、案内いたしますよ」
女性に従って3階にまであがると
「ここから、ここまでがそうですよ」
「けっこうな量ですね!」
嬉々とするミエルに首をかしげる
「これを読みたいとおっしゃる方は今まで見たことがありません……」
じっと見られていたことに気づいたミエルはごまかすように曖昧に首をかしげておくだけにとどめた。
「古文書は、さわりだけなら確か5階の2736号棚にあったとおもいます、私もう行かなくてはいけませんので失礼しますね」
「ありがとうございます!助かりました───あなたのお名前を伺っても宜しいですか?」
「クロエです。あなたのお名前は?」
一瞬、本名を名乗ってしまいそうになり、何も考えてなかったので母の名を借りることにした
「……テレスです……テレス=リズスティアです」
にっこりほほ笑んだクロエはうなずくと帰って行った。
手に持てるだけの本を持って個室に戻ると、少佐は本を顔にのせたまま寝ていた。
「結局は脳筋軍人だったって事ね」
寝てくれているなら、好都合。まずは重要な本から読んでいく、この国の災害記録だ。だいぶ古いものもあるようで、たまにかすれて読みづらいものもあるが頭に叩き込んでいくミルズ国はもともと強い岩盤の上に築かれていた、山々に囲まれ、西には海も存在していて国交も今では盛んになりつつある。
しかに山々に囲まれて居るせいか、気流が流れ込むことによっての強風や特に顕著なのは水災害である。それもあってか歴代の王達は水害対策はしてきたようだが……ミエルには不十分に思えた。しかも近年では気候の記録は付けられていないようである。
(平和になれすぎてしまったんだわ……歴代の王達の努力の賜物ね……)
「あ、ああの?すみません~」
ぱっと顔をあげると個室をそっと覗くサシャがいた。
「はい?なんでしょう?」
「閉館のお時間なんです~……」
「えっ!」
慌てて窓の外を伺うと、もうすでに日はおちきっていて、王立図書館の広場には街灯の月光石がぼんやりと光っている。かなり集中してしまっていたようだ、正面を見るとまだ寝てる少佐がいる。このままにして一人帰ってやろうかとも思ったが、ここまで連れてきてもらった恩もあるので仕方なく起こすことにする。
「少佐?────少佐!」
まだ起きない。ミエルは少佐の脇に屈み、耳に自分の細い指を思いっきり差し込む
「うわぁ!!!!」
顔面にのせていた本を思い切り飛ばしながら跳ね起きた少佐は目を白黒させている
「起きて下さい少佐、帰ります。」
「お前もっと他の起こし方があるだろ……」
「これ以外は知りませんね」
にやりとするミエルを信じられないものでも見るようにインシグは見ていた
帰りをサシャに見送ってもらい、図書館を後にした二人は、また来た道を戻るが、夕闇でもまだ商売をしている店があるらしく、路地は月光石で優美に照らされ昼間とは違う賑やかさがあった。馬に揺られるミエルに
「用事はすませられたか?」
少佐の声がかけられるもミエルは
「はぁ……まだ完全にではないですけど、収穫はありました」
「そうか。まぁ俺は目的をまったく達成できなかったがな。」
(それは寝てたからでしょ)
とは声に出さない、今回読めたものはさわりのようなものばかりなのでまた抜け出して読みにいかなければと密かに決意していた。
「そういえば、お前名前は?」
「………テレスです。」
「テレスか……テレス俺はたまにあそこに行くことがある。次があればまた連れて行ってやろう。行く前の日にはかならず城門の厩舎にこの軍馬が用意されているだろうから都合が合えば来い」
「そうですか、もっともわたしもいつ行けるかはわかりませんが、都合があえばお願いします───そういえば少佐の名前は何と言うんですか?」
「デルク」
「デルク少佐。ですね」
すっかり夜が訪れたころ城に着いた二人は、城門で別れた。ミエルは自室から下ろしていたロープを頼りにまた昇らなくてはならない、真下まで来てロープが無い事に絶句する
「もしかして……部屋にいないのがばれた!?」
メイアとリリアーナが心配になるもし、居ないことがばれていたらどうなるか……
「ミエル様!」
メイアの声にはっとする。
「無事だった!───ロープがないから何かあったかとおもっていたわ」
「こちらの台詞ですよ!こんな時間まで図書館で寝てたんですか!?」
(寝てたのはデルク少佐です)
メイアは植木の陰にミエルを引きこむと着替えを差し出す
「ここで着替えていただければ、ロープを使う必要はありません。」
「そう、そうね……ただここは外で……」
「これだけ暗ければ見えません!早く着替えて下さい!」
流されるままに着替えをして、何食わぬ顔で部屋に戻る。ただ一つの不満は用意されていたもので、裾の長い、ゆったりとしたドレスだったということ。コルセットはしめなくてよいので楽だが廊下ですれ違う人々の目線が痛い。
自室の前まで来ると、リリアーナが扉の前で右往左往している。あきらかな挙動不審ぶりにリリアーナに隠し事はできないのではと疑問がわく
。
「おや?もう具合はよろしいのですか?お夜食も食べれないほどだったと聞いていましたが」
「フォノ様……!」
あわてて腰を折るメイアに気づいたリリアーナも何かを言いかけるも腰を折る。
「ええ、いまはすっかりよくなりましたのでご心配なく」
モノクルがキラリと光った気がする。
「やはりアライナスの人間。すばらしい体力をお持ちですね。」
ミエル自身は馬鹿にされても矜持は傷つかないが。
「フィノ様、私はいくら貶されても恥とも思いませんが───私の国民をこれ以上馬鹿にした発言をなされるようであれば容赦しません。」
「───大変申し訳ありません。」
フィノはミエルの目をしっかりと見つめたまま深く礼をとった。
ミエルはそれ以上話しはないと部屋に入った。
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