姫神付きメイドの受難 1

 ───ミエル付きメイドの受難────



 ありえないわ、このアライナス王女。

 インシグ陛下の晩餐に男の恰好


 しかも!


 そこらあたりの訓令生が着用するような、白いシャツに白のクラヴァットにピッタリトラウザーにブーツなんて


 横を見ればリリアーナが白目で気を失いそうにしている。

 なんてことを……!


 これまでの二ヶ月の間にも陛下からお召し物、アクセサリー等贈られている

 一級品の布地のドレス

 カットも息が詰まるほどに輝く宝石

 洗練された靴


 にも関わらず、常にこの格好


 なんなら着るものも持たずに来たから、訓令生の制服を借りてきてほしいだの

 そのたびにどれだけ私たちが白い目で見られてきたか……


 それだけならいざしらず、この方は敵国の王女、うらみつらみしかないのに。


 食事にしたって、メイド等と同じものを要求されたり


 入浴にしても一人で


 室内で剣を振り回して何事かと思えば鍛錬などと平然と言ってのけ


 扉前で立ち指示を待つ私たちに疲れるだろうとこっそり椅子を用意されていたり、


 メイキングに入ればベッドは使われた形跡もなし


 素晴らしいソファには鎧がおかれ、長椅子はなぜかテラス方向へとひっぱられ、しかもここ最近、さらにテラスへと近づいている。


 そのうち長椅子がテラスにでるのではないかとそっちのほうが心配になってきてしまった。


 そう


 この王女、まったく王女らしくないのだ。

 だからというわけではないが、敵国に対する嫌な感情が薄れてきてしまっている


 わたしだけではなくそれは、リリアーナも同じようだった。


 めくるめく回想していると、リリアーナがはっとしたように現実に戻ってきた



「いけません!絶対に!今日という今日こそは絶対にドレスをお召しください!!」


 えぇ……とあからさまに嫌がるこの王女、兄弟にするように頬をつねりたくなるがこらえる


「その恰好ででれば、フィノ様がどのような仕置きがされるかご存じで……?」


 知らないけど。


 さきほどの絶対零度を武器に脅してみる


 はい…とうなだれてしゅんとする


 キュン………………

 いやいやいやいやいや!!

 二人して頭を左右にふって思考を今夜の晩餐にむけて切り替える


 さっそく二人で、入浴、衣装の選別にとりかかると


 ふとリリアーナと目が合う、同じことを思っていたらしい


 子犬か!?

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