皇帝の思惑 1
執務室
ルーフテラスから見える景色はすでに茜色をまとっていた、茜色の空の下には丁寧に仕上げられた庭園、その奥には広大な森が広がり、さらにその先には滝を持つ崖の下に豊かな泉が広がっている。
「あれが姫神、噂異常でしたね」
「俺もっといかついの想像してた。」
ゆったりとしたソファに腰かけているフィノ横に居並ぶ男は黒いフード付きのローブをまとっている、丈は腰まで届いている。
赤みがかった銅色の髪はぼさぼさにならない程度に伸ばされていて、長い前髪にちらりと見える瞳は、藍色、深い茶色のブーツにはいくつもの金具装飾がついているが、あれは見た目通りではないことを、インシグは知っている。
「インシグは、しってた?あんなまさに絵にかいたような女だって。」
「ジェイド、陛下を名指しで呼ぶんじゃない、何度いったら――」
「かまわん、今頃、恭しく傅かれても寒気がする」
眼をぐるりとまわしてそう答える
「やだな、インシグになんかに傅くわけないじゃん。」
プフーっと長い袖を口に当てて笑うジェイドに、インシグもフィノもどんよりとした、黙っていれば見た目も良いのでことさら口の悪さが残念でならない
「それで、ジェイドから 視て 彼女はどう視えた?」
うーんとジェイドは首を右に左と動かしながらも答える
「それがさ、不思議なんだけど何も感じない。ほとばしるような魔力も視えない」
モノクルをくいっとあげながらあきれたようにフィノはジェイドを横目に見やる
「ほとばしるって‥‥‥貴方は‥‥‥」
さも面倒くさそうにジェイドは肩をすぼめる
「だって。何も 視えなかった んだからそう答えるしかないでしょ?」
机の上に山のようになってしまった書類に目を落としながら、インシグはさらに問う
「そうか・‥‥だが確かに見た、彼女の目が光った」
だから、おもわずあの時、立ち上がってしまったのだ。
ジェイドもフィノも静かに、インシグの様子をうかがっている
「まぁ。インシグがそういうならそうなんじゃないの?だってさ、俺が知っている知識なんてこの世界のどれくらいに相当するのかも知らないじゃん、未知の領域があったって全然おかしい事じゃないんだし。まぁ、それでもまだ何かを知りたいんだったら王立図書館とか、古書堂とか、あ。それより異民族の文献とか読み漁って、それか」
ゴッ!!その音とともにグアッと叫び声が上がる
「ちょっと黙りましょうね、ジェイド」
フィノがジェイドの頭を拳で殴っていた。インシグの顔が引きつる、フィノの拳の威力を思い出していた。
「おいおいその事は調べていく事にする、‥‥アライナスに書状を送ってくれ、第二王女を確かに預かったと」
「「まじか!!!!」」
ブンと音が鳴りそうなほどでインシグに振り向き二人同時に叫んだ声が城内に響いた
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