3-5

「……ん?」


 その音に気が付いたのは浴室から出た直後のことだった。

 玄関のインターホン。それが何度も鳴っているのだ。

 真希菜は脱衣所に干してあったバスタオルを引っ掴んで急いで体を拭き、髪を乾かすのもそこそこに、下着と制服のシャツ、スカートを身に着けて廊下への扉を開けた。


「……お父さん、帰ってきたのかな」


 朝起きたばかりなのでまだ鍵は開けていない。鍵でも忘れて、入れないのかもしれない。あの父ならありそうな話だ。

 しかし飛行機の時間もあるので帰るのは昼過ぎになるといっていたはずだが、予定が早まったのだろうか。

 そしてこの間も、インターホンは今も絶え間なく連打されている。


「もう、そんな鳴らさないでよ……」


 真希菜はやれやれといった面持ちで、インターホンの親機があるリビングに移動する。一応、インターホンのカメラで来訪者の姿を確認してからと思ってのことだった。

 だが真希菜はそのカメラに映ったものを見て、


「ひぇあっ!?」


 変な声を出した。


「…………」


 真希菜は恐る恐る、もう一度それを確認する。

 得体のしれぬ黒い何かがそこには映し出されていた。

 それが瞳であると気づいたのはしばらく経ってから。

 そしてその後、瞳はインターホンカメラから離れ、カメラはそこにある物体の輪郭、全体像を捉える。

 そこにいたのは黒いコートを羽織った――昨日のロボット少年だった。


「く、クロノ君!?」


 真希菜はインターホンの通話マイクをオンにし、話しかける。


「ちょっと、何してるの……?」

『ああ。やっと通じた。初めて押したよこんなもの。壊れてるのかと思った』


 クロノの声音は昨日のそれと変わりない。服装も同じく。

 しかし妙だ。服は昨日あれだけボロボロだったのに、今は新品のようになっている。デザインは、同じようなものだが。


「あの……一体何……」

『またやっちゃってさ』


 言って、クロノはコートの右袖と、その下にあったトップスの袖を軽く捲る。が、そこには昨日直ったはずの腕が全く見当たらなかった。

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