3-3
目覚めは意外と普通だった。変な夢を見たような気もするが、気分は普段と変わらない。少しだけ肌寒い気温も、遮光カーテンの隙間から覗く朝日が少し目に痛いのも、いつもと同じだ。
「何時……?」
真希菜はベッドサイドのテーブルに置いていたクォーツ・フォンを手にした。ディジタル時計が刻む数字を目で追う。
ぜろろくいちぜろ。
(……目覚ましより早かった)
真希菜はアラームを切り、上半身を起こすと両手を組んで腕を伸ばした。薄着になると途端に自己主張を強める胸の双丘がぐっと寝間着を押し上げる。そして力を抜くと同時、心地よい脱力が体を巡った。
真希菜はベッドから足を下ろして立ち上がると、小さくあくびをしながら、窓に近づいた。足にフローリングの冷たさを感じつつカーテンを開ける。部屋に飛び込んできた日光は柔らかく、空に雨の気配は遠い。
「……ふ」
何ということもなく、ため息一つ。別段重くもなく、軽くもなく。
そして真希菜は微妙にピントが合いきらない眼をこすりつつ、備え付けのクローゼットに向かう。
だがその際、部屋にある自分の勉強机が視界に入った。真希菜はふとその机の前で立ち止まって、机の上の、あるものに視線を移す。
それは水晶――昨日、あのロボット少年から貰った水晶だった。傍らにはいくつかの分厚い水晶式機械の専門書。これは父の書斎にあったものだ。
機械関係のものでも本は読める。なので真希菜は昨日帰ってから、何かあの世界に関係する情報がないかとあれこれ調べていたのだ。当然、インターネットも使って。
しかし残念ながら特に興味深い記述などもなく、結局、わかったことなど何一つなかった。
(……まぁ、当たり前か)
真希菜は机から視線を外し、クローゼットの前に移動する。かけてある制服をハンガーごと手に取り、そのポケットにクォーツ・フォンを入れる。次に傍のタンスに手を伸ばし、下着やら靴下やらを見繕った。
「……今日、お父さん帰ってくるんだっけ」
そして真希菜はそれらを手に、そのまま部屋を出た。
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