1-12

 ――彼女はただ、喜ばせたかった。

 そのために、そのためだけに、彼女は世界を作った。

 だがそれを許してくれるほど、世界は単純ではなかった。

 人を滅ぼすものは、いつだって過剰な力だ。

 使い方を間違えれば、それは容易く世界を破滅へと導く。

 しかし彼は言った。

 そうした力を御すことができるのもまた、人だけではないか、と。

 だから彼女は、それに賭けた。

 身勝手な創造の後始末だと知りながら、世界の命運を彼に託した。

 鋼の躰に、正しき人の魂を。

 これが世界の守護者を創り上げる唯一のこたえなのだと自身に言い聞かせて。

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