第4話 模擬通学(バス編)
======恒介部屋======
入学式まであと10日。
引っ越しの片付けも終わり一息ついていた。
「いやー、疲れた。」
そう言って寝転がった。
これからまだやることがある。電車とバスの定期買って、色々買い物もしたい。
「ショッピングモールとかないかな。
それに入学式までに1回大学まで行っておかないと…方向音痴だからなぁ。」
すると、
「こーすけー!宮川さん呼んどるよー!」
突然、園田ばあちゃんの声がして飛び起きた。こんな真っ昼間から何だろうか。
「はぁい!今行くー!」
======玄関======
「あ、よう。」
「よう。どうした?」
「ねぇ、明日暇?大学まで一緒に行こうかなと思ったんやけど。」
突然のお誘い…!これは行かねば。
「明日?暇だよ。僕も一度大学まで行ってみなきゃって思ってたところなんだよね。大学で受験してないからさ。」
「そーなんや。じゃあ明日、バス停に5:30集合ね。」
は、早い。
「…お、おっけー!バス停に5:30ね。」
「あ、定期買うからお金持ってきて。あと買い物するならそのお金も。」
「りょーかい。」
「じゃあまた明日。」
そう言って彼女は帰っていった。
……5:30集合。いや、早すぎる。早すぎないか。彼女にとっては普通なのかもしれないが、僕にとっては辛い。
まった、これ毎日続けるってことか?
耐えれるのか?
…そうだよ、ここは都会じゃない!田舎だ。忘れてた。バスも電車も、これに乗らなければ遅刻確定という状況だ。ずっと便利な暮らしをしてきたからいつも余裕ぶっこいて、電車の時間なんて気にしてなかった。
ん?ってことは、僕は彼女と通学時は常に一緒…ということになるよな。
「……まじか。」
僕は一気に顔が赤くなっていくのを感じた。
======恒介部屋======
部屋に戻り、明日買うもののリストを制作した。
・定期
・ノート
・定期入れ
・ファイル
・リュック
「とりあえず、こんくらいかな。」
リュックに明日必要な物を入れて準備した。
…あぁこのリュックももう何年使ってるだろ。そろそろ買い替えようかな。
中学生1年の時、母が誕生日プレゼントで買ってくれたリュック。中学の時は遊びに行くときよく使った。高校に入ってからはそれを通学用にして3年間使った。
もうくたくたで、破けてるところもある 。でもたくさん入るしポケットもあるから結構便利で使い勝手が良い。
だけど、なぜか捨てられない。
「うん、やっぱ大学でも使お。」
僕は買い物リストからリュックを消した。
======翌日======
ピピピピッピピピピッ…ピッ
「…んん。……ハァ、…4:45。」
今日は大学へ行くんだった。起きなきゃ。
布団を片付け着替えて居間へ向かう。
「おはよぉ。(はぁああ~)」
「あら、大きなあくび。おはよ。今日大学行ってくるんやろ?はよ準備しない。」
「…うん。準備はもうしてある。」
「そーけな。ほな、朝ごはん食べ。」
今日の朝ごはんはご飯に味噌汁、そして漬物とトマト。今日も美味しい。
「ごちそうさま」
そして、部屋にリュックを取りに行き、靴を履いて外へ出た。まだ、日の出前だ。
======バス停======
バス停まで歩くこと15分。
彼女は既に到着して、暗いにも関わらず本を読んでいた。
…あぁかわいい格好だぁ。いつもとは違う、女の子って感じがする。
僕に気づいて顔を上げた。
「あ、おはよ。」
「おはよ。早いね。何時に着いたの?」
「5:10。」
「はや!え、それ何時起き?」
「4:00」
まじか。僕には無理だ。
「す、すごいね。僕ならその時間まで起きてられるよ」
「準備済ませとったし、暇やったでもう出ようかと思って。」
バスが来た。もちろん誰も乗ってない。
大学に間に合う電車に乗るためには、この5:34発のバスに乗らないといけない。
======バス内======
彼女の隣に座った。
最初は躊躇した。隣に座るのを。だって貸切状態のバス内に、たった二人が、二人がけの席に座るなんて。
でも彼女は「座りなよ」と言ってくれた。
あぁ、女の子が隣にいるなんていつぶりだろうか。最寄り駅まで15分。ずっとこの状態なのか……!
バスに乗ってる間、彼女はずっと本を読んでいた。とても楽しそうに。だけど、ブックカバーがしてあって何を読んでいるのか分からない。
駅に着くまで何も喋らないのも気まずい。
かといって、楽しそうにしているのを壊すのはなぁと、僕の中で葛藤が繰り広げられている。
話しかけようか、しない方がいいのか…
どっちだぁー!
「次は終点、天野駅」
あ!着いてしまった。
結局話すことなく到着。
僕はポケットから小銭を出し席を立った。運賃を払い、バスから降りようとしたら、運転手さんが、
「彼女、連れてきてよ。」
ん?僕は後ろを振り向いた。
彼女はまだ席で本を読んでいた。
「ちょっと、もう駅着いてるよ。」
僕は彼女の元に走って言った。
彼女はびっくりしてこちらを見た。
「え?あ、あぁごめん!」
彼女は急いで運賃を払い、二人でバスを降りた。
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