第3話 散歩

======宮川宅=======


ピピピピッピピピピッ。バシッ!

「‥‥ん。7時か‥起きよ。ああ、そうか家じゃないのか。」


見慣れない天井に少し驚いた。

僕は着替えて居間へ向かった。




「おはようございます。」


「あら、長野くん、おはよう。良く眠れたか?」


「はい。おかげさまで。ぐっすりです。」


そういえば、宮川さん見てないな。

「あの、なるさんはどちらに。」


「ああ、なるなら畑やよ。」


畑‥‥

「そうですか。毎朝畑に?」


「そうねぇ。いつも5時くらいに起きるかな。」


………ご、5時!?早すぎる。

「そんなに早いんですね。」


「よおけ手伝いをしてくれる良い孫じゃよ。ささ、顔洗っといで。朝ごはんにしよかね。」



今日の朝ごはんも味噌汁と白米、それに目玉焼きにウインナー。ごく普通の食卓になぜか心踊る。


「ただいまー」


「なる、おかえり。手洗っといで。朝ごはんにしよ。」


「はぁい。」




朝ごはんを食べ終わり、部屋で荷物の片付けをしていたら、

「ねぇ、荷物今日届くって言っとったやん。何時にくるんや。荷物運ぶの手伝うで。」


「ああ、荷物ならお昼に到着する予定だよ。手伝ってくれるのはありがたいけど、大丈夫だよ。そんなにないし。」


「そーか。じゃあ、荷物くるまで、この村案内したるわ。9時半には出かけるで用意しとき。」


「わかった。ありがとう」


……ん?まてまて。二人で散歩ってことか?

ひゃゃゃゃゃっ!




======外======


「よし、じゃあ出発。」

「うん。おねがいします。」


この村にあるスーパー、郵便局、最寄り駅までの道、公民館等を案内してくれた。



案内されている途中のこと。


スーパーの店員さんから、

「おお!なるちゃん、彼氏か?笑ついに連れてきよったか!」


…って。それに、

「ち、ちがいます!園田さんの親戚の人です。こっちに住むから色々案内しとるだけ!」


…そんな全力で否定しなくても。笑。


「そーかそーか笑。すまんすまん。」





道行くおばあちゃんからも、

「あら、なるちゃん!ええ男連れとるなぁ」


…って。どんだけ絡まれるの笑。




「みんなから凄い絡まれるね…。なんかごめん。」


「いや、謝ることないよ。若い男の子が珍しいだけやよ。」


「ああ、そゆこと。たしかに見ないよね。同世代の子。」


「やろ?…で、どうや、ええとこやろ。まぁ、山しかないけど。」


「うん。小さい頃来たときと変わってないや。」


「…え?昔来てたことあったん?」


「うん。園田さんには小さい頃からよくお世話になっててね。夏休みとかに遊びに来てたんだ。虫取りして川で遊んで。」


「…へぇ、そうなんや。」


「昔、この村に住む子とよく遊んでたんだよね。もう名前も年齢も忘れちゃったけど。」


「今はうち以外誰も子供はいないよ。」


「やっぱりそうなんだ。みんな外へ出ていっちゃうもんね。」


「う、うちは、…んが来て…れ…うれ…った…。」


………今なんか言った?聞き間違い?


「ごめん、今なんて言ったか聞こえなかった。もっかい言ってもらえる?」


「う、うちは、な、長野くんが来てくれて、、う、嬉しかった。その、同世代がいないから、話し相手がいなくて。」



「あ、あぁ、ぼ、僕もこっちきて同世代の子がいて、しかも同じ大学だし!う、嬉しかったよ。」


……やっばい、顔が、熱い。


「よかった…。うち無愛想やし男っぽいって言われるし、もしかしたら嫌われるかもって…。」


「いやいや!!そんなことないよ!困ってたところ助けてくれたし、お家の手伝いもこなして、凄いよ。」


「あ、ありがとう。そんなに褒めてもらえるとは思わなんだ。」


彼女はそう言ってうつむいてしまった。


僕は彼女の顔を少し覗き込んだ。




……耳まで、真っ赤だった。

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