第2話 村に到着

======バス停======


入学式2週間前、村のバス停に到着。


「久々に来たわー。」


見渡す限り、山ばかり。住所は教えてもらったが、久々過ぎて記憶が曖昧だ。


「はぁ。」







「大丈夫?」



一人の子が声をかけてきた。


背が低くショートカットで、耳当てをしていた。一瞬、男か女か見分けがつかなかった。


「どこ行くんや?」


声は高くもなく低くもなく。


「あ、園田さんっていう家へ行きたいんですが、、」


「あぁ、園田さん家な。案内したる。」


そう言って歩き出した。


女の子…かな? 年はいくつだろう。




=======道=======


歩いてる間、沈黙が続いた。そしたら、


「こっちに住むんか?」


そう言ってきた。


「はい、4月から大学に通うので、親戚の家でお世話になります。」


「え、ここから大学通うって、もしかして城北大学か?」


「はい。そうですけど…」


「うちも。4月から同じ大学やな。」


そう言いながらこちらに向いてニコッとした。可愛い笑顔だ。女の子だ。

「え!そうなの?!同じ大学なんだ!

学部は?僕は工学部の機械工学科。」


「…え、うちも。」


…なにこの展開。大学も学部も学科も一緒だなんて。漫画かよ。


正直、見た目は中学生か高校生にしか見えなかったから同い年と知って驚いた。


「この辺に住んでるの?」


「うん。でも、ここに来たんは2年前から。」


「そうなんだ。あ、名前聞いてもいい?僕は長野恒介。よろしく。」


「うちは、宮川なる。よろしく。」


…宮川ってどっかで聞いたことがあったようななかったような。


「あ、ねぇ、大学まで行ったことある?」


「受験しになら一度だけ。あ…もう少しで園田さん家着く。」


「調べたら3時間って出たんだけど、実際もそんなもん?」


「うん。冬はもう少しかかる。」


「そうなんだ…やばいな。」


田舎、舐めてた…。



======園田さん家前======


そして、園田さん家に到着した。


「園田ばあちゃーん!親戚の人来たよー!」


しかし、誰も返事がない。今日着くって連絡してたはずなんだけどなぁ。


「あれ、畑かな?いや、お出かけかもしれん。なぁ、園田さん、今居ないもんで、うち上がってきゃ。戻ってくるまで待っとき。」


「え、いいの?」


「うん。うちん家隣やし。もう3時や、田舎は日の入りが早いで外で待つ訳にもいかんやろ。凍え死んでまう。」


…え、となり。あ、だからなんとなく記憶にあったのか。




======宮川宅======


「ばあちゃーん!!帰ったよ。」


「あぁなる、おかえりなさい。あら、そちらの方は?」


「あぁ、園田さん家の親戚の人なんやと。長野恒介さん。4月からうちと同じ大学に通うんやと。今園田さん家行ったんやけど多分出かけておらんもんで、今日1泊させてもええか?」


「初めまして、長野恒介です。」


「おぉ、ええぞ。部屋ならいくらでも使わせたるぞ。ほら、上がりな。」


「うちは無駄に広いんや。」


「へぇ、そうなんだ。」


玄関に靴を脱ぎ、居間へ入った。

その瞬間、畳のいい香りがした。僕はこの匂いがとても好きだ。


「なぁ、今日の着替えは持っとる?」


匂いに浸っていたから反応が遅れた。

「…んが?!今、なんて?」


やっべ、変な声出しちゃった。恥ずかし。


「…ふふっ笑。着替え、持っとる?」


「あ、うん。荷物は明日届くことになってるから、今日必要なものは持ってるよ。」



いま、笑った。男の子っぽいって思ってたけど、意外と女の子らしい。



「先にお風呂入っといで。もう沸かしてあるで。上がったら夕飯や。」


「あ、ありがとう。じゃあ遠慮なく。」




お風呂はとても気持ちよかった。着替えている時、いい匂いがした。味噌汁だ。


「味噌汁!早く食べたい。」




そして、宮川さん、おばあちゃん、おじいちゃん、僕の4人で夕飯を食べた。


「長野くんって言ったかね?今日はゆっくりしてきない。布団はもう引いてあるから、部屋はなるに案内してもらい。」


「何から何までありがとうございます。」


宮川さん家の味噌汁は絶品で、3杯おかわりした。おかずも白米もお腹いっぱい食べた。


「なぁそんに食べて大丈夫?」


「大丈夫!宮川さんは毎日こんなに美味しいご飯食べてるの?羨ましいよ。」


「まぁそやけど。」


ここの料理、毎日でも食べたい…!


「「ごちそうさまでした。」」





「じゃあ部屋、案内するで、荷物持っといで。」


そう言って案内された部屋は、広かった。


「え、こんなに広いとこ一人で使っていいの?」


「うん。いつもは親戚の人とかが泊まる用の部屋やもんで。自由に使ってええよ。」


「おおお!ありがとう。」


こんなに広い部屋、一人暮らしでも見つからない。しかも、眺めがいい。山だけど。


「うち、隣の部屋におるで、なんかあったら呼んでな。」


「あ、うん。わかった。ありがとう」


「おやすみ。また明日。」


「おやすみなさい。また明日。」




歯を磨いた後、布団へダイブした。いつもはベッドだから布団が新鮮。


移動に疲れた僕は、布団に入るなり、

即効寝た。


午後9時、就寝




こうして、引っ越し初日が終わった。

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