弐話 カミソリ
大分、悪くなってきたな
髭を剃ろうと洗面台においてあったカミソリをみてみると刃先が少しささくれていた
まあ、これぐらいなら大丈夫だろう
私は手にシェービングジェルをつけ、水垢が目立ってきた洗面台に水を張った
鼻歌を交えながら、顎髭を流れるように剃ったあとまばらに生えた頬毛を剃り始めたとき引っ掛かりの様なものを感じた
「痛っ」
すると頬から一筋の紅い線が流れていた
「はは、ケチってそんなボロボロのものなんか使うからそうなるんだよ」
出社後、顔の傷を見た同僚に怪訝な表情をされたため、ことの経緯を説明すると同僚は苦笑しながら答えた
「まあ、血管とか切れてたら大ケガしてただろうし、それぐらいですんでよかったじゃないか」
ケガをしたのにそのぐらいと片付けられ少々腹がたったが、原因は自分にあるため気をつけるといい話を切り上げた
帰りに私は近所のドラッグストアに行き、新しいカミソリを買って今朝の剃り残しをいつもより丁寧な手つきで取り除いた
やっぱり、小まめに替えないとダメだな切れ味が全然違う
小綺麗になった顔を撫でながらそう思った
数日後、再び髭が伸びてきたのでカミソリで剃ろうとすると引っ掛かりを感じがした
おかしいと思い見てみるとカミソリが以前頬を切ったときよりも刃こぼれした状態になっていた
たまたまハズレを引いたかな?
袋から新品を取りだし私は髭を再びそり直した
一週間後、私はいつも通り袋から新品のカミソリを取りだし髭を剃っていると再び引っ掛かりを感じたが少し力を加えた
その瞬間、顔を切り裂かれる様な痛みを感じたちまち洗面台を紅く染め上げ、体温が奪われるのを感じた
とっさに傷口を確かめるため鏡を覗いて見ると頬に傷などなく洗面台に貼った水も透明なままであった
今のは見間違えか?
ふと、カミソリに目をやるとそこには刃がボロボロになっていて、見たこともない歪な形をしたカミソリを私は握っていた
鬼灯百物語 二色 十朗 @hozukinomi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。鬼灯百物語の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます