第28話 ワタリネズミの渡り

 土地のガイドの話だと、この岬からワタリネズミの渡りが見られるという。


「どれだけいるのかね?」


「百万匹と言う学者もいます」


 波のようなネズミの群れが断崖から海へと飛び降りていた。波に揉まれながらネズミ達は、海の向こうへと一心不乱に泳いでいく。


「どこへ渡るのだね?」


「南の島です。そこで繁殖し、またここへ帰ってきます。これを繰り返すことで強い種が残るのです」


 波間に漂う犠牲に、私は少しばかりの祈りを捧げた。

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