第29話 ゾンビと暮らす街

 土地のガイドの話だと、ゾンビと暮らす街があるという。


「ゾンビだ」


 街の往来を生気なく歩くのは骨と皮のゾンビ達だった。そこに生きた人間が平然と混じっている。

 車を引くゾンビ。

 店番をするゾンビ。

 通りすがったのは子供をお守りするゾンビか。

 ガイドに訊く。


「働くのはゾンビだけかね?」


「皆、死んでから働くので、生きている間は働きません」


 生者に急かされて転ぶ、荷物持ちのゾンビ。

 私はゆっくり死んでいたいな、と思った。

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