第30話 黒い雪
土地のガイドの話だと、この地方では黒い雪が降るらしい。
「真っ黒だな」
一面に墨でも垂らしたように黒い雪原が広がっている。ガイドに理由を訊く。
「夜の精が雪を夜の色に染めるのです」
ロマンチックな伝承だなと思っていると、ガイドが懐からイカの燻製を取り出した。
「夜の精です。空イカとも呼ばれます」
見上げると空にイカの群れが飛んでいた。
黒はイカ墨の色らしい。
私は空イカの燻製を頂きながら、ビールが欲しいと思った。
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