第19話 大山椒魚
土地のガイドの話だと、この河に大山椒魚が棲むという。
黒い河だった。対岸が霞むほどに大きな河である。
「これが大山椒魚です」
だが山椒魚の姿は見えない。滔々と黒い大河に水が流れているだけである。
「どこだね?」
「そこです。あ、動き出しました」
飛沫を上げて河が立ち上がった。河はそのまま歩き出し、黒い水を連れてどこかへ行ってしまった。
乾いた河底に魚が跳ねている。
私は山椒魚に見棄てられたこの土地の明日を案じた。
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