第17話 塚蟻の女王

 土地のガイドの話だと、もうすぐ塚蟻の女王の羽化が見られるという。

 人の背丈はある巨大な蟻塚だった。そこに蟻が黒く蠢いている。


「そろそろです」


 蟻が一斉に蟻塚へと動き出す。


「おお」


 そして全ての蟻が蟻塚に消えた時、蟻塚が崩れ、そこから透明な四枚の羽が広がった。

 蟻塚と同じ大きさの巨大な蟻が、空へと羽ばたいた。


「塚蟻の女王は塚として生まれ、塚として死ぬのです」


 古い女王の残骸が風に舞う。

 私は塚蟻の門出を祈った。

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