第12話 走る蟲
土地のガイドの話だと、この砂漠には走る蟲がいるという。
「来ました」
地平線に砂塵が濛々と煙る。その先頭に巨大な蟲が見えた。数百もの脚を忙しなく動かし、幾十にも重なった甲殻を蠢動させて走るその蟲の背には、赤屋根の並ぶ街があった。
「あっ」
轟音とともに走り去る蟲の背の街に、髪を揺らす少年の影が見えた。
「彼らは一生を蟲の背で過ごすといいます」
ガイドの言葉に、少年と交わした黒い瞳の色が私の脳裏に鮮明に残った。
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