第10話 万年桜
土地のガイドの話だと、この街には散らない桜があるという。
「万年桜です」
街の外れに薄桃色の花を満開に咲かせた桜の林が広がっていた。風がそよぐと桜色の波が芳気とともに淡くさざめいている。
「これがいつでも見られるなんて、街の人は幸せですね」
ガイドは首を横に振る。
「いつも咲いていますから、街の人は見向きもしません」
散らない花の価値は、咲かない花と同じらしい。
私は散り花のない桜の木を見上げながらそう思った。
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