第8話 水中花

 土地のガイドの話だと、この湖に水中花が咲いたという。


「見事だな」


 透明な湖面の下に沈む赤い花がある。それは金箔のように薄い花弁を蓮華の如くに大きく広げた美しい花だった。


「これは死の花なのです」


 ガイドが言う。


「湖に生き物がいないでしょう」


 この花が全部食べて養分にしてしまったらしい。だから不純物のないこの湖は透明なのだそうだ。


「美しいとは罪なものです」


 血のように赤い花を見ながら私はその言葉にうなずいた。

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