エピローグ

「えっ、年下っ? っていうか未成年っ!?」


 優樹は叫んだ。

 家電量販店のカウンター。機種変のため、海里が書類に記入しているところだ。

「年上だと思ってたの?」

「思ってましたよ!」

 生年月日からわかる海里の年齢は、19歳。一方、優樹は大卒の新社会人で、23歳。

 なんと4歳も差がある。

「かっ、海里さんは気づいてたんですか!?」

「気づいたもの何も……最初から、新社会人っぽかったから、自分の方が年下だってわかってたよ」

「えぇ……」

 書類の続きを書きながら、海里が苦笑した。

「『えぇー』はこっちだよ。そんなに老けてるかなあ」

「老けてはない! でも、背が高いし、しっかりしてるし、キリッとしてるし、だから1〜2歳は上だとばかり……」

「あー、それでずっと敬語だったのか」

「そうですよ。あぁー、もう……」


 海里は、書き上げた書類を店員に渡した。

 注意事項についてひと通り説明された後、2人で店の外に出た。

「新しいスマホ、受け取るまで1時間もかかるんだねえ。その間、食事行こうか」

「そうですね」

「……もうやめていいでしょ、敬語」

「うーん……」

 ちょっと考えてから、優樹は答えた。

「しばらくは、このまま敬語でいきます」

「なんで?」

「先入観で判断間違えたことに対する戒めですかね」

「ふうん」

 そっけない返事だったけれど、海里の顔は穏やかに微笑んでいた。

「まあいいんじゃない。ひとつ新しいことを学んだってことで」

「そうですね。学ぶのは大事なことですよ」


 そうして2人はくっついて歩きながら、昼間の雑踏に消えていった。

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優樹、海里にコンピューターの話をする 安藤鮪人 @dokuropants

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