第3話 石鯛に引き次第次第に

     1


 ブラックパンダの中身の名前は、汎唾来知路はんつばきトモジといった。店側にあった履歴書には。

 彼女こそが、串字路修真くしじろシュウマなのだろうか。

「写真送ったって無駄だよ」課長が私の手元を覗き込む。

 上司に照会してもらおうと思ったのだが。

「串字路修真の顔写真含め記録の一切は残ってない」

「残していない、の間違いでは」

「僕じゃないよ。やらせた人間は知ってるけど」

 祝多いわたイワンか。

 そのくらいのことはするだろう。世界から見放された少女の保護をその生涯の使命としているのなら。

 残る4つの眼玉は、福袋の中から出てきた。

 ホワイトタイガーとブラックパンダがイベントスペースで売っていたアレだ。

 ブラックパンダであるところの汎唾来知路が、そのうちの一つを個人的に買っており、その中に入っていたホワイトタイガーとブラックパンダのぬいぐるみの眼玉をくり抜いて。

 人間の眼玉を移植してあった。

 ブラックパンダが課長に白状したらしい。自首とも言い換えられる。

 すぐにでも本部に身柄を移送すべきなのだが、課長はそれをしない。ショッピングモール側の責任者に事後報告をすると言い張って(しないだろう)19時半に撤収。車を走らせる。運転は捜査員の一人にさせている。

「どちらへ?」一応尋ねる。運転手は知っているのかもしれないが。

「夜も遅いからお家に帰ろう」課長が言う。「先生が待ってる」

 文葦ぶんい学園だ。

 後部座席の真ん中に課長。運転席の後ろに私が、助手席の後ろにブラックパンダが。

 ブラックパンダの着ぐるみのまま連れて来た。身柄移送が最優先だったからではない。彼女が脱ぐのを嫌がったからだ。着ぐるみの中は何も身につけていないと言う。

 別段着替えてからでもよかったのではないかと思うが。

「どこかのスパイが隠し撮りを狙ってたからね。犯罪だよ?」課長が白々しく言う。

 人を殺して眼玉くり抜くのほうがよほど犯罪ではないのか。

 屁理屈大会では勝てないので黙っている。

「もっとスピード上がらない?」課長は運転席と助手席の間で身を乗り出す。

 捜査員は夜間の気温低下と積雪時の路面コンディションを説明する。

 積もってしまった。タイヤの心配はなさそうだったが。

 文葦学園は郊外に建っているため、雪かきの手が届いていない。人が住んでいない。人の住まない区域を、人の通らない道路を、どうして国民の血税を投入してまで雪をかかなければならない。もっともな道理だ。

 積雪は5センチ強。いまだに降り続いている。

「なんでこんな積もってるんだろうね」課長が人ごとのように言う。

「歩きますか」

「冗談。行きたいなら止めないよ」

 まだまだ距離がある。徒歩も高速走行もデメリットが多すぎる。

「ちょうどいい。ここで取り調べをしようか」課長がブラックパンダに向き直る。「君は串字路修真ちゃん? 一家惨殺の生き残りの?」

 それが目的だったのだろう。

 ここなら誰の邪魔も入らない。邪魔をしそうな私など容易く制止できるわけだから。

「ブラックパンダは喋れないね。脱ぎたいのかな?」

「違います」消え入りそうな声だった。

「何が違うのかな?」

 ブラックパンダが居心地悪そうに小さくなる。実際に小さくなったら恐ろしいが。

 ブラックパンダ相手に追及をしている光景が絵面として奇妙だった。

「誰も聞いてないよ」

 返答次第では誰も聞かなかったことにする。そうゆう脅しをかけている。

「主治医に見せればわかることなんだ。君の正体なんか」課長は虫も殺さぬ顔で言う。ブラックパンダは殺すのかもしれないが。

「これは脱げません」

「なら口で言うしかない」

「それもできません」

 課長がこれぞ演技とばかりに大げさな動作で首を振る。

「どうしようかな。君がやるかい?」課長が勢いよく背もたれに後頭部を付けて天井を仰ぐ。「ああ、言い忘れてたけど、僕の隣にいる彼、こんな恐ろしい顔してやることえげつないからさ。あまりにえげつなさすぎて大王って呼ばれてるからね。そこんとこ承知しといてよ。はい、バトンタッチ」

 ブラックパンダが私を見たような気がした。

「つい先刻、串字路修真の主治医と会った。串字路修真を捕まえろ、話はそれからだ。そう言われた。君がもし串字路修真なら、私の質問に答えて欲しい。なぜ眼玉を抉り出す?欲しいのか?」

 ブラックパンダは私を見ている。

 課長は右眼で私を、左眼でブラックパンダを見ている。

「答えて欲しい」

「わたしはただのブラックパンダです。汎唾来知路です。その人を知りません」

「串字路修真を知っているのか」

「知りません」

「四人の人間の眼玉を抉り出したんじゃないのか」

「よく憶えていません。でもわたしの買った福袋の中にあったので、わたしがやったのかもしれません。そのことはそちらの人に」課長だ。「話しました」

 課長がどうでもよさそうに眼をこする。

「だ、そうですが」話を振った。

「誰を庇ってるのかな?」課長が言う。焦点はフロントガラス。「君は巻き込まれただけだ。いいように利用されたんだ。そいつのいいように使い捨てられて、挙句君が罪を背負う。おかしくないかなぁ?」

「何を言っているのかわかりません」

 こうなれば力づくでブラックパンダを脱がすか。

 そういうアイコンタクトを課長に送ろうと思ったが、課長は眼を瞑っていた。

 やる気があるんだかないんだか。

「わかった。君がその気なら僕にも考えがあるよ。君が一番困ることをしよう」課長が言う。眼は瞑られたまま。「君を文葦学園に届けたらその足でショッピングモールに戻る。閉店時刻には余裕だ。そして君の相方、ホワイトタイガーの中身を逮捕する。罪状はそうだね? 殺人。死体損壊。死体遺棄。殺人幇助。詐欺もかな」

 ブラックパンダは動かない。

「君は騙されてたんだ。君が殺人を犯せるはずがない。君ができることは精々、殺人犯に媚を売って自分だけ助かることか。もしくは殺人犯に脚開いて自分だけ助かろうとか」

 ブラックパンダが、身を乗り出す。課長の腕を捉える。

「何かな? 言いたいことでも思いついたのかい?」

「わたしです」

「何がかな?」

「わたしが」

 やりました。

 口だけが動いた気配。

「私が?なんだって?」

「わたしが」

 串字路修真です。

 汎唾来知路が落ちた。

 文葦学園の高い塀が見える。正門横付けで停車。

 青白い街灯の下、鉄柵の向こうに白衣の女。

 つい数時間前と全く同じ光景が上書きされる。

 ビニール傘に大量の雪。まさか、あれからずっと待っていたとか。ないか。

「おかえり」顧問医が平板な声で出迎える。「ただの外出かと思えば随分とまあ、いい男をたらしこんできたじゃないか」

「ごめんなさい」ブラックパンダが雪に吸い込まれそうな声で言う。

「謝るくらいなら最初からするな」顧問医が鉄柵の脇のパネルを操作して。

 自動で門が開かれる。

 課長が当然のように中に踏み入ろうとするが、顧問医に傘で威嚇される。

「お前のジェンダーはどっちだ?」顧問医が睨みつける。「とっとと帰れ。祝多が首長竜になって待っている」

「ネッシーの一つや二つ捕まえてきそうで怖いなあ」課長が一歩下がる。

 汎唾来知路もとい串字路修真が文葦学園に収容される。

 時間差で門が閉まったが、課長が動かないので顧問医らの背中を見送った。

 夜の闇に雪が光る。

 街灯は青白い。

 顧問医が傘を差し、串字路修真というブラックパンダを招き入れる。

 遠ざかる。

 遠ざかる。建物へ一直線に向かう道中、

 止まる。

 顧問医のみが急に立ち止まり、

 串字路修真というブラックパンダがくるりと振り返る。

 顧問医から奪ったビニール傘を、

 その場に捨てて。

 走り出す。

「先生!」課長が血相を変えて鉄柵にへばり付く。

 様子がおかしい。

 顧問医は立ち止まったまま。いまやっと、

 崩れ落ちる。

 雪に。

 黒い。

 それが血だとわかったときはすでに遅かった。

「先生! せんせい!」課長が鉄柵を乗り越えようと足を上げるが、雪で滑ったようでうまくいかない。

 それにこの施設は、外部からの侵入者をもの凄く強情にシャットアウトしている。

 ほら、けたたましいベルが鳴った。そうゆうセキュリティだ。

「理事長に」連絡してはどうか。

 セキュリティ会社から派遣される猛者たちが辿り着く前に。

「まずいことになったよ」課長が前代未聞の真剣な面持ちで電話をかける。

 しかしこの雪だ。到着を待っていられない。

 柵は大した高さじゃない。こいつが柵である限りは、乗り越えられる。

「やるねぇ」課長が電話を耳に当てたまま言う。冷やかしに近い。

 着地で安定を失いそうになったが、視界に顧問医が。

 転ぶわけにいかなくなった。

「大丈夫か」止血をしようと思って抱き起こすべく肩に。

 遣ろうとした手を振り払われる。

「私を誰だと思っている?」顧問医の眼が血走っている。「走れ。袋の鼠だ」

「袋の鼠なら」追う必要はない。

「ここに男を入れるな。お前のことじゃない」

 男?

 串字路修真というブラックパンダは。

「私の患者に男はいない。行け!」

 しまった。ブラックパンダに覆われた中身がまさか、入れ換わっていただとか。

「許可は下りないけど特例だってさ」課長が肩を竦める。理事長を説き伏せてくれたのだろう。

 なにせ、緊急事態の有事なのだ。

 世界から見放された女の園に、世界を敵に回した男が一匹侵入したとなれば。

「始末書は君が書いてね」

 侵入者は二匹か。



      2


 文葦学園は、その名の通り学校であり、かつ宿舎であり、彼女たち安心して暮らせる楽園としての機能を果たすには充分の施設が整っている。

 薄らぼんやりとやる気のない街灯の下を白銀と格闘しつつ駆ける。

 構内案内図らしき看板を見つけたが雪に覆われていて。払いのけたとしてもどこに向かえばいいのか皆目見当もつかず。闇雲に走る意味もあるわけがない。

 こうゆう図ったようなタイミングで電話を鳴らすのはいつも一人。

「宿舎に入られたら人質を取られる恐れがあるね」課長の声は私に平静を取り戻させるには充分な効力を発する。

 平静を。

 欠いていたらしい。どうやら。

「先生が言う通り袋の鼠だ。だからこそ恐ろしいことになっている。わかるね?」

「どちらですか」宿舎は。

「しかし人質を取ることの利点は、引き換えに自分を逃がしてくれだとか、どこかで捕まっている仲間を解放しろだとか。そうゆうことにしか使えないよね」

 串字路修真というブラックパンダ(ニセ)の目的は。

 逃げた?いや、精々時間稼ぎ。

「誰を庇っているんだろう」課長が呟く。舞台セリフのように。

 いまは夜だ。

 学校は、夜には行かない。

「しばらく切ります」

「いいよ。全速力でここに向かっている最高責任者の前で言い訳を聞こう」

 通信機器をコートの内ポケットに仕舞う。

 案内図にもう一度手形を付ける。眼の前の、一番大きな建物がそうらしい。

 学校。

 幼稚園でも保育園でも小学校でも中学校でも高等学校でもないが、そのいずれのすべての機能を果たす。教育の総合施設。

 ここに、

 いる気がする。串字路修真というブラックパンダは、

 課長に聞かれたくない話を。私にだけ話してくれる気でいる。そのための時間稼ぎ。本当の中身を逃がすための。

 課長はそこまでわかっていただろう。だからこそ私を行かせたのだ。

 大本命を、取り押さえるため。

「どこにいる!」昇降口で大声を張り上げた。私らしくもない。

 私らしい。

 そんなものはとうに捨てた。

 あったかどうかもわからない。なかったかもしれない。

 鍵は開いていた。抉じ開けたような跡はない。

 おかしい。

 なぜ、

 開いている。

 音。

 階段を駆け上がるような軽やかさとはほど遠い。

「話があるなら聞く。お互いに時間がない」

 足音は止まらない。

 べしゃ。

 べしゃ。

 着ぐるみブラックパンダの不格好な足の裏が階段と接触してそこに雪を踏んづけたなれの果てをこびりつける音。

「お前は誰だ」

 べしゃ。

 ぐしゃ。

 階段を見上げると、手すりから身を乗り出しているブラックパンダと眼が合った。

 私が追いかけて来ているかどうか気にしている。

「お前の望みは何だ」

 ブラックパンダが顔を引っ込めて再び階段を上がって行く。

 ぺしゃ。

 くしゃ。

 校舎はロの字になっており、階段はその対角線となる角に位置する。

 昇降口から近いほうの階段を上がる。もはやトラップでしかない水たまりを踏んづけないように。手すりも壊滅的に濡れている。

「串字路修真!」

 ブラックパンダが顔をのぞかせる。

 私も足を止める。

「お前が庇っているのはブラックパンダの本当の中身か」

 ブラックパンダは微動だにしない。

 黒の丸が一対、無感動に私を見下ろしている。

「庇ったところであいつの罪は消えない。共犯になったところで」

 話の途中で何かが光って、

 落下。

 刃物。

 黒がこびりついている。先ほど顧問医を刺した凶器だ。

 私の足元に転がる。

 狙いが外れたのか、外した狙いだったのか。どちらにせよ、

 気に触ったらしい。

 話はそこで中断される。

 ブラックパンダが再び階段を上がる。何階建てなのだ。

 ぺしゃ。

 ぺしゃ。

 追いかけるしかないのか。

 逃げれば逃げるほど自分を追い詰めていることに気づいているのだろうか。

 精神的にも物理的にも。

 袋の鼠ならぬ、袋のブラックパンダになっていることに。

 上り詰めた先にあるのは天国じゃない。夜風の吹きすさぶ雪空の。

 闇。

 屋上に通じる扉の鍵も開いていた。侵入者たるブラックパンダが鍵を持っているわけがない。

 開けてあった。何のために?

 この展開を、予測できた人物。かつ、

 この建物の戸締りを、支配下における人物。

 わざと、刺されたのか?ニセモノとわかっていて。

 敷地内に迎え入れたのか?

 なぜ。

 そうまでする。顧問医は、自分の患者以上にだいじなものはない。のではないのか。

 泳がされるのは構わない。

 それで事件が解決されるのなら。なにが、

 ある?

 この裏に。

 雪は、

 已んだところだった。

「串字路修真」呼びかけてみる。

 所在なさげに佇むブラックパンダの後姿に。

 ブラックパンダを振り向かせるだけの熱量はなかったようだ。

「言いたいことがあるなら言え。ここには私しかいない」

 車内での課長の取り調べ話術と同じルートを辿っているようで嫌だった。

「私に用があるんじゃないのか」

「刑事さんには欲しいものがありますか」ブラックパンダの声は聞こえなかった。

 ブラックパンダはゆっくりと、頭を外した。

 もはやそれはブラックパンダではない。ブラックパンダは喋らない。

 キラキラと光る。

 白い髪。

 長い髪。

 細い髪。

 首は胸のあたりで抱きかかえる。

「ありますか」

「欲しいものがない人間は朽ちていくだけだ」

「あるんですね」

 正直に言おうかどうか迷った。

「聞かせてください。刑事さんの欲しいもの」

 串字路修真というブラックパンダ(ニセ)がもし、どこぞの課長や顧問医のように、人を惑わすことに長けた話術を持っているのなら、私はこれ以上何も語るべきでない。私のはこの手の話術に酷く弱い。耐性がない。

「欲しくて欲しくて欲しかった。でも手に入らなかった。寸前のところですりぬけて行った。失った。もう元に戻らない」

 雪が微細な粉となって空を舞う。

 闇にドットが漂う。点と天。

 白と黒。

 黒と白。

 ブラックパンダ。

「わたしのことです」

 振り返ればいいのに。

 私の記憶が確かならその人物は、

 私と会っている。ショッピングモールで。

「欲しいものは手に入らないんです。でも求めることをやめられません。欲しい。欲しいんです。わたしはどうしても、欲しい」

 何を、

 欲しているのか。

「眼玉なんか要りません。誰があんな気持ちの悪い。わたしにはあるんです。ここに」串字路修真というブラックパンダ(ニセ)は後ろを向いたまま、両手の人差し指で銘々に差す。両の眼球を。「あの人には眼玉がなかった。生まれたときからなかったわけじゃない。生まれたときにはあった。あったはずだ。あったんだよ」

 声色が、

 淀んでいく。降ったばかりの清らかな雪が土足で踏みにじられるように。

「あったのに。あいつらはよ」

 見ている前で。

 見ている物を。

「抉り出しやがった。あの人はなんも見えなくなった」

「君がやったのか」

 連続眼球抉り出し殺人。

「自供と取っていいか」

「あいつにんなことできるわけねっての。俺が」

 やった。

 飛んでくる。

 白と黒の首。

 首は黒と白で。

 視界が遮られたその僅か一瞬。

 やられた。

 そう思ったときにはすでに。

 音はしなかった。

 したところで気づけなかった。

 私の見える範囲に誰もいない。

 屋上には私一人。

 いない。

 いるのは、

 もっと地上に近い。

 課長に連絡する。すぐに応答があった。

「始末書何枚欲しい?」課長の声は酷く冷静で。

「どこまで読めていましたか」

 被疑者に眼の前で自殺される最悪のシナリオを。

「君のお陰でブラックパンダの本当の中身が確保できたよ」

「ニセモノの中身は最初から」なかったことにしたのか。

「君は見回りに行っただけだ。顧問医と理事長の依頼を受けてね。異常は何もなし。よかったじゃないか。なにごともなくて」

 隠蔽する気だ。そもそもそのつもりで、

 本部にも一課にも知らせずこんな治外法権の柵の中へ。

「書いてもよろしいのですか」始末書。

「いいよ。誰も読まないけどね」

 この男は、

 どこまで。

「寒かったんじゃない? 帰っておいで。コーヒーでもおごろう」

 要らない。

 私が欲しいのは、そんな闇色の液体ではない。闇色の液体に沈んだ底の。

「しばらく切ります」

「疲れたかい? ゆっくり休んで」

 その手ですぐに違う相手につなぐ。

 課長は私の本当の上司ではない。私の本当の上司は。

「急ぎの用かね」

 21時を回る。

「終わりました」事件も。

 今日まで起こっていた何もかもが。

 急激に収束する。

「対策略的性犯罪非可逆青少年課は」

「一息置いて報告書にまとめたまえ」環境音に交じって高い声がする。

 この男も、

 どこまで。

「失礼しました。明日中に伺えるかと」

「徹夜はいかんな。昂った神経を休めたほうがいい。君には期待している」

 まだ使い道があるということ。

 校舎の植え込みが何やら騒がしい。課長の手駒がブラックパンダの亡骸を回収して行く。理事長が到着したらしい。

 作業中の彼らから見えない位置に移動する。

「夜分遅く失礼いたしました」さっさと切ろう。

「報告自体は構わんよ。ああ、そうだった。これは別件だが」

 とびきりの惨い引力が脳内を這いずり回る。

 どうしてこれを、この男の口から聞かなければならないのか。このタイミングで知らされなければならないのか。

 想像すればよかった。眼の前にあるものだけをありのまま受け入れているからそうなる。

 誰かもそう言っていた。大昔のお節介な偉人だ。身近な人間はそんなに親切じゃない。

 息を呑む。

 吐くことは、

 もう少し忘れていたかった。

「帰ってきとるんだ」

 きみが

「手を放したばかりに」

 なんの

 ことだ

「手みやげまで持たせてくれおって。明日返そう。耳を揃えてね」

 わかりたくない。

 わかってしまえばそれは、

「なにを」

「他人の君がとやかく言わんでくれ。これは私たち」

 親子の問題だ。

 だれと

 だれが

 親子だって?

 後ろで聞こえる高い声の主が。どうか、

 私の想像通りでないことを願うしかできない。

「何をしてるんですか」

「夜な夜な出歩くような不良娘には折檻が必要だ。私の躾が足らんかった。君は優しく腫れものに触るように扱ってくれとったようだがね。私に言わせればあんなもの」

 あんな

 もの?

「でき損ないの肉の塊にすぎん」

 帰れと言ったのは誰だ。

 お別れと言ったのは誰だ。

 待っていろと言ったのは誰だ。

 散々待たせた挙句に待たせただけだったのは誰だ。

 だれだ。

 だれなのか。

「本当に君は教育が行き届いとる。拾いものの所有物とはいえ、やっていいことといかんことがある。そうだろ?」

 電話を壊しても意味がない。

 意味が、

 ないのだ。壊すべきはこの電話の向こうに。

「感謝してもしきれんよ。だいじな一人娘を綺麗な身体で返してくれて」

「わかりませんよ? 私が拾う前に娘さんがどこで何をしていたかなんて」

「見ればわかる」

 高い声が、

 鼓膜をつんざく。いっそ、

 裂けてしまえばいい。

 粉々に。

 砕け散って。

「綺麗なままだ」

「ミョウジツ報告に参ります」

「待っとるよ」

 昇降口に課長が立っていた。顔を見たくなかったので素通りした。

「欲しいものって手に入らないんだよ」課長の声は相変わらず白々しい。

 睨みつけるには憎しみが足りていない。反論しようにも言葉は霧散して。

「なかなか面白い論議をしてたね」

 聞いていた。当然か。

「その報告書は僕にも出してくれる?」

「コピーでよろしければ」

 どこをどうやって家に帰ったのか憶えていない。



      3


 夢でオズ君と寝たのかもしれないしそうでないのかもしれない。

 そうゆうことは考えないわけではなかった。

 理性と常識と世間体のごった煮が私を踏みとどまらせた。

 年齢とか。

 性別とか。

 年齢差とか。

 未成年だとか。

 犯罪だった。

 考えることも想像することも。

 触ることが。

 罪に直結する。

 こんなに苦しいことがあろうか。

 こんなに惨めなことがあろうか。

 上司に部屋はない。この人のいるところが部署となる。

 元日から一夜明けても賑わっているのは、ここと神社仏閣くらいのものだ。

 家電量販店。

「甥がゲームをねだって来てね」上司は、忙しい店員をわざわざ呼びつけて自分の下らない事情をくどくどと語る。

 お年玉を渡して自分で買いなさい、でもよかったが。

 明日一人で会いに来るという。(大方目的はお年玉だろうが)

 そんな可愛らしい甥を吃驚させてやりたいと。(お年玉せびりにやってくるだけの甥のどこが可愛いのか)

 耳は塞げなかったので内容を取ってしまっていた。

「甥には優しいと思っとるんじゃないのか」上司は、忙しい店員にプレゼントの過剰包装をさせながら言う。

「私は思っていません」

「アレだって欲しいものさえわかればなあ」

 機嫌を取れる?

 好かれる?

 わかろうともしないで。

「心当たりはないかね。ああ、ありがとう。助かったよ」上司は、忙しい店員にようやく別れを告げる。

「私にはありません」

「私に手に入るものならばいいが」

 オズ君が欲しいものは、あなたでは手に入れられない。

 なにせ、

 カネでは買えないのだから。

 大型テレビが壁を背に均一の情報を垂れ流す。空いている放送時間を埋めるだけの正月特番。

 くだらない。

 くだらない。

「解決したんだろう?」上司は、一番大きな画面を見ながら言う。

 報告書は朝一で手渡した。ここにくる道すがら、上司はそれに眼を通している。

 私は事実のみを書いた。

「証拠充分だ。時間の問題だな」

 対策略的性犯罪非可逆青少年課は、完全に黒だ。

 犯罪の隠蔽。

 被疑者の自殺。

 真犯人の回収。

「あんなものはとっとと潰せ」

「終わればまた私は」

 異動になるのか。

「なんだ。不満か」上司は、画面に登場した振り袖姿の若い女優を舐め回すように見る。

「そもそもあの課は何のために作られたのですか」

「知ってどうするんだ。無駄な公共事業は潰さなねばならん」

「誰の意思で作られ、誰の意思で潰されるんですか」

「知ってどうしたいんだ? 手足に脳は要らん」

 手足と云うか。

 よくもはっきりと。いっそ清々しい。

 上司は、見覚えのある封筒を上着の内ポケットからのぞかせた。

 昨夜渡したオズ君に私が。

「そういう資金なら気が早くないかね」

「持ち主に返してください」

「返さんよ」上司は封筒を再び内ポケットに仕舞う。「すまんな、気が変わった。こいつを返したら君とアレとは縁が切れてしまう。決してこいつが惜しくなったわけではないんだ。使わんよ。来たるべき日のために父親の私が預かっておくことにした。あぁ、来たるべき日とやらが来るのなら、だがね」

 掛け捨ての公的年金とどこが違う?

 捨てたカネが惜しいのではない。私とてそうだ。

 そうじゃない。

 私が、

 憤りを感じている観点は。

「次に会うときは、看板を手みやげにな。辞令を引き換えよう」そう言うと、上司はエスカレータを下りて行った。

 剥げかけた円形が見えなくなるまで。

 そこにいた。

 道場破りでもして来いと?

 私は怒っているらしかった。

 空々しくけたたましいテレビの音が遠くで聞こえる。

 帰ろう。

 どこに。

「おにーさん」

 私の後方にいる人間に呼びかけているのかと思って通り過ぎようとしたところを。

 遮られる。

 十代後半から二十代後半くらいの年代の。

 白髪の若者。

「おにーさんたらテメェしかいねーだろ」

 右と左で眼の色が違った。カラーコンタクトか何かだろう。

 髪の色だってその手のファッション。奇抜を具現化して袖を通したかのような。

「すまないが」

「暇ぁ?」

 私は暇でないことを示すために溜息をついた。

「疲れてんのな」

「未成年か」

「だったらどーすんだ?」

 どうにも私は、その手の年代の若者に声を掛けられやすい性質があるのか。喜んでいいところなのだろうか。

「りえーちゃん見つかっちったの?」

 いま、

 聞き捨てならない名前が。聞こえたような。

 若者が口を裂けて笑う。

「おにーさんだろ? りえーちゃんの」

 あとに続く言葉を意図的に聞かなかった。

 何だったら満足する?

 何だったら否定する?

「りえーちゃん、いまどこよ?」

「聞いてどうする」

 琴の演奏。弦の音が耳を引っ掻く。

 若者がべろりと舌を出す。

 スピーカから出る音の断片を拾うように。

「捜しているのか」

「め」

 だ

 まヲ「ね」

 咄嗟に腕を取った。

 骨と皮。

 栄養が足りてないわけではなく、生命活動を可能とする限界値。それ以上の養分は過剰として排出される。

 若者が私を見る。

「おにーさん、俺を捕まえ」

「誰だ」

 お前は。

 似ている。誰に。

「誰だったら捕まえんだって?」

 手首を捉まえたその手の甲を。

 舐められた。べろりと。

 唾液の感触が残存する。

「なんで眼玉集めてんのかぁ、聞いた?」

 少年?いや、少女か。

 この手の年代の外見的性別ほど当てにならないものはない。

 すっぽりとパーカーのフードを目深にかぶって、未成年御法度エリアを我が物顔で進んでいく。

 オズ君と出会ったのは、奇しくもこの歓楽街。

 というか、県内で歓楽街と言えばここら一体のことを暗喩する。

 ○○バー。

 ○○クラブ。

 ○○カフェ。

 白髪の若者は、慣れた足取りで階段を下りていく。異国語(少なくとも私には読みとれなかった)が色とりどりに書き殴られた壁伝いにぐるぐると。

「おにーさん、ちぃとでっけぇから目立つかもしんねェな」

「ガキが集まって何してる?」

 白髪の若者は半テンポだけ足取りを緩めた。何も私の発言が後ろめたさらしき燻りにうまいこと着火したわけではない。

 重たい扉を引っ張った。

 薄暗い。天井が低かった。

「頭、気ィつけろよ」

 といった端から。

 天井の突起に。

 押さえても痛みは治まらない。慣れない眼を凝らす。

 人の気配。目線。職業柄その手のものは敏感だが。

 いずれも無関心。

 息遣いと衣擦れのほうがうるさかった。

 なるほど。

「道連れか?」

「うーわ、じょーだんきっつー」白髪の若者は大げさに笑い飛ばす。「おにーさんだって同罪じゃん? そーゆー意味よ、ここ」

 ノックもせずに開けたが、親切なドアプレートが示してくれていた。

 裏返す。要約すると使用中。

 カラオケの個室に似ていた。ドアも上部と下部が廊下からの視線を受け付ける。

「まぁ、座ってくれってな」白髪の若者は一番奥に胡坐をかいた。

 短い丈のスカートから骨と皮の脚の付け根が露出する。

 照明はそこそこ仕事をしていた。時折忘れたころに生存確認よろしく点滅することを除けば。

 私はわざと離れて座った。片手がドアに届く距離。

「けーかいしすぎだって、おにーさん」白髪の若者が身を乗り出してにやりと笑う。長い舌をべろりと。「別に取って食ったりしねェよ。おにーさんがその気にならない限りな」

「オズ君のことだが」

「あ? パンダちゃんのことじゃなくってか?」

 口の中がざらざらする。空気中にその手の物質が含まれているのではないだろうか。

「事件は私の手を離れた」

「気になんねェの? けーじさんなんだろ?おにーさん」

 正直に言えば、気にならないわけがないが。

 そんなことより優先すべきことがあった。

「オズ君は、君の何だ?」

「ハ、何だったらおにーさん、俺を■したくなんの?」

 主導権がこちらにない。

 いつだって、

 こちらにはないのだ。

 私は、ソファ内部の潰れた綿を思う。

「ウソウソ。ちーっとからかってやりたくなっただけ」白髪の若者が背もたれに吸い寄せられるように天井を仰ぐ。「りえーちゃんは、俺らクソガキのカリスマ。ってーのかなぁ、こーゆーの知ってっか?」

 傾いたテーブルを滑る。携帯端末。

 画面が眩しかった。

「フラングエイジヤ?」

「そ。りえーちゃんが俺らみたいな行き場のないかわーいそーなクソガキの集いを作ってくれちゃったってワケよ」白髪の若者が指をさす。「メニュー開いて、そうそ、ニュースっての見てみろや。ビックリすんぜぇ?」

 言われた通りに操作する。

 ―――来たるXデイ。ハメルンの笛が聞こえたら合図だ。

 大きな見出しが眼に入った。更新日時は、オズ君に見限られたときと同じくする。

 昨夜作っていたのはこれか。

「そのXデイってのによ、便乗しちまおうっつー魂胆なワケだ。俺らみてーな居場所のねぇクソガキ集団は」

 ハメルンの笛。

 それで思い当たるのは。

「オズ君が吹くのか」

 子攫い。

 何を、始めようとしている?

「みんなで仲良くお手手つないでさよーならってのだったら超やべーよなぁ」白髪の少年は肩を震わせて笑う。「さすがにりえーちゃんもそこまで血も涙もない感じじゃねぇとは信じてぇが。はてさて」

「知らないのか?」何が起こるのか。

「Xデイっつーのが具体的に何月何日かもわかんねーだぜ? ハメルンの笛ってのがどこで聞けんのかもわかんねーの。まぁ、俺は急ごしらえのこの謎サイトが有力だとは踏んでっから、逐一見張ってるっつーわけ。暇すぎんだろ?」

「君の目的は?」

「パンダちゃん元気ィ?」白髪の若者が舌を出して私を見る。

 それが、

 本題だろう。

「君はひょっとして」ざらついた違和感の正体が喉を抜けた。「ホワイトタイガーか」

 切れかけの照明の点滅。

 壊れかけのスプリングの悲鳴。

「生きていたのか」

「おにーさん、取引と行こうや」白髪の若者が両手を広げて立ち上がる。

 私はドアとの距離を目算する。

「俺はパンダちゃんを助けたい。おにーさんはりえーちゃんを、どーしたいかは言わねェでやっけど、まぁ平たく言やぁ、死なねぇでほしい。どーだ? 利害は一致すんだろ?」

「応じなければどうなる? 私がここで死ぬのか」

「んなめんどくせーことすっかよ」白髪の若者が携帯端末をいじくる。「お。くっちゃべってるうちに更新されたぜぇ? Xデイのヒント!? へーえ、いちお誰彼もってわけじゃねーのな」

 ホワイトタイガーの中身ということは、ブラックパンダ(ニセ)の中身。

 まさに昨日、雪の降る文葦学園で大立ち回りを演じて、最後は屋上から飛び降りた。

 てっきり回収されたと思っていたが。

 いや、どういうことだ?

 疑問に思うべきは、男子禁制の園での大立ち回りでも屋上から飛び降りたのに怪我ひとつないことではない。

「おにーさんさ、昨日俺が言ったこと覚えてっか? 欲しいもんは手に入らねぇって話。手に入んねぇから欲しいんじゃねぇんだよ。俺あな、あいつの欲しいもんぜんぶ奪い尽くすって決めたんだ。邪魔すんなら死神だろうとぶっ殺す」

「君の大切な人が、串字路修真の身柄を欲している?」

「ぴんぽーん。おにーさん、すげー、あったまいーね」白髪の若者がべろんと舌を出して満足そうに嗤う。再度ソファに体重を預けた。「おにーさん、あったまいーからトクベツに教えてやんよ。俺あな、死なねーの。死ねねーの。決意とかそーゆーんじゃねーよ? 俺あな、五百年生きてんの。おにーさんなんか、クソガキのクソガキ以下っつーわけ」

 信じるにしても信じないにしても話は進めなければならない。

「君の身柄はケーサツが探している」

「おにーさん、ケーサツじゃねぇの? チクる? パクっちゃう?」

 串字路修真の共犯が、眼の前にいる。

 おそらく実行犯は、串字路修真ではなくこちら。

 見逃す? 捕まえる?

 いや、私がすべきは。

 なんだ?

「Xデイとやらには、君の大切な人が関わってはいまいか。私の推測で悪いが」

「もうさ、おにーさん、さいっこーにやべーのな」白髪の若者が言う。上機嫌なようで膝をパンパンと叩く。「パンダちゃん自由にしてくれたらさ、りえーちゃんだけは助けてやんぜ? つーか、さっき店にいたハゲデブジジイ。あれ、りえーちゃんの親だろ? 俺が殺してやろーか? 憎いんじゃねーの? 殺意滲み出てたぜぇ?」

 串字路修真には、そこまでの価値があるのか。

 いや、そうではない。そうではなくて。

「俺あ、殺しも得意だかっさ。もち、俺自身を殺すのも含めて。パンダちゃん、ちょーっとここらへん弱っててよ。かーいそーだったのよ」白髪の若者がこめかみをつんつんとつつく。「俺もさ、大昔にヘマしちまって、ここをちーっとばかしイジくられちまってんの。どーじょーっての? あんまこーゆーキモチんなったことねぇからよくわかんねーけど」

 確かに串字路修真への処遇は、刑罰というよりは治療だろう。

 朔世院長の患者に戻るのか、文葦学園顧問医の被験体とやらに戻るのか。

「いますぐどーこーってのはねぇしさ。おにーさん、その気んなったらここに連絡ちょーだいよ」白髪の若者が私に名刺大の紙を投げる。

 番号とアルファベットの羅列。

「手筈とか方法とか。そーゆーぐっちゃぐちゃしたもんは丸っとこっち任せて。その気になったかどーかだけ、な? ああ、そうそう。Xデイのヒント。聞きてーか?」

「足して15だろう?」

 私にはわかってしまった。なにせ、オズ君が考えた日取だ。オズ君の考えそうなことくらい、わからなくてどうする。

「ガキの終わりの日だ」

 白髪の若者が口笛を吹く。

 それが、ハメルンの笛ではないとは思いたい。

 時間がないことだけは事実だ。

 あとたった2週間。オズ君を取ってそれ以外を捨てる。そういう単純な選択じゃない。

 何か、

 私の手には負いきれない大きな事件が起ころうとしている。

 白髪の若者は、ひとしきり笑ったのち、私を無傷で地上へ帰した。

 投げつけられた名刺大の紙をもう一度見る。番号とアルファベット以外にもう一つ細かい文字が書かれていた。あの明滅する照明の下では読めなかった。

 ビャクロー。

 それが、彼女?の名前らしい。



     3差


 ビャクロー。

 呼ばれたので振り返る。

 あんたに呼ばれないなら、名前なんか要らない。

 俺は白い虎だから。

 あんたを傷つけるクソ野郎を喰い千切るだけ。

「わたくしの望むこと以外のことをしないでと言っている」

 パンダちゃんを助けたことか。

 それとも、りえーちゃんの保護者に会ったことか。

「わかっているのならしないで」

 さすが。

 俺の考えていることくらい透けて見える。

 波の音。

 黒い。

 黒い水。

「あんたしかいねぇよ」

 王は。

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