第6話 私に出来る事
「幸せとも言えるし違うとも言える」
彼女は静かに答えた。
「彼はあの災害で、左半身に麻痺が残る大怪我をして陸上は出来なくなり、あなたがいなくなった事にも、激しい後悔と自責の念に苛まれた。
今もあなたの事を1日も忘れた事は無いし。その彼もあと少しで生涯を終える。」
私は涙が溢れて止まらなかった。
彼にも深い傷を残した事に。
私を覚えててくれた事に。
彼にも最後の日が訪れる事に。
「私に出来る事は何か無いの?
何でもいいから教えて!」
私は心から叫んだ。私が美術室にいる間、彼は現実で悩み苦しんで来たのが分かる。
「…難しいけど、強いて言うなら待つ事かな。ここではなく別の所で。」
そう言った彼女の瞳が月のように優しく私を見つめていた。
「あなたは私を迎えに来たの?」彼女の瞳を見つめていたら不思議と、穏やかな優しい気持ちになった。
彼女は自分の、無造作に束ねた髪で遊びながら照れくさそうに「まあね」とだけ答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます