第2話 珍客
「こ、こんにちは」
私は緊張して声が裏返っているのが分かり、少し恥ずかしくなってうつむいてしまった。
そんな私の動揺に気付かなかったのか
「たまに見かけるよね」と話掛けてきた。
ここで知らない振りをする訳にもいかず、「うん…」とだけ答えた。
自分だけの静かな空間が、彼女の出現により変わってしまうのではないか?
私は何とも言えない奇妙な感覚に襲われていた。
何故?人が1人来ただけなのに。私は思いを確かめるように、思いきってもう一度彼女の顔を見ようと、うつむいた顔を上げてみた。
彼女は側にあるスケッチブックを手に取り、パラパラとめくっていた。
「ふぅーっ」
やっぱり忘れ物を取りに来たのか。
なんだ怖がる事なんてないじゃない!
私は安心してまた景色を見ようと窓に近づいていると、
「ねぇ あなたの事デッサンしてもいいかな?」
と唐突な事を言ってきた。
「……」
しばらく考えたが、もう少しここにいて月を見ようと思っていたので、帰るまでならいいかなぁとokの返事をした。
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