美術室の私
山代 寝子
第1話 出会い
気が付けば私はいつも美術室にいた。
美術部員と言う訳ではないが、何故かここにいることが多い。
時より美術部の人が来て創作活動に勤しんでいるのを横目でチラチラ見ながら、外の景色の移り変わりを楽しむのが日課になっていた。
もちろん創作活動の邪魔をしてはいけないので、教室の一番後ろにある窓際の机に息を潜めて座り、部員には一度も話しかけた事はない。
「今日も1日終わったな」
先程までいた人もいなくなり、景色も夕闇に変わる頃、入り口の引き戸がガラガラと音を立てながら開いた。
今までこの時刻に人が来たことが無かったのでビクッとしながら振り向いた。
髪を左側に無造作に束ねていて、ここではあまり見かけない女の子だった。
忘れ物でも取りに来たのかな?
そう思いながら、私は知らない振りをして窓から見える景色に目を戻した。
不意に「こんにちは」と話掛けられた。
「えっ!!」
この場所で誰かと話すのは初めてだったので私は空耳かと思い、呆けた顔をしながら彼女を見ていた。
すると、彼女はにっこり笑ってもう一度
「こんにちは!」
とゆっくり話し掛けて来たのだった。
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