6話 書庫で
「……人族以外の種族か」
俺は手に持つ本を読みながら1人で呟く。俺が今持っている本は『世界の地理と人種について』という本だ。
この世界に来て1月が経つ中で、俺たちが学んだ事は戦闘の方と魔法の事についてだけで、この世界の事についてはあまり教えてもらえなかった。
俺たちも新しい生活に慣れるのに必死で、他の国の事などに気にしていられなかったというのもあるが。
今日はリムドーさんがいないらしので、午前は魔法の授業をして、午後は自習という事になったので、今俺たちが住ませてもらっている王宮の中にある車庫へと訪れていたのだ。
この書庫はこの王宮に勤めている者なら誰でも使えるらしく、俺たちも使ってもいいとの許可が出ている。書庫の中は、かなり広く、本が書棚にぎっしりと詰め込まれていた。
この中から目的の本を探すのは困難だったので、この書庫の司書さんに尋ねて、俺の希望する本を探してもらった。凄い事に、どこにどの本があるのか覚えているようで、直ぐに見つけてくれた。
席に座り本をめくっていく。能力の言語理解のお陰で読む事も出来る。本を読み進めていく中でわかったのは、この国、ヘンドリクス王国がある大陸には五代国家というのがあるという事と、人間だけでなく、複数の種族がいる事がわかった。
まず五代国家についてだが、1つ目の国が、今俺たちがいるこの国、ヘンドリクス王国だ。人口が1千万人ほどの国で、人族のみがいる国だそうだ。
この国だけが持つ特殊な魔法、勇者召喚魔法があるため、魔王が現れた時は他の国に比べて発言力が高くなるらしい。
このヘンドリクス王国の隣にあるのが人口1千5百万ほどの人口を誇るティルターナ帝国だ。完全実力主義の国らしく、能力さえあれば、人種関係なくかなり良い職に就けるらしい。
このティルターナ帝国とヘンドリクス王国の北に広がるミレバ森林とミレバ山を越えた向こうには、獣人という、様々な動物の特徴を持った人型の種族が住む国、グリーンウッド王国があるらしい。
残念な事に人族主義であるこの国とは交易をしていないため、獣人を見る事は難しいらしい。帝国とはしているみたいだが。
逆に王国と帝国の南側にはいくつかの川と国を挟んだ向こうにヘパイストス王国というのがあるらしい。ファンタジーで有名な種族、ドワーフ族が治める国という。
後、ドワーフと同じでファンタジーな人種、エルフが治める国、エルフィオーネ王国がいくつかの国を挟んでヘンドリクス王国の東側にあるらしい。
この5つの国がこの大陸の中で発言力や軍事力の高い五代国家らしい。他にも商人だけの国などもあるようだが、特に様々な要因で上なのがこの五代国家なのだと、書かれてある。
俺たちもその内他の国いく事があるのだろう。その時人族以外の人たちに会えるのだろうか。少し楽しみだ。
それから、この世界には魔族という種族はいないらしい。てっきり、魔王というのは魔族の王の事を指しているのかと思ったら違うらしい。
魔王というのは、能力にとある能力がついて職業が魔王になった者の事を指すらしい。つまり、人族の誰かがなる可能性もあるのだとか。
何故その能力が手に入るのか、何故魔王になるのかはわかっていないらしいのだが、種族関係無く魔王になった者は、必ずこの世界に被害をもたらすらしい。
その能力が『覇天魔象』という能力らしい。この能力の効果は分かっていないが、唯一分かっているのが、勇者やそのパーティー以外は傷つける事が出来ないという事だけだ。
100数年前の魔王が鬼族という種族から出たらしく、筋力が3千に達する化け物だったとか。この世界の兵士の平均が50前後と考えると、魔王ってかなりの化け物だよな。今の俺では到底太刀打ちできない。
これからどうしていけば良いのか考えていると、視界の端に本を読みながらうんうんと唸っている女性が目に入った。
ピンク髪と日本ではコスプレにしか見えない髪をした、とても綺麗なドレスを着た女性。その髪も不自然では無く自然と合っており不思議には思わなかった。
年齢は俺たちと変わらないだろう。そして、俺が見ているのに気が付いたのか、こちらを見てくる女性が。そして、何を思ったのか俺の方へとやって来た。な、なんだ?
「あなた、勇者様ですよね?」
「……は、はい、そうですが……」
「助けてください!」
突然の言葉に俺はぽかぁんとしてしまった。これが、この国の第2王女、ミーリア・ヴァン・ヘンドリクスとの出会いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます