7話 王女のお願い
突然俺の元にやって来て、助けて下さい、と言ってきたピンク髪の女性。あまりの事に呆然としていると
「突然ごめんなさい。勉強の邪魔してしまって」
「いえ、別に構いませんが……あなたは?」
「あっ、自己紹介もせずに失礼しました。私の名前はミーリア・ヴァン・ヘンドリクスです。一応この国の王女をしています」
そう言い頭を下げるミーリア王女。この書庫にいるのでどこかの令嬢かと思ってはいたが、まさか王女様だったとは。俺は慌てて立ち上がるが
「あっ、そのままお掛け下さい、勇者様。私の方からお願いがあって来たのですから。それに、私は肩書きは王女となっていますが、あってないようなものですから」
そう言うミーリア王女の言葉に、俺は戸惑いながらも元の席に座ると、俺の向かいに座るミーリア王女。身長は160センチほどだろうか。ピンク髪で胸が大きくてと……陽奈がハマっていた音ゲーに出て来るキャラクターに似ている。
まん○お○に、○りを……なんてな。
「それで、俺に助けて欲しいってどう言う事なのでしょうか? この世界に来てまだ1月程しか経っていない俺が助けられる事なんてあるのでしょうか?」
「はい、勿論です。むしろ、これは勇者様にしかお願いが出来ない事なんです。まずはこれを見て下さい」
そう言ってミーリア王女から手渡されたのは1冊の本だった。内容は100数年前の勇者の物語だった。俺も前に一度読んだ事がある。
ミーリア王女はその中のとあるページを指差す。そこには、勇者と仲間の1人である精霊魔法師が2人で精霊と契約する姿が描かれていた。
「私の職業、この方と同じ精霊魔法師なのです。ただ、精霊魔法師自体は何人もいるのですが、その方たちから師事をしても私、精霊と契約出来なくて」
そう言い、顔を俯かせるミーリア王女。なるほど。それで、俺に助けて欲しいと。
「この本の様に俺が手伝えば良いわけですね」
「はいっ! その通りです。ただ、これはあくまでも伝承なので成功するかわかりません。あっ、成功しなくても私の才能が無いだけなので勇者様は気にしなくも大丈夫ですよ!」
そう力強く言ってくるミーリア王女。別にそんな事気にしなくても良いのだけど。
それから、俺とミーリア王女は精霊との契約方法について話していく。精霊との契約は別に精霊魔法師の職業を持っていなくても出来るらしいのだが、精霊魔法師の方が精霊との繋がりが強いらしい。
精霊との契約をする方法は2通りあり、1つ目が精霊を召喚する魔法陣を書き、精霊が出す条件をクリアすれば契約出来る。
条件は様々であり、単に満足するまで魔力をくれ、や、戦いに勝てば契約など、その契約する精霊によって様々ある、とミーリア王女が持っていたもう一冊の本『精霊との契約の仕方』と言う本に書いてあった。
2つ目が精霊から契約の話を持ち出してくる事だ。精霊にだって自我があり、好き嫌いもある。その中で精霊が気に入った人間を見つければ、向こうから契約の話を持ってくるらしい。当然こちらからお願いするより、契約の繋がりが強く引き出せる力も大きいらしい。
この精霊の本には、精霊と対をなす悪霊についても書かれていた。悪霊は、契約すれば精霊と同じように力を使えるようになるらしいのだが、契約さえしてしまえば魔力の供給だけで良くなる精霊と違い、魔力以外にも対価を払わなければいけないらしい。
対価は様々で血を求める悪霊や、記憶や夢、体の一部を求める悪霊もいるらしい。その分力も絶大なのだとか。ただ、悪霊との契約はどの国も認めていないらしい。これは禁忌なのだとか。
まあ、契約の仕方が精霊と違ってこちらから呼ぶって事が難しいらしいので、気にする事はないようだが。
「不躾なお願いで申し訳ないのですが、どうかお願いします!」
「そ、そんな! 頭を上げて下さい! 俺なんかで良ければお手伝いいたしますから!」
俺なんかに頭を下げるミーリア王女に、俺は慌てて頭を上げて貰う。そんな、俺が手伝うだけで良いのなら全然手伝うのに。
「本当ですかっ! ありがとうございます!」
俺の言葉を聞いたミーリア王女は、俺の両手を握って喜びながら上下に振る。
「そんなに喜ぶのは早いですよ、ミーリア様。まだ、精霊と契約出来たわけではないのですから」
「はっ! そ、それもそうね。私ったら、もしかしたら契約出来るかもしれないと思って喜んじゃいました。そうですよね、これからが勝負ですね!」
ミーリア王女は両拳を握りしめてふんすー、と気合を入れる。男がやると暑苦しいだけだが、ミーリア王女みたいな綺麗な人がやると可愛らしい。眼福。
「それじゃあ、行きましょう!」
「わかりました、ミーリア様」
どのような結果になるかわからないが、俺は自分の出来る事をしっかりとやろう。
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