第6話 リュドミラの覚醒

      1


 登呂築無人とろつきナサトは、国立更生研究所の屋上から飛び降りた。らしい。

 地上で待機していたスーザちゃんの私設部隊の対処が早かったお陰で、

 一命は取りとめ、いま。

 僕が入院させられているこの、○○大学病院にいるとのこと。

 いっそ同室にしてくれればいいものを。

「信じて下さらないのね」スーザちゃんがリンゴの皮をむく手を止める。「ですが、わたくしもう心配で心配で。どうしてムダさんがそんなお怪我を」

 痛い?のか。

 よくわからない。

 どこを刺されたのかいまいち憶えていないが、

 左腕と脇腹に手術的な痕跡が。

 あるのでそこをやられたのだろう。二箇所。

 ちょっとどころかだいぶ体たらく。

 なまじこっちが丸腰のほうがもっと上手に立ち回れた気がしてならない。

 お荷物手負いとほぼ同義。なんで僕は、

 彼を庇ったんだろう。

 登呂築無人を。

 悟桐さとぎり助手を。

「八つ裂きにする手筈は整えていますわ」スーザちゃんがナイフを片手に微笑む。

「いや、それはちょっと待ってね」

 国立更生研究所はどうなるんだろう。

 緑野医師は生死不明だし。

 悟桐助手は殺人未遂だし。

 所長に至っては。

「どうもなりませんわ」スーザちゃんが僕の思考を読んだ。「以前のように、性犯罪者の更生施設としてセキさんの野望の下」

「それでその瀬勿関先生は?」僕が気を失わせたあと。「大丈夫? てゆうか怒ってない?」

「ああ、かんかんだよ」ドアにもたれてアンニュイに佇むそのお姿は。「実にかんかん照りだ。雪も溶けてしまう」

 違った。紛いものが、

 意味もない脚線を露出している。

 某ヘンタイ女装課長。

「何やってるんですか」

「似てない?」

「似てない」

「えー」

 透けるワイシャツにマイクロミニのスカート。そこに白衣を羽織って瀬勿関先生のコスプレをした胡子栗課長がベッドサイドに飛びかかってくる。

「殉職2号な部下を思い遣って、眼が覚めたときにぶるるんと奮い立てるように決めてきたってのにさ」

「殉職って」某課長じゃあるまいし。

「はい、ムダさん!」スーザちゃんが僕の口に、

 うさぎさんリンゴをねじ込む。

「ね? リンゴはやはり蜜入りが美味ですわよね?」

「なーにをわかりやすくお話逸らしちゃってんすか」課長が丸椅子を引きずって勝手に座る。「よーかい露出狂なら無事だよ。ぴんぴんしてるよ。今回のことでちっとはさあ、大人しくなると思ってたのに。逆効果ってゆうかねえ」

「研究所ですか?」居場所。

「なに? 会いたいって? やーめやめ」課長が顔の前で手を振る。「課長命令。部下をこんな危険な眼に合わせてどや顔決め込んでるような悪逆非道な期間限定上司のとこなんて行かせらんないよ。心配したんだよ? ご主人ほどじゃないけどさ」

 言われてようやく気づく。

 スーザちゃんは、

 眼が真っ赤だった。充血している。

「わたくし、もう。ムダさんが死んでしまったら」スーザちゃんが抱きついてくる。脇腹に体重を掛けないように気遣ってくれているようだったが。「研究所もろとも破壊工作をしていたところでしたわ」

「そっか」それは命拾いだった。「で、やっぱり出掛けてきたいんだけど」

「絶対安静ですわよ」

「そーそー」課長が同意する。「これもなんかのあれだと思って休んでっても罰当たらないと思うけどな。従わないなら課長命令にするだけだね。ど?」

 ど?て、

 両サイドからそんな顔して迫られたら。

「あー、急に眠気が」布団に隠れるしかない。

「ムダさん!」

「ムダくん」

「寝てるから返事できませんよー」眼を瞑って布団にもぐったら、

 本当に眠くなってきて。

 寝てしまったのだろう。眼が醒めたら、

 スーザちゃんも課長もいなかった。いないだろう。

 いるイコール添い寝を決め込みそうな二人だ。身の毛もよだつ。

 よだっていないのが証拠の一つで。

 ベッドの上には僕しかいない。手探りでわかる範囲だが。

 照明が落ちている。

 カーテンの隙間から洩れる、

 仄かな明かり。

 街灯か、

 月か。

 夜だ。

 また夜。不当異動の僕が辞令と相成るその日まで、

 あと何日なのか。

「部下がすまなかったな」今度は幻じゃなさそうだった。

 ドアにもたれてアンニュイに佇むそのお姿は。

 瀬勿関先生のホンモノ。

 だろうと思う。

 そう期待している僕がいる。

「穴が塞がるまで面倒を看させてもいいが」加害者に。

「そうゆうの鬱陶しいんで」

「だろうな。返答は予想できた」

 カツン。かつん、と。

 やけに響く。

 この不用意に広いあからさまなVIP個室のせいか。

「先生の権限ですか」VIP個室。

「訊きたいのはそんなことか」

「三つ?でしょうか」質問してもいい数。

 瀬勿関先生が、丸椅子に座る。

 ベッドサイド。

 組んだ白い脚が月明かりに浮かび上がる。扇情的な。

「賭けをしないか」

「と、いいますと?」

「ナサトは隣だ」瀬勿関先生は膝にタブレットをのせて、

 ディスプレイがひどく眩しい。

 眼を凝らすと逃げていく。

 しかし眼を開けなければ見えない。

 なにも。

 なにが。映っているのか。

 予想はついた。

「じきに始まる」

 なにが。無意味な問いは無視される。

 映像が動いた。

 部屋の内装はこことまったく同じ。ただ、

 その部屋には僕も瀬勿関先生もいない。代わりに、

 いるのは。

 ベッドに仰向けに拘束された男。

 丸椅子を引っかけて転ばせてしまった女。その二人の、

 脳天を映している。カメラは、

 天井に。

「実験をしようと思う」瀬勿関先生が平板な声で言う。違った。

 確かに瀬勿関先生の声には違いなかったが、

 いまここに。僕の眼の前にいる瀬勿関先生が、

 いまここで。

 発した音声ではなかった。ディスプレイの向こうにいる、

 二人に対して。

「ライヴですか?」この映像は。

「ナサトとマリアだ」瀬勿関先生が言う。いまここにいるほう。「そこにいるのが誰かわかるか?マリア。お前がずっと会いたかった奴だ」瀬勿関先生が言う。いまここにいないほう。「7年前からな」

「向こうが録音で」この映像が本当にライヴだとは限らない。

 なにせこの部屋と、

 まったく同じつくりなのだ。

 VIP個室がそう何部屋もあっては敵わない。

「僕は何日間ここにいたんですか」病室。

「賭けの内容だが」瀬勿関先生が言う。いまここにいるほう。「7年前の怨みを晴らすチャンスをやる。見ての通りそいつは動けない。ベッドの下を見てみろ」瀬勿関先生が言う。いまここにいないほう。「娘のお前に、最初で最後のプレゼントだ」

 映像の中のマリアさんと思しき女性は、

 訝しがりながらも。瀬勿関先生の本名?を呼び捨てで怒鳴りつつ、

 ベッドの下にあるプレゼントとやらを手にする。

 包丁。

「嫁入り道具とかの一環ではないんですよね?」何か伝統工芸的な?

 包丁だ。どう見ても。

「聞こえているか、ナサト」瀬勿関先生が言う。いまここにいないほう。「マリアがナサトを殺すか殺さないか。賭けようか」瀬勿関先生が言う。いまここにいるほう。「ムダくん、勝ったほうが負けたほうになんでも一つ命令できる。拒否権はない」

「それって、この賭けとやらを受ける受けないにも当て嵌まるんですよね?」

 瀬勿関先生の、

 メガネのレンズがディスプレイの光を受け止める。

 いまここにいるほう。

「どっちに賭けるんだ?」

「先生が選ばなかったほうで」


      2


 何の変哲もない白いベッド。

 四肢と体躯を拘束され、

 ナサトくんは首すら動かせない。のは、

 屋上から飛び降りた、という情報を鵜呑みにするなら。

 拘束なんかしなくても、

 彼はそれなりに全身を固定され動けなくなっている。

 では、拘束の意味は?あるのかといえば、

 逃げる逃げない云々より、

 彼を逃がす意図はない。と、

 眼に見える形でマリアさんに示してある。と取ったほうが。

 そんなマリアさんが包丁を持ったまま、

 かれこれ数十分は経過している。怨みつらみをぶつけると思いきや、

 何も言わず。

 むしろベッドに横たわる無防備なナサトくんのほうが、

 べらべらべらべら喋り続けている。

 ナサトくんがべらべら喋っているせいで、

 マリアさんが何も言わないのかもしれない。言う気が失せている。

「殺せよ」ナサトくんが言う。この数十分で、

 それと同じ内容のセリフを何百回発したことか。

「俺なら殺してるね」

 挑発ではない。たしかに、彼の性格上、

 この絶体絶命の状況を愉しんでいないといったらあれだが。

 挑発をする意味がない。すでに彼は、

 7年前。

 マリアさんの恋人・不破繁栄を殺すことによって、

 マリアさんを挑発しきっている。

「どうしたよ? 殺すのが怖ぇか?」

「つまんないガキね」マリアさんが言う。やっと、

 喋った。

 ナサトくんに向けて。

 映像はなかなかの解像度で、

 その表情までよく見える。天井を向いていれば、だが。

「あ? なんだって?」よし。かかった、とばかりに歪むナサトくんの顔。

「二度は言わないわ。ガキ」マリアさんは包丁を持ったまま、

 ベッドを見つめる。

 ベッドサイドに立っている。

「つまんねえガキの俺は殺す意味もねえってのかよ」

「どうしようか考えてるの」

「殺すか殺さねえか?」

「殺してほしいの?」

「そうだな」ナサトくんの口がにい、と裂ける。「先生の娘のあんたになら、殺されてもいいかもな。つーかあんた、先生そっくりだぜ? こーふんしてきた」

 マリアさんの表情が見えないので、代わりに。

 その母親の顔を見ようとしたら、

「これが録画だとするなら賭けの意味はない」タブレットの後方に隠される。

「そうですね。先生は結末を知っていて僕に賭けを持ちかけていることになりますから」自分でも言っていて意味のない相槌だった。言った本人にだって自覚できているのだから言われた相手は、

 瀬勿関先生は。

「私は殺さないほうに賭けよう」

「三択じゃないんですね」先生お得意の。

「殺す殺さない以外に選択肢があるか?」タブレットを再び膝の上に。瀬勿関先生の顔が現れる。

 ディスプレイの明かりでほの白く。

「マリアにナサトを殺させないために隔離したと言ったな。私の娘だ。そんな短絡的な方法を採ると思うか?」

「熟考の末の殺人なんて存在しますか? 本当に熟考というものができていれば殺人という方法は真っ先に選択肢の外です。すみませんが、当時二十歳かそこらの人間の恋人という定義にそこまで駆り立てるエネルギィがあったとは思えません。マリアさんが復讐したかったのは、彼女の眼の前でまな板の鯉になっているナサトくんではありません」

「私だろうな」瀬勿関先生は自虐的に嗤う。

「以上の観点より、賭けの内容そのものの不備を訴えるものであります、所長。マリアさんは殺すはずがないんです」殺さないように。殺すなんて思いつかないように。「あなたが治療プログラムとやらを施した。成功したんでしょう? 上手く行ったからマリアさんは」外の世界へ戻された。

 映像の中のマリアさんの手に包丁は握られていなかった。

 包丁は、

 まな板の上にあった。まな板と、

 垂直方向に。

 真っ直ぐに。そこは、

 まな板の上の、

 さらに上。

 鯉の胸に。

「苦しみなんてやらない」ああやっとようやく。それだけの間が合ってマリアさんは、

 包丁に全体重をのせて、

 ぐりぐりと掻き混ぜる。包丁の座標が変わるたびに、

 ナサトくんが。

 五十音にだってアルファベットにだって存在しない音を生成させられる。

 天井というカメラの位置の唯一絶対の解に気づかされる。カメラは、

 そこでなければならなかった。ハンディカムでは駄目だった。

 刃物で内臓という内臓の壁を開け放たれて、

 臓器という概念を剥奪される。なれの果てを、

 ぶちまけられる。

 ははっははっははっはっはっはっはhっはっはhっはっはっはっはhhっは。

 誰が笑っているのか。嗤っているのは、

 誰なのか。

 誰ならこの状況を最も、

 嗤えるのだろうか。

「どいつもこいつも短絡的で困ったものだな」瀬勿関先生が言う。

 いま僕の眼の前にいる瀬勿関先生が言ったのか。

 いま僕の眼の前にいないほうのディスプレイの向こうの瀬勿関先生が言ったのかわからなかった。

「マリア、存分に殺すといい。気が済むまで穴を開けろ。そいつは空っぽだろう?何もないだろう? そんな空洞のクソガキに殺された怨みをいまこそ晴らせ」

 マリアさんの手から包丁が離れる。血まみれの顔と手をシーツで拭って。

 レンズを睨みつける。

「次はあんたよ」

 映像が終わる。

 黒い画面。タブレットが沈黙する。

「さすがじゃないか、ムダくん」瀬勿関先生が乾いた拍手をくれる。「見事、賭けは君の勝ちだ。なんでも言うことを聞こう。拒否権はないからな」

「あなたの部下の逮捕許可をください」

「私じゃないのか。監督不行き届きは問われないのか」

「先生の治療方針は間違っていたんです。先生は美しすぎる。太古の昔より人々を狂わせてきた妖艶な月のようです。あなたによって狂わされた人間は、あなたによってのみ救われる。あなたを逮捕したらあとを追うニンゲンが数知れない。かくゆう僕も」

「言ってくれるじゃないか」瀬勿関先生がタブレットを丸椅子に置いて。

 ベッドサイドの概念を飛び越えて。

 僕が横たわるベッドの上に片膝を付ける。

「命令内容の変更も受け付けよう。間に合うぞ」

 僕が布団をかけていなかったらもれなく、

 白い太ももの根元が拝めたが。

「君に捕まるなら本望だ。朱咲スザキが言っていたか」

 吐息だけが届く。

 狂わされてはいけない。惑わされてはいけない。

 僕は、

 ただの女に興味はないんだから。

「覚醒させてあげてください。呪いという洗脳を解いて」彼は、

 斎宮さいぐうイツキ主任こそ、

「治療してあげてください」ニセ患者にかまけていないで。

「私の患者にしろと? それが命令でいいのか」

 スーザちゃん、まずい。

 見てるんでしょ?

 見てるんなら、

 助けに来たほうがよくない?

「どうするんだ?」瀬勿関先生が僕の鼻先に舌を近づける。「それでいいのか」

 顔を背けると頬に接触する。動かなければ、

 いまのところ最上の防御だ。

「斎宮イツキという人間は最初から存在しない」女装課長に調べてもらった。「斎宮いつきサイグウという名前の人間なら、7年前に殺されている。ことになっているんです記録上は。友人の不破繁栄ふわシゲルによって。いや、違う。不破繁栄は誰一人殺していない。あんな下半身脳に人を殺すだけのエネルギィはない。ではどうして不破繁栄の周りの女性が立て続けに6人も死んでしまったのか。殺している人間がいたんです。不破繁栄を追い詰めるために。精神的に揺さぶるために」

「君の仮説は本当に突飛だな。サイグウがいない? じゃあ君が一週間過ごしたあの研究所にいた斎宮イツキは一体誰なんだ?幽霊か?」

「斎宮主任が僕に開示してくれた情報。友人・不破繁栄が6人の女性を殺し、そのあと連続強姦魔になったというアレ。おかしくありませんか?」

「回りくどいな。サイグウを逮捕したいのならすればいい。ついでに私も連れていくか?」

「結論を言います」僕の腹に穴さえ開いていなければまた気を失わない程度に動きを封じられるのに。

 瀬勿関先生は、

 自己犠牲が激しくていけない。

 どこかの女装課長そっくりだ。

「7年前、不破繁栄は死にました。死んでいたんです。不破繁栄の女癖の悪さに業を煮やした友人によって。殺すつもりはなかった、おそらく。彼が不破繁栄を殺す理由はひどく視野狭窄に陥った末の間違った選択肢でしかない。殺してしまっては本末転倒だ。殺された6人も浮かばれない」

「連続強姦殺人犯はサイグウということか? 君の突飛極まりない仮説によるなら」

 急激にじわりじわりと腹部が痛む。その弱点極まりない腹部に、

 瀬勿関先生が指を這わせる。

 布団越しに。布団がなければ、

 さらなる出血を生んでいた。

「ゴトーは君を殺すつもりでいたよ。愛する私の弔い合戦だ」

「僕を口封じで殺すおつもりでしたらせめてその仮説が突飛かどうか確かめてからにしてもらえませんか?」

「随分な自信だな。今度こそはノンフィクションで頼むぞ」

 勝てるか。

 手負いの勇者が傷口人質に取られながら魔王に挑んでるようなものだ。

 負けるわけにいかない。

 勝てなくてもいい。負けなければそれで。

「彼は不破繁栄を見てきました。ずっとずっと。彼の女癖の悪さをずっとそばで見てきました。それを改めさせようという時期もあったのでしょう。でも当の本人は一向に反省の色もなく、とっかえひっかえ女を乗り換える。この怒りはいつしか張本人よりもその張本人が乗り捨てる女の方へ向いていく」

 瀬勿関先生は無言だ。相槌も頷きも首振りもない。

 受容も共感も何もない。あるのは、

 通過。

 解離を起こしている。

「大丈夫ですか?」

「あいつは不破繁栄を殺したんだ」瀬勿関先生はぽつりとそれだけ呟いて、

 ベッドの上によじ登る。

 両脚で立って僕を見下ろす。その顔は、

「患者になんかしてやるものか。あいつは私の不破くんを」

 月明かりが彩って余計に、

 狂いを帯びて見えた。女の顔だった。

 精神科医でもなければ、

 E‐KIS所長でもなくて。

 母親でもなければ、

 僕の知っている瀬勿関先生はそこにはいなかった。

 いたのは、

 ただの女。僕の興味の外。

「不破くんはもういない」



      6繁栄る男は

   それって見返る女はだれって



 殺してやろうと思った。

 不破くんを殺した?

 嘘だと思った。電話をもらったときは。

 嘘だと思って、

 信じたくなくて。

 不破くんが、

 斎宮くんを殺したことにしてしまった。大脳が。

「それでいいんじゃないですか?」斎宮くんという不破くんはそう言った。「それで先生の心が守れるのなら」

 脳は、

 心を守るためなら何でもする。

 記憶の改竄と抹消。見て見ぬふり。

 なかったことにした。

 不破くんは死んでない。

 死んだのは、

「不破くん」

「死んだんですよ」ムダくんが言う。

 どうして朱咲がムダくんを私のところに派遣することを許可したのか。

 どうして私がムダくんをE‐KISの副所長にすることを望んでいるのか。

 理由は、

 交わる。

「先生、あのときの勝負がついていません」ムダくんは、

 真っ直ぐ私を見上げる。

 私は真っ直ぐ見下ろす。

 視線は、

 交わる。

「3択です。いいですか?拒否権はありません」

「そいつが賭けに勝った命令か? いいだろう」

 こんな状況下でも尚、

 私の心を守ろうとしてくれている。

 私の心に踏み込まずにいてくれている。

「あなたが、瀬勿関シゲルが、本当に、心の底から愛しているのはこの中の誰」

 1

 2

 3

「どれですか」

「選択肢が示されていないようだが」

「どうぞ? 任意の三名を当てはめてください」

「やってくれるじゃないか」そうゆうことか。

 1 緑野リョクヤ

 2 梧桐ゴトー

 3 登呂築無人

「選べるわけがないだろう」どいつもこいつも。「私のだいじな患者だ」

「残念」ムダくんが言う。「先生ともあろうあなたが、サービス問題を外すだなんて」

「外してやったんだ。わからないか?」わかっている。

 言いたくないなら、

 言わなくていい。そういうことだ。

 なんでこんなに、

 生ぬるいんだ君は。

「選べないならそれは選択肢の外ですね。何を遠慮するんですか? 娘さんの彼氏を寝取ったことを悔いているんですか」

 前言撤回。そうじゃない。

 ムダくんきみは。

 そうゆう手口を多用するのか。

 優しくしておいて信用させて油断したところを一気に。

 詐欺師の手口だ。

「隠し4番を提示して下さい」ムダくんは食い下がる。

「少なくとも君じゃないな。副所長。さあ、念願のときだ。君を国立更生研究所副所長研修の身から解こう。一週間ご苦労だった」

「今日が終了日だったんですか?」

「君に私の下は狭すぎる」何日目なのか、

 私にもよくわかっていない。

 朱咲が延滞料を徴収に来ないので、

 もしかしたらまだあと一日かそこら残っているのかもしれない。

 どうでもいいか。

 私の目的は充分に果たした。

「どうして先生は僕をそんなに買われるんですか?」

「それを答えたら隠し4番の提示はしないぞ」

「言って下さるんですか?」隠し4番を。

 私本人の口から言うことに意味がある。

 言語化するということは、

 そうゆうことだ。過去というカテゴリへ、

 移動させる。

 そうゆう作用を持っている。

 反対に、言語化できないとするならそれは。

 未解決事象。反復夢。

 さあて、私は。

 とっくに過去から解放されているのか。

 いまだ囚われている現在なのか。

「どうぞ?」ムダくんが言う。

「死者相手に愛を告白しろとでも言うのか?」

 死んだ。なんで死んだんだ。

 私はまだ、

 君を治していなかったのに。脳を下半身に犯された君を。

 治す前に死んでしまった。

「死んだって治らないんですよ」不破くんの顔をした斎宮くんは言った。「あいつは、女なら誰でもいいと思ってる。誰でもです。それが女なら。女の身体的特徴さえ備えていればそれで。あいつにとって女という存在はその程度の価値しかない」それでも?

 斎宮くんは私に尋ねた。

「それでも先生は不破のことが」

 好きだ。

 私の患者である限り、

 私は最上の愛を感じる。

「先生、俺、もうどうしたらいいのか」不破くんはそう言って私を頼ってきてくれた。

 治療関係はここで成立。

 私はあなたの主治医。

 あなたは私の患者。

 私はあなたを治す義務がある。

 だからあなたも、

 治したいと強く願って?

 そうしないと、

「治るとか治らないとかそうゆう問題じゃ」不破くんはだいぶ限界だった。

 自分が付き合った女が次々に死んでいく。

 次の女に乗り換えたそのタイミングで。

 自分が殺してるのかもしれない。

 でも自分は殺した覚えはない。

 脳は、

 心を守るためなら何でもする。

 記憶の改竄と抹消。見て見ぬふり。

 なかったことにした。

 女たちは死んでない。

 死んだのは、

「やってねえんだ俺は」

 精神を安定させる薬を処方しても。

「これ飲めば死ななくなんのかよ」不破くんは処方箋を破り捨てた。

 散らばる。

 診療報酬。

 そういう意味じゃなかったんだけど。

 そうゆう意味にしか取れない。

 お前が殺した。

 お前がやった。

「俺は殺してない」

 信じるも信じないもない。

 だってあなたは、

 私の患者。

 あなたの言うことは、

 症状を探る根拠でしかない。

「やってねえんだ。なあ、先生」不破くんが私の両肩に縋る。「頼むよ。俺がやってねえって証拠をつかんでくれよ。考えたんだ。先生、一週間、いや、三日でいい。先生の伝手で入院させてくれよ」

 それがいいかもしれない。

 顔が利く大学病院に彼を紹介した。

 彼に、

 大学病院を紹介したんじゃない。逆だ。

 稀有なケース。症例研究の価値あり。

 カルテにそういう太鼓判を押して。

 結果から言えばそれが間違ってた。

 患者としっかりラポールが取れていない状況下で、

 他の医療機関を紹介するというのは。

 たらい回しという治療放棄でしかなく。

 しかも私は入院に一切立ち会わなかった。

 紹介状を書いただけ。

 私は紹介状を書いた時点であなたの主治医ではなくなった。

「先生が看てくれるんじゃなかったのかよ?」不破くんは病院から電話をくれた。「俺を見捨てんのか? 俺は先生なら、て思って」

 私はその電話を切ったその手で、

 大学病院の彼の主治医に連絡を入れた。

 薬を増やすか変更したほうがいい、と。

 その夜だった。

 彼は退院した。自分の意思で。

 私を殺しに来るのだと思った。

 でも、

 違った。

 彼は、

 頼りにならない元主治医の私を見限って。

 頼りになる彼の友人のところを頼った。

 斎宮サイグウ。

 友人のバイト先であるカフェを訪れ、

 そこで彼は殺される。

 斎宮サイグウであった不破シゲルが殺した。

 不破くんは、

 もういない。

「そうです。僕、じゃねえな。俺だよ。先生」不破繁栄はそう言った。「連続強姦殺人犯捜してんだろ? ケーサツ様のご依頼で。俺に決まってんだろ?」だから俺を。「匿ってくれよ。俺が捕まって困んの、俺だけじゃねえだろ? それにこのまま野放しにしといたらいま付き合ってる女も殺しちまいそうでよ」

 不破繁栄は、

 緑野マリアと付き合っていた。

 マリアがどうなろうと私はどうでもよかったが。

「いい症例研究になんと思うぜ?」

 駄目だ。

 脳が改竄をしてあって。

 元の記憶が辿れない。

「7年は遅すぎですよ」ムダくんが言う。

 その通りだ。

「言いますか?」その名を、

 彼の名前を。

「倫理違反だ」主治医は患者に患者以上のものを求めてはいけない。

 患者は患者でしかない。

 最初から間違いだったのだ。

 私は彼を、

 患者にすべきではなかった。

「私にはまだ治療すべき患者がごろごろいるんでんな」身分を追われるわけにいかない。

 ムダくんが寝返りを打つ。

 窓側に顔を向けて。

「見てませんので。お好きなタイミングでお帰り下さい」

「別に言えばいいさ。密会くらい」天井のレンズのその先で、

 お前はいつだって見ている。

 朱咲。

 密会を邪魔しに来なかったのはどういう了見だ?

 私に貸しでも作りたいのか?

「あの瀬勿関先生の眼から漏れるのは抗精神薬くらいのものですから」

「言うじゃないか」

 私だって、

「眼にゴミくらい入るさ」

 予想通り、

 部屋を出てすぐの廊下に朱咲がいた。

 全身真っ黒。

「誰かの葬式か?」

「どこぞの夜這いサキュバスの暴走次第では」朱咲がにっこりと笑う。

 廊下は最小限の照明しかなかったが、

 朱咲が笑ったのははっきりとわかった。そうゆう空気の亀裂を感じた。

「しばらく接近禁止と行こうじゃないか」ゲームにも負けたことだし。

「まあ、願ったり叶ったりですわ」

 恋人たちの聖夜には、

 お独りさまの私は引っ込むとしよう。

 帰る道すがら、思い出したので。

 とある部屋をのぞいていくとする。

 死んでいる音はしなかった。

 死のうとしている音が聞こえた。

 復讐しようとしていた奴に返り討ちに遭うとか。

 如何にもお前らしい。

 仕方がないから死ぬまで傍にいてやる。

 だから、

 眼を開けろ。

 死ぬまで傍になんかいたくない。

 私にはやることがある。

 お前の看病なんかまっぴらだ。

 見舞いにだって来てやらない。

 だから、

 眼を開けてくれ。

 お前がいなくなったら一体誰が、

 あの下半身脳たちに期日を与えるのか。

 私の専門は精神の解剖だ。

 お前の専門はなんだ?

 おい、

 聞いているのか。

 手が死人のように冷たかった。

 思わず放してしまう。

 なんだ、

 手遅れか。

 私のせいだ。

 私が殺したも同然だ。

 7年間。

 あいつをのうのうと生かしておいた主治医の私の責任だ。

 自分の手を汚さずに、

 自分の娘に殺させて。

 お前が死のうとしている音がする。

 うるさかった。

 止めてやりたかった。

 そのうるさい機械を静かにさせる方法は知っているが、

 それをすると、

 お前が死んだ音が聞こえない。

 聞きたくない。

 蒼白い顔。

 血の気のない肌。

 あれだけ深い血の海に突き落とされれば。

 手遅れだ。

 すべては、

 手遅れだった。

 7年前も。

 7年後も。

 うるさい。

 黙れ。

 静かにしてくれ。

 何も言わないで。

 何も、

 言える状態にないが。

 お前の髪が真っ白なのは、

 私が生気を吸い取ったから。

 お前の視力が壊滅的に悪いのは、

 私が暗黒の世界でお前を酷使したから。

 恨み事を言え。

 そのチアノーゼの唇で。

 聞きたくないんだ。

 お前が死ぬ音なんて。

 タブレットにメッセージが入っていた。

 先生からだ。


      3


「先生?」言ってから気づいた。

 そんなはずはない。先生が戻ってくるなんてことは。

 ないのだ。

「なんですの? わたくしではご不満?」スーザちゃんしかあり得ない。

「ごめん、頭働いてないみたいで」

 ついさっきまでの美脚精神科医とのバトルで、

 脳を動かす燃料を使い果たしたらしい。

 スーザちゃんはわざと窓際に立った。

 僕が窓を向いていたからだ。

 月明かりの逆光を背に。

 ほとんど喪服の少女。

「ご質問の前に謝罪の言葉を戴きますわ」

「ごめん、何の言い訳もしないよ」正直、

 具体的に何について謝ればいいのかわからなかった。

 そのことがすでにスーザちゃんの逆鱗に触れる要因足るのだろう。

「さあ、ムダさん。本日今日が何の日かご存じ?」

「ごめん、日付感覚がなくって」副所長研修は終わったようだったが。

 その副所長研修が終わる日が確か、スーザちゃんが待ちに待ったあの日だってことはおぼろげに覚えていなくはないのだが。

 僕の副所長研修が果たして、

 打ち切られたのか。任期満了の運びとなったのか。

「昨日がクリスマスイヴでしたのよ?」スーザちゃんが言う。

「明日なら知り合いの教授の誕生日なんだけど」

「よろしくて? 夜が明けたら退院ですわよ?」

「ドクタストップなんじゃないの?」

「ドクタストップをストップさせますわ」スーザちゃんが顔を近づける。「一週間分のキスをここで戴ける?」

「一週間どころか一日分だってキスしたことないよね?」

「まあ、すっかりサキュバスの餌食に」スーザちゃんが顔を遠ざける。

 僕の肩をつかんで僕のほうを遠ざけたわけだが。

「セキさんはあのくらいのことでへこたれるようなヤワな女ではございませんことよ」

「スーザちゃんもね」

「まあ、ひどい」

 なにか、

 尋ねたほうがいいような気がしたが。

 質問が何も浮かばない。

 元来僕は、

 他人のことなんかどうだっていいのだ。

 自分のことだってどうだっていいのに、

 どうして他人のことに興味がもてよう。

「おそらく今頃セキさんは隠されてない1番の殿方のもとで絶望に打ちひしがれておいでですわ」

「え」隠されてない1番は。

 緑野リョクヤ。

 逃亡途中の登呂築無人に刺された。

「ニンゲンというのは無慈悲に終わりを迎えますのよ」

「死んだの?」

 生死不明の外科部長。

「ええ、ついさっき」スーザちゃんがあまりにもあっけなく言うもんだから。

 にわかに信じがたいが。

 信じる?

 何を?

 自分だって信じていないってのに。

「残るはお二人ですけれど」スーザちゃんは僕のいないほうに向かって呟く。「サキュバスに魅せられた哀れな男の末路など知ったことではございませんわね」

「ねえ、スーザちゃん」

「なんですの?」

「どうして先生は僕をあんなに買ってくれてるんだろうね」

 僕はもしかすると、

 何かだいじなことを見落としているのかもしれない。

 もの凄く致命的な。


     4


「致命傷だった」先生は合成音声でそう言う。「そう信じたいあなたがいて、現にそこで横たわる彼は致命傷を負った結果でしかない」

 認めるべきなのだ。

 眼を開けろ。

 眼を開けないお前は、

 認められるべきだ。

 死んだ音を聞かなかった。

「あなたは音を聞いていない。スタッフは誰一人やってこない」先生は合成音声でそう言う。「もしかしたら彼は、死んでいないのはないか。あなたは信じたい」

 首を振る。

 先生に、

 私を惑わせる意図はない。

 違う。

 ちがう。

 本当に先生だろうか?

「わたしを疑うのも無理はない」先生は合成音声でそう言う。「非道な創始者のわたしは弟子のあなたを捨て、さらに自分の代理戦争までさせている。あなたを研究サンプルとしか見なしていない可能性だってある」

 それは構わない。

 いまの私があるのは先生のお陰だ。

 先生のお陰で私の研究を続けることができている。

「あなたには感謝している」

 先生、それは。

 私のセリフです。

 先生は私がそう思うのを見越して予防線を張ったのだ。

 私がそう思わないように。

 先生は、私に。

 崇拝されたくない。

 憎んでほしい。怨んでほしい。そうすることで、

 そこで生じたエネルギィで以って。

 この非道極まりない研究を続ける原動力としてほしい。

「そろそろ行く」

 さようなら、先生。

 絶妙なタイミングでメールをくれてありがとうございました。

 これで私はまた、

 あなたを忘れないでいることができる。

 冷たい手。

 死んでるみたいじゃないか。

 リョクヤ。

 お前の愛娘はお前に代わって復讐を果たしてくれたぞ。

 よくできた娘じゃないか。

 どこかの女と違って。

 どこかの女の血を引き継いでいながら。

 どこかの女よりよほどまともな血が流れている。

 私が死ねばよかったって?

 かもしれないな。

「先生!」ゴトーの声が聞こえた。

 振り向いてなんかやらない。

 元夫婦の死別を邪魔するなんて。

「野暮だな。実に野暮じゃないか」それに。「お前の職業は何だ? 病室での最大の禁忌を破り散らしたな」

「病室じゃありません」

 言うじゃないか。

「霊安室です」

「だったら尚配慮してくれてもいいんじゃないか。最愛の人の冷たくなった姿に縋って泣き崩れる遺族のやりきれない感情を踏みにじったも同然だ」

「先生とその男は何の関係もありません。仕事上の上司と部下です」

「関係あるじゃないか」上司と部下なら。「屁理屈が過ぎるぞ」

 屁理屈でもなんでも。ゴトーがさらに声を張り上げる。

 不出来な助手が無意味に声を張り上げている理由が、

 わからないほど落ちぶれてはいないつもりだが。

「そんな男のために先生の貴重な涙を消費しないでください」

「どこをどうしたら私が泣いてるように見えるんだ」見えないだろう。

 お前は、

 私の後ろにいる。

「僕は」ゴトーが距離を詰める。

 そんな音が近づいてくる。

 後ろ。

 すぐ、

 その後ろ。

「僕は先生の助手です。僕以上に先生を理解できる人間はいません」

「この世には、を付けてほしいものだがな」あの世になら、

 先生がいる。

 先生なら私を理解してくれている。

 そう思いたい私がいる。

「僕がいます」

「何しに来たんだ」本当に。

 ゆっくり悲しみに浸る余韻もない。

「迎えに来ました」ゴトーが私の隣に立って手を差し伸べる。「先生がいるべき場所はここじゃない。こんなところで、死体なんかの傍で泣いてるのは僕の尊敬する先生じゃない。僕の知ってる先生は、死体なんかに興味はない。先生の興味を引くのはただひとつ」

「少なくともお前じゃないな」

「はい」

「莫迦にあっさり認めるじゃないか」

「莫迦ですから」

「ようやくわかったか」ゴトーの手を払いのける。「悲嘆に暮れているところに付け込んで私に触ろうなど一兆年早いよ」

 梧桐さとぎりシゲル。

「借りていた名を返してやろう」

 その手に載せる。

 お前から奪った名を。

 必然的にお前の手に、

 触れなければいけなくなる。

「僕はゴトーです。お忘れですか?」

 瀬勿関シゲル先生。ゴトーが唱える。

 私がかけた呪文。

 私に私がかけたその呪いから、

 覚醒すべきなんだろう。

「眼醒めのキスが欲しい」

「どうぞ」ゴトーが顔を背ける。

「白雪姫じゃないんだ。こいつは」

 そこで冷たくなって横たわるリョクヤは。

「リンゴを詰まらせて死んだわけじゃない」

 ゴトーの肩を引き寄せる。

 ああ、

 なんて卑怯な女だ。

 私は。

 不破くんのことは言えない。とっかえひっかえ。

 男を乗り換える。

 誰だっていい。それが男なら。

 男の身体的特徴さえ備えていればそれで。私にとって男という存在はその程度の価値しかない。

「それでも」

 ゴトーは私に言う。

「それでも僕は先生のことが」

 好きだ。

 私の患者である限り、

 私は最上の愛を感じる。愛か。

 私には。

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