第4話 どさゆさ懐郷

      1


 治療を終えた胡子栗えびすりは、包帯で固定された右足を引きずっていた。

 8時06分。

 塑堂そどう接骨院。

 午前の診療は8時30分からなのだが、スーザちゃんの、脅しともつかないむしろ脅しのごり押しで、塑堂院長が折れざるを得なかった。

「折れてはいないが」症状説明。「安静にしていれば一週間で歩けるようになるよ」

 安静にしていれば、の部分が強調されていた。見るからに安静にしなさそうに見えたのだろう。

 その通りです。

 さすが、プロの眼は誤魔化せない。

 診療所は自宅と兼ねてあるらしかった。自宅を改装して診療所に充てたといったほうが正しいかもしれない。待合室が、どう見ても一般家庭の団欒居間だった。

 板の間の絨毯敷き。

 ちゃぶ台に新聞。テレビにマガジンラック。

「ありがとうございましたわ」会計を済ませようとしたスーザちゃんを、

 塑堂院長が遮る。

「事務が来てからでいい。それまでに」用事を。

 済ませろとばかりに、住居部分へ案内される。

 それでも廊下は医療機関特有のあのにおいがした。本来の目的としての居間として使われている居間。どことなく生活臭はよそよそしい。テーブルには椅子が四つ。

 胡子栗は真っ先に手前の椅子を陣取った。スーザちゃんはその隣の椅子へ。僕はそちら側に座るのもあれなので立った。

 奥へ、塑堂院長が腰掛ける。

「街の様子はご存じですかね」胡子栗が第一手を切り出す。

「テレビでやっていたな」

 報道規制は間に合わなかったか。それとも、一般家庭に早く正確に状況を知らせるために利用したか。ある意味、連絡網より確実かもしれない。

夜日古ヨルヒコの名を騙った偽者だろう」

 塑堂院長は、お世辞にも十代かそこらの子どもがいるとは思えない。歯にもの着せぬ言い方が許されるのなら、年を食っている。

 年を取ってから結婚をした。或いは、

 年を食ってからようやく念願の子どもが生まれた。

 五年前に亡くなったはずの塑堂夜日古は、当時十三歳。生きていれば、

 十八歳。

「生きていたとしたら如何です?もし」胡子栗が言う。足をぶらぶらさせながら。「もし、ですよ?死んでいなかったとしたら。迎えに行ってやってはくれませんか」

「何を言っているのかわからないが」

「それでも何を言っているのかわかりたい。からこそ、院長はこんなわけのわからないケーサツ組織の実験的民間委託だとかいうボクらを通したのではありませんか?話を聞くために。真実を見極めるために」

「事実は、あの子は、夜日古は五年前に」

「幽霊になって会いに来たのかもしれませんよ?お盆は過ぎましたが」

 僕はスーザちゃんの脳天を見つめつつ、塑堂院長の表情の変化に注意しつつ。

 胡子栗お得意の弁論大会の行く末を見守る。

「私には霊感の類はないが」塑堂院長が言いながら笑う。自分で言っていて可笑しかったのだろう。「失敬。五年も経って、まさかあの子のことを憶えてくれている者がいるのだなと。あのときは誰もとりあってはくれなかったというのに」

「ケーサツは忙しいですからね」胡子栗が冗談ぽく言う。

「あの子の、夜日古の死を調べ直してもらえるのなら、それがどんな如何わしい組織でも構わない。本当にあの子が生きているというのなら、迎えにでもなんでも行こう。なぁ」塑堂院長が接骨院につながる通用口を見遣る。

 ドアが開いた。

 両手で口元を覆った女性が立っていた。

「本当なのですか」塑堂夫人だろう。夫と年代間のギャップはなさそうな。「夜日古は生きて」

 完璧に立ち聞きをしていたらしかった。

 塑堂院長が半泣きの妻の代わりに眼で会釈する。

 二人とも、

 まだまだだいぶ若かった。訂正してお詫びをする。

「いるかどうかをこれから確かめます」胡子栗が頷く。「それと一つお伺いしたいのですが。ヨルヒコくんは」

 息子?

 娘?

「あの、どのような意味でしょう」妻が答える。「夜日古は」

「昨日ボクが会った塑堂夜日古と名乗る人物は」女。「人違いですかね?」

 塑堂夫妻は顔を見合わせて。

 大量の疑問符を散らばせる。頭上に。

「あの、夜日古は」妻が言い淀む。

「そうなってしまったエピソードみたいなものに心当たりは?ありますかね」

 そっくりそのまま我らが女装課長に打ち返したかった。そうなってしまったエピソードみたいなものに。本人によれば仕事着、だそうだが。いまは、

 仕事ではないのだろうか。対策課は、

 胡子栗茫にとって。

 塑堂家を訪ねるこれは、課長命令の出動のはずなのだが。

 女装をしていない胡子栗は、

 ひどく居心地が悪い。女装のほうが標準装備のような気がしていたから。

 なまじ、まともな格好をされると。

「五年前よりもっと以前にヨルヒコくんはおよそすべての男性が苦手になるような犯罪被害を受けています。心当たりはありませんかね?ご両親は」

 塑堂夫妻の眼線が逸れる。

 胡子栗は続ける。

「そのことと、五年前の謎の死と。関係なくなくないですかね」

「何が言いたい」塑堂院長はとどめを差してほしいみたいだった。

 わかっている。が、

 自分の口から言いたくない。

「はっきり言ってくれると」

 認めてしまうから。

「ずるいですね。ぜんぶわかってるくせに。ボクに言わせて責任逃れしようとしてる。だからヨルヒコくんは死んじゃったんですよ。あなた方、ご両親の元に戻ってこれずに」

 烈火のごとく激しく反論したいようにも見えたが。

 夫人が、それを望んでいなかった。ので、

 塑堂院長は黙った。

「誰に、とは聞きません。どうしてなんで、はボクが聞いたって意味がない。どうするつもりなのか。それだけ聞きましょう。もし」胡子栗が身を乗り出す。「塑堂夜日古くんが戻って来た暁には?あなた方ご両親は?どうするつもりですかね」

 しん、となった。時計の秒針が天井と壁と床に反響して。

 返ってくる。

 電話が鳴って。

 塑堂院長が出る。

「ああ、すまない。五分ほど待ってもらえると。頼む」相手は事務職員のようだ。

 8時28分。

 間もなく午前の診療が始まる。

「どうすればいいのだろう」受話器を置いてから塑堂院長が言う。

 塑堂夫人も頷く。

「教えてください。私たちは、夜日古に何をしたら」

「それを考えるのがあなた方、親の役割です。子育ての本を読むなり、子育ての先輩に尋ねるなり、ネットで調べるなり。いろんな方法があります。けど、安易に答えをもらおうだなんてそんな生ぬるいことだけは思わないでくれませんかね」胡子栗は、そこで床に足をつける。

 スーザちゃんと僕に退散の合図をして。

「わからないなら、本人に聞けばいいんですよ。何をしてほしいのか。何をすればよかったのか。いつだってやり直せます。だって」

 生きてるんでしょう?

 あなた方のだいじなお子さんは。胡子栗はわざと明言しなかった。

 塑堂夫妻に伝わったどうか定かではないが。

 8時37分。

 塑堂接骨院をあとにする。

 スーザちゃんが会計を済ませて。

「ほけんしょーというのはなんですの?」

「持ってないの?」言ってから気づいた。

 持っているはずがない。

 あの世界的指名手配・祝多いわたさんのお弟子さんだ。国籍もあるかどうか。

 国籍?そういえばそうだ。

 なんだかやっぱりとてつもなく犯罪の温床なんじゃないだろうか。

 祝多出張サービスというのは。

「全額払ったんだ?」払わざるを得ないだろう。

「ですから、ほけんしょーというのは」スーザちゃんがぷうとむくれる。

「俺もね、死んだときにどっかやっちゃったからさあ」胡子栗がこともなげに言う。

 なんだろうか。この二人は。

 僕がおかしいのか?

「塑堂夜日古は生きてますの?」スーザちゃんは助手席へ。

「女のほうならね」胡子栗が後部座席を広々と占領。「問題は、果たしてそれをあの一般常識と世間体でがちがちな両親に許容できるかどうかだね。れっつごーだ、ムダくん」

「畏まりましたお次はどちらに参りましょうか課長殿」

「いい感じの棒読みだ」胡子栗がふんぞり返って嗤う。「そだね。どこだと思ってる?たいがい合ってると思うよ」

「勿体つけないで命令してください」

 面倒くさい。

「フライングエイジヤは復活してなんかないよ。フライングエイジヤもどきがデカイ顔して居座ってるだけでね。あんなものはフライングエイジヤとは言えない」胡子栗はバックミラー越しにスーザちゃんに申し出る。「本当のフライングエイジヤを見せつけてやりたいと思うんですけども」

 急に謎の低姿勢。

「クッションの中ですわ」ノートパソコンのことだろうか。「わたくしもそちらに座ればよかったですわ」

 同じく僕も。とも言えない。

 運転席があな恐ろしや、無人になってしまう。

 いっそ車を駐めるか。

「本部長のとこは?」報告とか報告とか。

「てきとーにドライブしててよ。俺なんかいないと思ってさ。デートしちゃって?」

 胡子栗の狙いがわかった。僕らには、

 本当のフライングエイジヤとやらを見せつけない気だ。

 なるほど。

 その意味も込めてあの低姿勢。やられた。

 スーザちゃんも思い当たったようで。

「仕方ありませんわね」ふう、と溜息。「ボーくんがその手で来るというのならわたくしは」ケータイ。「よろしくて?おヘマしたら承知しませんわよ?」

「お任せあれ。創始者をナめんなよってね」

 ああ僕は、あれですかそうですか。

 沖縄あたりに多い毒蛇。

 もしくは、ターミナル。

「止めたら女装してたげないよん」

 それは若干困る。


      2


 このIDがまだ有効かわからないが。

 やってみるだけの価値はなくなくはない。と思い込んでいる。うちに、

 ケリがつけばいいと思っている。希望的観測。


 ID 00001 Oz


 ログイン承認。

 ウィンドウの外に、お迎え待ちのガキどもがずらりと。車道を見つめて一直線。

 一斉にケータイを開いた気がした。衆人環視か。

 お誂え向きじゃないか。

 大衆になぶり殺しに抹殺された久永幕透くえいまくトヲルにはもってこいの仮想舞台。

 Oz 〉久永幕透に話があるんだけど

 Stomachache 〉どうもす。朝方ぶりで

 Oz 〉その発言びみょーにヤバい路線だね

 Recorder 〉よ。立ちんぼマスタ

 Oz 〉褒められてんのか貶されてんのかわかりゃしないね

 Phobos 〉何か余計なことをしませんでしたか。朝方に

 Oz 〉さっすが勘がいいね。いまどこ?迎えに行ってくれるってよ?

 Phobos 〉行ったんですか

 Oz 〉言ったよ。生きてるって

 Stomachache 〉俺に話があるんじゃないすか

 Phobos 〉絶対帰らない

 Oz 〉それならそれでもいいけどね。帰りたいんなら帰ったほうがいんでない?

 Phobos 〉塑堂夜日古は死んだ

 Oz 〉でも砂宇土夜妃は生きてる。それでいんじゃない?

 Phobos 〉落ちます

 Oz 〉君は死にたくて死んだんだろうけどね。残された親はさ

 Phobos 〉あんなの親じゃない。落ちます

 Stomachache 〉俺の弔い合戦を主催してくれたのはうれしかった

 Phobos 〉トヲルまで。僕は別に

 Stomachache 〉意地張ってんなら悪いなあと

 Phobos 〉僕が一番つらいときに放ったらかしで。あんなのは

 Oz 〉親じゃない?決まり文句だね。親はなんにもしてくんないよ?知らなかった?

 Recorder 〉ひっでえの。これで説得してんだからよ

 Stomachache 〉茶化さない

 Recorder 〉へーい。すんませんね

 Oz 〉どう?帰る決心ついた?

 Phobos 〉いまさらどんな顔で

 Oz 〉たしかにね。生前とだいぶ変わっちゃってるもんね

 Phobos 〉僕は幽霊です

 Oz 〉だったら、俺も幽霊だ

 殉職しておいて。

 まんまと生き返った。

 Phobos 〉お父さんお母さんはなんて言ってましたか

 Oz 〉それは俺の口から言っていいの?

 Recorder 〉おいおいおいおい。帰っちまうのかよ

 Stomachache 〉自由参加だし自由解散だ。きみだって好きにしたらいい

 Recorder 〉俺は帰んねえから

 Oz 〉君は誰なの?リーダ

 ボスは、塑堂夜日古そどうヨルヒコ

 ストマクエイクは、久永幕透くえいまくトヲル

 リーダの正体に、

 心当たりがない。当時のメンバをすべて把握していたわけじゃないし。

 Recorder 〉誰だっていいだろうがよ。んなことよか、

 トヲルさんよお。

 Recorder 〉こいつを送っちまっていいかな

 第二段階

 Recorder 〉あんたはどーだ?

 オズさんよお。

 Stomachache 〉それはフライングエイジヤとして逸脱してる

 Oz 〉内容にもよるんだけどさ

 まずい。

 スーザちゃんに合図。ばっちりケータイでROMってくれてた。

「なんですの?」

 第二段階。

「現時点で迎えにきてもらってないガキはどんくらい?」ウィンドウの外を見る。

 ずらりと。

 いすぎて。眩暈がする。

「だいぶ歯抜けにはなりましたけれど」スーザちゃんがきょろきょろと。「どうされましたの?第二段階とは」

「なに?なんかヤバい?」事情のまったく呑み込めてないムダくんが言う。「止める?」車。

「いんや、そのまま」走らせて。「道的におーけい」

 この手は使いたくなかったんだけど。

 俺だけで何とかしたかったんだけど。どうにもこうにも、

 俺だけじゃどうにもできない。わかってる。わかってはいるが。

 あの人の力だけは借りたくなかった。

 他のどんな大人の力を借りようがどうってことはないが、あの人の。

 あの人の世話にだけは。

 なりたくなかったのだが。対策課をバックアップしてもらった段階でもうそれは、

 終了している。

 俺の完敗。ガキは大人に敵わない。

 さっさと思い知れ、

 ガキが。

「実家帰るよ」

 俺の予想が正しければ、

 久永幕透の復讐をその最たる目的とするのなら、

 第二段階は。

「迎えに来ないならこっちから出向くしかない」

 ウィンドウの外で虚空を見つめていたガキどもが一斉に、

 ケータイを仕舞い。ポケットにバッグに。

 歩き出す。

 銘々に。それぞれの目的地へ。

 ガキの大陸大移動。

「え?なに?どうしたの?」ムダくんがおたおたするが。

「轢かないようにね。シャレんなんないよ?」本当に洒落にならない。

 スーザちゃんが振り返る。

「第二段階がうまくいかないクソガキはどうしますの?」

 さすが。

 イイトコしか突かない。

「ごめん。たぶん、合ってる」

 迎えに来てくれない親は、

 親じゃない。

 僕の私の俺の優しい両親は、

 お前らじゃない。

「存在否定に着手するだろうね。しかもそこまでの想像力がないから、実際に」

 消してしまう。追い詰められ激昂して。

 刃物で鈍器で。

 認めがたいニセモノの親を抹殺にかかる。眼の前にいるそれこそが、

 本当の世界の正真正銘の親とも気づかずに。

 気づいているのかもしれない。

 全力で全身全霊でもって親を否定したいがために。

「どうしよ」あの数を。

 無理だ。

 いくらなんでも。手遅れ。

 五年前の不始末のツケが。

 最低最悪の形をもって俺に復讐している。

「どうしよう、スーザちゃん」

 顔を、

 上げるとそこには。

 俺を真っ直ぐに見据える瞳。

 真白き朱に咲き誇る。

「ムダさん。車をお止めになって?」

「え、でももう」

 着く。県警本部の建物がもう眼と鼻の。

「止めてくださいな?」

 スーザちゃんの笑顔の圧力で止めざるを得ない。

 路肩。

 さすがに県警付近にガキは並び立っていなかった。とっくに現地解散したあとか。

「どうぞ表に」

 出た瞬間に。

 意識が白塗りになった。スーザちゃんの本気の飛び蹴り。

 をまともに食らったことすら気づけない。気づいたときには、

 スーザちゃんの渾身の鼓舞というか激励は幕を下ろしていた。

「しっかりなさってくださいな?ボーくんは、クソガキを救う正義のヒーロとしてこの世に蘇ったのですわよ?わたくしが生き返らせて。死体置き場から拾って改造手術を施したのですわ。そんな正義のヒーロがそのような弱気でどうしますの?あなたがすべきは」

 胡子栗茫えびすりトールがすべきは、

 小頭梨英おずナシヒデが成し得なかった五年前のリベンジ。

 五年前、

 少年たちが作った理想郷・フライングエイジヤは解体された。

 虞犯少年の集団という根も葉もない不名誉なレッテルを貼られて。違う。

 真相は、

 俺だけが知ってる。知っていたからこそ。

 殉職という形で、

 存在を抹消されそうになった。個を消滅させられる渦の中に放り込まれて。

「お立ちくださいな」スーザちゃんが手を。

 あのときと同じだ。あのときも、

 こんなぐあいに強烈な光が差し込んで。

 灼けそうなくらいに眩しい。

 夏のような。

「死んでる場合ではございませんのよ?」

「そうでした」手を取る。

 こんなにも熱い。

 もう、

 秋なのにさ。

「えーと、とりあえずスポ根?」ムダくんが言う。「出してもいい?」車。

 こっちはこっちで冷めている。

 冬のようだ。

 一足早く。

「行きたいんなら止めないよ」

 行きたいんならね?

 単体で。

 県警本部の、しかもあの大王と名高い本部長率いる対策本部に。

「挑む勇気があるんならだけどさ」

「同行させてください」


      3


 少数精鋭の部署に長いこといたせいか。

 こうゆう無意味にどでかい会議は居づらい。

 一刻も早く帰りたい。莫迦馬鹿しくて。

 9時12分。

 さながらお客様サービスセンタ。

 厳つい男たちがクソ真面目な顔で電話を掛けまくっている。対応によっては我が子に殺害されてしまうかもしれない親たちに、注意勧告を促しているのだろう。ある意味人海戦術。

 階段状の会議室。コンサートホールのように高い天井。

 ステージ部分に本部長が殺人光線を発しながらふんぞり返っていた。が、僕ら(正しくは対策課課長様。特にすらりと伸びる右足の包帯)を視界に入れるや機敏に立ち上がって駆け寄ろうと。

 したのを、駆け寄られる当人が止めた。

 自分が行くから来るな、と。

「管理者の追跡は」胡子栗が課長モードで言う。

 本部長の脇でそれっぽい人たちがコンピュータと睨めっこしていた。フライングエイジヤの交流サイトを復活させた管理者もとい首謀者を吊るし上げる目的で。

「その足」本部長がこの世を終わりに導かんとする鬼の形相で凝視する。

「追跡は」

「大丈夫なのか。まさか折れてないだろうな」

「つ、い、せ、き、は」課長は譲らない。

 本部長が不満を体現するかのごとく充分に間を取って。

「五年前のは君だそうだが」

「できたんですか」

 本部長の命令で追跡班の一人が課長に印刷物を渡す。A4一枚。

「君じゃないんだな?」

「模倣犯です」課長から僕に横流し。「もしくは英雄になりたかった何者か」

 住所ほかプロバイダ等個人情報が印字されてあった。

 久永幕透

 割り出しはとっくに完了しているようだが。

「死んでるんですよね?」当時のリーダ。

「五年前にね」課長が言う。「仮想・久永幕透のほうだけど」

 仮想?

「本物は生きてるんですか?それなら」

 その本物が首謀者濃厚で。

 課長はテーブルにスーザちゃんから借りたノートパソコンを置き。

「見る?ログは残ってるはずだけど」

 新フライングエイジヤのサイト。

 課長のIDでログイン。

 チャットルームの過去ログをざっとスクロール。つい先刻、

 僕が無意味にガソリンを浪費しているときに行われていたやり取り。

 現時点で、第二段階。

 いつ第三段階とやらに移行するとも知れない。

「我らがご主人様からどんだけ聞いた?」課長は空いていたパイプ椅子を分捕る。立っているのがしんどくなったのだろう。「たぶん、俺に気を遣って伏せてくれてあったと思うから教えるけど」

 スーザちゃんはいまここにいない。

 県警本部の入り口で検問に遭った。昨日の深夜はここのラスボスともいえる本部長の連れという印籠があったから例外が認められたのだと思うが。

 どう見ても未成年。

 一般市民としての訪問ではない。対策本部に殴り込む。捜査員の補助的立場で。

 事情を話して潜り込んでもよかったのだが、というかスーザちゃんなら絶対にそのごり押し戦法を使ってくると思っていたのだが。

 結果は意外や意外、あっさり引き下がる。

 瀬勿関セナセキ先生から呼び出しが入ったらしい。タイミングよく、なのか悪く、なのかはわからない。

 先生は、僕か店主のどちらか一名をご所望だったが、課長が部下を連れていきたがったため、店主が譲ってくれた。その点も僕にしては意外中の意外だったのだが。

 時間の無駄ですわ、と背中を押され。

 いまここにいる。僕と課長。

 フライングエイジヤの復讐とやらも気にならなくないのだが、瀬勿関先生の呼び出しイコール、緊急事態ではなかろうか。おそらくは、

 収容した少年たちの意識が戻ったとか。

 あ、そうか。もう一度意識を失わせに行ったのか。さすがはスーザちゃん。

 その一瞬の決断力がなにものにも代えがたい。

 どちらにせよ、僕らにはあまり時間がない。僕にも課長にもスーザちゃんにも。

 略して対策課。

 総動員でことに当たらなければ。いけないのだが、

 どうにも僕には。

 ことの顛末が不明瞭で霞が晴れない。

「伏せてあった?んですか」何を。

「それをいまから教えたげよっての。まったくね、ムダくん案外短気でしょ?」課長が首謀者の個人情報を裏返して。

 本部長の手元から安っぽいボールペンをひったくる。

「俺の名前知ってる?」

「偽名なんですよね?」

 胡子栗茫

 課長がすらすらと記す。

「飼い主からもらっただーいじな名前ね。殉職した少年課の当時担当者の名前は聞いてる?」

 僕が答えるより前に本人が書いた。

 小頭梨英

「それがなんですか?」

「俺がフライングエイジヤを創ったってのは?」

「創っといて壊したと聞きましたが」

「お脳の解剖が専門なせーしん科医が言いそうな分析だね」課長はからからと笑う。「まーいーや。やっぱ誰にも言ってくれてないんだ」

 主語はスーザちゃんだろうか。

「オズ君」本部長が心配そうな眼でこちらをガン見。

「ヒマなら電話掛けてください。塑堂そどう接骨院の番号教えますから」と言うと、課長はデスクに直接数字を書いた。水性インクだからこすれば消えるだろうが。

 なんか、

 態度が冷やかかだ。

 食い下がるのかと思いきや、本部長は怒号ともつかない声で電話機を持ってこさせ。本当にかけてしまった。

 いいのか、それで。

 あんた、この空間で一番偉いだろうに。捜査員の士気とかに悪影響が。

 いや、皆さん完璧にコールセンタの職員と化していてそれどころではなかった。むしろ本部長自らダイヤルを回した姿が励みになったようで。

 自然発生的に気合を入れ直す呼びかけが響き渡る。

 どうにもこうにもスポ根だなあ。

「そんで、五年前に死んだフライングエイジヤのリーダだけど」課長が言う。

 久永幕透

 二つの名前の間に書いた。

「これ、俺」

「はい?」

「だからね、これは俺のフライングエイジヤ・リーダとしての偽名。まだわかんない?さては完徹してアタマもーろーだね」

 胡子栗茫が課長としての名前で。蘇生。

 小頭梨英が少年課警察官としての名前で。殉職。

 久永幕透が、

「死んだんじゃないんですか?」

「死んだよ。仮想現実でね。衆人環視のなか存在を抹消されたんだ。フライングエイジヤはネット上の活動しかしてない。どうして消されたと思う?」

「それは、解散を提案したからじゃないんですか」

「そこを話すとややっこしくなるからあとでね」課長は意気揚々とボールペンを分解する。バネがどこぞへ吹っ飛んだがお構いなしに。「当時のリーダ久永幕透を模してフライングエイジヤを騙ってるニセ・久永幕透がデカイ顔して居座ってるんだ。そいつが」

 首謀者。

 落書きの紙の表。

「でも、偽名なんですよね?架空の名前で」

「架空の名前だったんだけど、たまたまさあ、おんなじ名前の人間が存在してたみたいで。ちなみにこれ、なんて読むと思う?」

 久永幕透

「ひさなが、まくとお?まくと?かな」

「そっちが実際に存在しちゃったほう。俺の偽名はね、そうは読まない。わかる?」

 他の読み方。

 久永幕透

「ヒント。反対から読んでみよっか」課長が新たに記す。

 透幕永久

「とおるまくえいきゅう」

「もっとヒネってよ。腹痛を英語で?はい、そこのぼんやりなムダくん」

「あ」わかった。

 ストマクエイク

 サイト管理者だ。スーザちゃんが直接対決を申し込んだ相手。

 Stomachache

 さっき見たログにもいた。文面だけなら落ち着いた物腰の。

「で?答えは」

「くいえくまとす」

「ちがーう。漢字ごと読んでって」

「くえいまくすと?」

「もーいーよ。くえいまくとをる」

 創始者の偽名は、

 久永幕 透(クエイマク トヲル)

 サイト管理者は、

 久永 幕透(ひさなが まくと)

「切るところが違うんだ。別人になっちゃうでしょ?びっくりどっきりだ」

「そのヒサナガくんとやらが裏で少年たちを扇動してるわけですか」

「あったり」課長がボールペンの芯を人差し指代わりに立てる。「彼はね、久永幕透に自分を重ねてるんだろうね。自分の知らないところで自分の知らない久永幕透が死んでて不快な気分になったかなにかで」

「そこまでやりますか?」

「やっちゃったんだろうね。現にやっちゃってるしさ」

「彼の居場所は」住所は判明しているようだが。「彼もあのスト?に参加してたら」

 いままさに、

 親を殺しに。

「電話は」

「かーむだーうん」課長が両手を上から下にゆっくりと。「彼ね、とっくに親なんか殺しちゃってるから。危機にさらされてる親なんかいないよ」

「小頭梨英さんの担当だったんですね?」少年課の。「たまたま、ではないのでは?」

 偽名・久永幕透の由来。

「切れすぎてやんなっちゃうね」課長がお手上げのポーズ。いまに始まったことではないがリアクションが大袈裟だ。「でも残念ハズレ。俺のほうが先。フライングエイジヤは確かに五年前に解体された。けど、結成はもっと前だよ。もっとずっと前。俺が十代のときにね、なんもかんもつまんなくなってた時期があってさ、そんときに創った。ガキの遊びだよ」

 電話を終えた本部長が何か言いたそうな視線でずっとこちらを伺っていた。

 のをあえて無視して喋っている。課長は、

 本部長と一対一で喋らないそれだけのために、僕に、掘り起こしたくもない昔話をしてくれてるみたいだった。

 別に今更伏せるような関係でもないだろうに。ここにいる本部の方々は、いや本部長周りのごく一部なのか、熟知してくれているものと。

「ヒサナガくんは保護観察中だったんですか?」

「よーかい露出狂のとこにいた」

 国立更生研究所。

 ということはすなわち、

 本名・久永幕透の犯した罪は。

「そ。ごめーさつ」

 強姦殺人。

「両親を?ですか」父も母も。

「どーだったかなあ。俺の担当じゃないしね」

 ますます瀬勿関先生に対策本部に加わってもらったほうがよさそうだが。

「でもさ、こっちに舞い戻ってるってことはこーせいしたってことだから。誰よりも性犯罪を憎むセンセの判断に間違いはないだろーしね」

「じゃあ、ヒサナガくんは」黒幕というよりは。

「ヒサナガくんより、過激なのがいちゃってね。俺はそっちをどーにかすべきだと思うんだけど、うーん。誰なんだろう」

「誰なんですか」

「リーダだよ」課長が哀れにも芯だけになったボールペンで書く。

 Recorder

 さっきのログにいた。いかにもガキっぽい口調の。

 第二段階を発動する権限があった。

「元メンバとかでは」

 リコーダ?縦笛か。

 もしくは、記録するもの。

「何千人がいてたと思ってんのさ。やーだよ。一人ひとり確認すんの」

「実際に会ったことは」

「そこの最高責任者が睨んでて言えなーい」

「まだやっていたのか」その最高責任者が言う。「オズ君」

「オズ君オズ君て。俺はオズ君じゃないんですけど」

「オズ君じゃないか」

「違いますー。オズ君は殉職しましたー」

 なんだこの、

 ガキのケンカみたいな。

「立ちんぼのことですか」

「あ、ちょ」課長が言うな、とばかりに僕の口を塞ぐ。両手で。

 顔ごと。

「まだ、やっていたんだね」

 課長が僕の顔を塞ぐのをやめて。

 自分の顔を塞ぐ。

「ノーコメントで」

「ちっとも死んでいないね、オズ君は」本部長が溜息。

「全然ノーコメントで」

 コンピュータと睨めっこしてた人たちが本部長を呼ぶ。呼ばれてもない課長が真っ先にのぞき込んだ。僕は落ち着いてスーザちゃんのパソコンで確認。

 サイトのトップページが物々しい色合いに。

 黒地に赤抜きの文字。

 そこに、

 第三段階達成者4名

 その文字の下に、

 達成者と思われるIDとHNが。

「早くしろ。誰だ」本部長が担当者を急がせる。

 モニタを凝視して動けなくなっている課長は。

 いつにもなく、蒼白い顔をしていた。

 そして数字の4が、

 5に変わる。


     4


 Recorder 〉さいっこーじゃねえのよ

 リーダが高らかに嗤う。

 俺は、また見てるしかできないのか。

 オズさん。

 オズさんならどうするだろう。

 Recorder 〉そーだった。トヲルさんのも付け足さねーとな

 数字を増やす。

 5から、

 7へ。

 Stomachache 〉あの人の分?

 あの人も死んでる。

 殉職。

 俺も死んでる。

 私刑。

 Recorder 〉それでもまだ俺んとこのカスは気づきもしねえんだぜ?傑作だろ

 Stomachache 〉行ったの?

 Recorder 〉どこにいるかもわかんねえのにか?

 Stomachache 〉海外出張ばっかなんだっけ?

 Recorder 〉あーあ。一番殺してえあいつらはどこにいるかもわかんねえしよお

 Stomachache 〉方法が間違ってるよ

 Recorder 〉は?なにいまさらいい子ちゃんぶってんだ?あ?

 Stomachache 〉いい子じゃないよ

 Recorder 〉だったな。いい子に生まれ変わっちまったトヲルさんよお

 俺は別に、

 望んで悪くなったわけじゃないのに。

 でも、悪いのは俺だ。

 父さんを■したのも俺だし、

 母さんを■したのも俺だから。

 わかってる。わかってるからこそ。

 Stomachache 〉まだやり直せるよ

 Recorder 〉は?なにゆってくれてんのかと思ったらよお。やり直すだ?

 Stomachache 〉リーダはまだ

 最後の一線を越えてない。

 俺とは違う。俺は、

 二度とやらない。やってはいけない。

 それを、

 先生から教わった。だから、今度はそれを。

 Stomachache 〉まだ大丈夫。話が通じるから

 Recorder 〉トヲルさんも俺らを見捨てんのか?あ、とっくに捨てられてたんだったな

 Stomachache 〉見捨てないよ。一緒に行こう

 オズさんのところへ。

 Stomachache 〉自首しよう

 Recorder 〉は?俺がなにしたって?トヲルさんとおんなじことしたのかよ

 Stomachache 〉リーダは

 これは、

 言いたくなかったんだけど。

 言ったらきっと、

 Stomachache 〉オズさんに叱ってもらいたいだけだよ

 実行ボタンを押してしまう。それでも、

 やめてもらいたい。だって、

 俺の、

 Stomachache 〉オズさんに両親を見てるだけだよ

 Recorder 〉第五段階だ

 友だちだから。

 初めての。現実世界の。


      4軽


 あたしは男がだああああああああああああああっい嫌い。

 なんでって?

 軽いから。ヘリウムより水素よりずっとずっと。

 脳はすっかすかで。

 玉はたっぷたぷの。

 あたしが滅ぼしてやるの。女のふりして。

 ちょっとちゅーいしてやっただけなのにね。トヲルくんのゆーこと聞こうねって。

 いきなり逆ギレるとかって。

 単なるぼーりょくじゃ飽き足らず。

 あたしの思うとおりにしか行動できてない。

 傷ついたふり。

 気を失ったふり。大得意。

 そーゆーとこがあるのはトヲルくんから聞いてた。

 トヲルくんは長いことそこに入ってたから。

 そこでは、

 美人なお医者さんが手取り足取りイイコトを教えてくれるってゆう。

 もしかしてここが、

 そこなんじゃない?

 誰もいなくなったのを気配で察知して。

 ベッドを這い出て。しーっだよ。ゆっちゃダメダメだよ。

 ドアにカギは掛かってない。

 まさかあたしが病室を抜け出すだなんて思ってもみてない。

 そろそろと廊下を。

 ぺたぺたと歩く。なんだか裸足。

 さーて、

 あのガキんちょはどこでお寝んねしちゃってるかな?

 くんくん。

 くさいぞ。この下から、

 だああああああああああああああいっ嫌いな男のにおいがぷんぷん。

 階段を下りる。

 手すりで加速。

 分かれ道。どっちかなあ。

 右?

 くんくん。

 左?

 くんくん。

 もっと下だ。

 下りて下りて下りる。飛び降りちゃえば早いんだけど。

 当たりどころが悪いと死んじゃうからね。

 命は一個しかないからね。

 ふこーへーだ。

 トヲルくんは二つも三つもあるのに。

 どーして、

 あたしには心臓も脳も一個しかないのか。それは単純。

 いくつもあったら、

 たった一日で男が絶滅しちゃうから。

 時間をかけてね。じーっくりとね。

 滅ぼしてくのが愉しいから。

 ここだ。

 ここに、

 あのガキんちょがお寝んねしてる。くさいにおい。

 丁寧に一人ずつ個室。

 手前から?

 奥から?逃げられちゃうと困るから、

 近いとこから。

 カギはやっぱかかってない。

 お邪魔しまーす。失礼しまーす。

 聞こえない声でゆう。

 どうせすぐ聞こえなくなるんだし。

 お、ツいてる。

 いきなり大当たり。こいつが一番最初に、

 あたしのナカにハイった。

 ナカでダしてった。汚なーいせーえきを。

 妊娠とかニシンとか二進法とかうるさかったけど、

 ばっかじゃないの?あたしに、

 しきゅーなんてあると思う?

 ベッドに上向き。

 寝てるのかな?口に手をかざす。

 あったかい。

 生きてる。殺せる。

 動いたり暴れられると困っちゃうからね。

 両手を柵に。

 布団めくりあげて。両脚をこれで。

 両手に、

 持ってたのを振り下ろす。

 なんか聞こえたけど無視ムシ。ヤだよ。いちいち取りあってらんない。

 あたしのときもそんな感じだったでしょ?

 眼が合う。

 笑ってあげた。にっこり。

 でかい声が出ると他のガキんちょに伝わっちゃうかもだし。

 口を塞ぐ。脱ぎたてのこれで。

 涎べたべた。

 どーもーな歯で噛もうとするし。

 よし、ベッドに固定。シーツが黒くなってくる。

 さっさとヤっちゃおうっと。

 まだまだ先は長い。

 きちょーな血をろーひするんじゃなかったなあ。あとで気づく。

 全然ダメ。使いもんにならない。ふにゃふにゃ。

 んじゃあ、

 逆だ。あたしが棒で、

 おまえが穴ね。

 小っさすぎる。狭いだとか締まるだとか。

 下らなくて吐き気がする。

 げえ。

 吐いてやろうっと。受け止めて?

 鼻の穴で。

 脚がけーれんしてきちゃったから。

 もーだいじょーぶ。

 釘を引っこ抜いて。

 うるさいなあ。静かにしてよ。

 一本。

 二本。

 さーて。お待ちかねのこれ。

 ダメだよ?

 身体検査はきちんとしなきゃあ。

 引き抜く。

 血まみれ。あーやばーい。

 せーり?

 きちゃった?だいぶ早いじゃん。

 ガキんちょが怯えてる。

 あたしは笑う。にっこり。

 つながったまま、

 中身を見てやろっと。

 アタマのナカはそーぞーが付くから。

 空っぽだしね。どーせ。

 どーせなら、

 満タンのぎゅうぎゅうに詰まった。

 タマのほうをね。

 見てあげよっと。

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