#1-3 今日は休みのはずだった

 王都テラは賑わっていた。

 なんせ数百年ぶりに『救世主』を呼んだからだ。


 この世界スローンには多くの英雄が存在した。

 

 剣神、賢者、晩鐘、鷹、聖者、軍神……その二つ名は今も継承され、その名に相応しい者がいる。

 

 しかし救世主はそれとは格が違う。

                

 スローンの覇権争いが始まる時、側は必ず何人かどこからか呼ぶのだ。


 呼ばれた者は決まって言う。地球という場所から来たと。


 そして呼ばれた瞬間から自らに強力な力を得ている。言うならば何十年も努力をし、欠かさず鍛錬をし、ある境地まで辿り着いた者のみが習得できる技をいとも簡単にやってしまう。さらにはそれを上回るものを使う。


 あらゆる不可能を可能にする存在……それが『救世主』。

 

 だからだろう、多くの民が城の前に集まるのも無理はない。


 外から響く歓声が王の間まで届いていることにライオは嬉しく思った。民が伝説を忘れずにいてくれたことを。


 そして目の前にいる救世主に微笑みながら言葉を掛ける。


 「どうだろうか。これが君の、いや君たちを待っていた声だ」 


 「ああ、なんだか力が湧いてくる」


 拳を握りしめ何かを確かめる青年。その名はカール。王都テラに呼び出され、今後この王都を守護し、そしてスローンを平和へと導く者の一人。


 「任せてくれ」


 その言葉に王の間にいた者たちも歓声を上げた。


 そしてこの日、テラを含めた4つの国は同じように賑わった。

 

 これで世界は救われる。これでこの国は安泰。


 もう、他国との戦争が起きても負ける訳がないと。

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