第6話 宝石が導く繋がり
辿り着いたミサ=ラミアは、仄かな灯りが温かい素朴な雰囲気の建物が建ち並んだ街並みだった。時間も時間だったために、外に出ている人は少なかったが、街の様子から人の温かみが感じられる。三人は宿を確保し、姉妹とフィーズの二部屋で宿泊した。ようやく腰を落ち着かせることができ、ラテュルもフィーズもホッとした表情だった。
「…あら? リディル、どこ行くの?」
「少し鍛錬してくるわ。どうにも落ち着かなくて眠れないから」
「そ、そうなの…? まだ道のりも長いのだから、少しは体を休めたらいいのに…」
「大丈夫よ。そこまで激しい運動をするわけじゃないから」
「そう…あまり無理はしないでね」
「じゃあ、外に出てるから。"あいつ"に何かされそうになったら、すぐに言って」
("あいつ"…って、フィーズさんのことね…)
「ふふ…わかったわ」
リディルが部屋を出てから数分後に、入れ替わりでフィーズがラテュルを訪ねて来た。彼が部屋へ入ると、ラテュルは椅子を差し出す。
「どうぞ」
「あぁ、ありがとう…さっきリディルが出て行く前に聞いちゃったんだけど…やっぱり、あまり快く思われてないみたいだねぇ…俺…」
「白黒はっきりさせたいタイプですから…」
「あ~…うん、なんかわかる…」
フィーズは軽く肩を落としながら、差し出された椅子に座る。しかしラテュルは、間髪入れずに話を切り出した。
「それでフィーズさん、本題なのですが…」
「あぁ…これのことだろ?」
おもむろに、フィーズは先ほど二人に見せた石を再び取り出す。石は彼の手の中で、相変わらず不思議な輝きを放っている。
「…実は、私も"持っている"んです」
「え…?」
「同じ石を、です」
「なん…」
フィーズが言い終える前に、ラテュルは首元の釦を外し、服の中からペンダントを取り出した。現れたのは、フィーズの手の中にあるものと全く同じデザイン、同じ石…瓜二つのものがラテュルの首元で輝いていた。それを見たフィーズは、思わず椅子から立ち上がる。
「なっ…! 二つも存在して…!? いやそれよりも…何故、君が…?」
「私も、これは幼い頃に、母から受け取った物です。でも母は、必ず全く同じ物を私とリディルに一つずつくださる人なんです。だから、私だけがこれを持っているなんてことは無いのですが…」
「…いつの間にか、リディルは持っていなかった、と…」
「はい…このデザインも、母がオーダーメイドで作ってもらったそうなので、他にはどこにも売ってないんです」
「…ラテュルは、何も聞かされていないのか…」
「え?」
「君には、全て話すよ。でもこのことは、まだリディルには言わないで欲しい…」
「…っ」
そう言ってフィーズは、ラテュルに自分の正体や事の経緯を全て話した。その間、ラテュルは終始「信じられない」といった表情で話を聞いていた。
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