植物考察・ワインで見る気候など
今作『see you again in this life』の時代考証など
参考文献
・監修:井手勝茂 2012年 最新版ワイン完全バイブル 製作:ナツメ出版企画株式会社
・Wikipedia
・環境省 日本の外来種対策 要注意外来生物リスト
◆《雑草編》◆
●雑草は少ない
雑草等を調べて風景を感じようと思い、ネットで簡単に調べて初めて知ったのですが、地球のヨーロッパには雑草が少ないそうですね。もちろん地域差はあるでしょうが。
日本は雨が多いですし、夏は日照時間と梅雨を含め降水量などの関係で、雑草がぐんぐん成長していきます。ですが、『ヨーロッパの夏はカラッとしていて気持ちが良い』といわれるように、日本と比べ乾燥しているので、雑草が少ないようです。
このことから、今作の舞台は地球で言うヨーロッパと似ている設定ですので、『雑草が少ない』世界になると思います。
●緑がないとヨーロッパのイメージと違う
ですが私を含め、皆さんが想像するヨーロッパというと、広大な土地に広がる一面の芝生だったり、小麦畑だったり、ワイン用のブドウ畑だったりだと思います。
年間降水量ですが、日本は鹿児島県で4400mm、北海道は大きすぎて地域差が大きいですが少ないところは700~900mm程度です。都道府県の平均だと1600~1800mm程度のようです。
ヨーロッパの国々の年間降水量や、さらに各国の地域ごとの降水量などを書き出すとそれだけで膨大な量になってしまうので、やめておきます。
後述のワインに適した降水量と比べると、都道府県の年間降水量でも、適した雨量の二倍も雨が降ります。これを考えるとやはり日本は水が豊富といえますし、そのことから雑草が多いとも言えるかもしれません。
●生えていそうな植物
降水量が少なくても、それに適応した植物なんていくらでもあるじゃろということで、気温や日本に帰化したとされるものを挙げてみます。
・シャジクソウ属(シロツメクサ/クローバー等)
ヨーロッパ原産。一年草、二年草、多年草のものがある。牧草にもなる。蜜源植物。葉は茹でて食用にすることもできる。花穂は強壮剤、痛風の体質改善薬などとして用いられていた。解熱・鎮痛効果もあると言われている。
・シダ植物
日本だとワラビやコゴミなどで知られ、食されています。世界的に見ると薬とされた方が多いと聞いたことがありますが、良くはわかりませんでした。
・キショウブ
ヨーロッパ、西アジアからの帰化植物。水辺や沼地、水田等で見かけることができる。綺麗な花が咲く。要注意外来生物。
・オオカナダモ(アナカリス)
日本で要注意外来生物になるくらいやべーやつ。冬でも枯れずに越冬できる。金魚草として売られている。日本のクロモに似ている。低温、アルカリ性に耐え、無機養分の吸収力が強い。
食用で持ち込まれたウチダザリガニとかの件でも思いますが、なんでも食べる日本人が現代になっても食べていないという事はきっとおいしくないです。あっ、ザリガニはうまいです。
・ホテイアオイ
明治時代に観賞用・家畜飼料として持ち込まれた。全国に分布し、特に九州に多い。『浮遊性の水草で、水面を覆い尽くし光を遮ることで在来の水生植物の生存を脅かすとともに、 アレロパシー作用等を通じて水生生物全体へ影響するおそれがある』として、日本では要注意外来生物に評価されている。また、オーストラリアでは持ち込み禁止植物になっている。簡単に言えばすげー増えるやべー奴。
中国・台湾では食べられていて、キャベツのような味がするらしいのですが、日本人が食べないならきっとおいしくないか処理が面倒です。
・オオブタクサ
北アメリカ原産、ヨーロッパ、アジアに分布する。スギ、ヒノキに次ぐ花粉症の原因。つまり作者含め花粉症患者の敵。燃やせ。
韓国では、輸入禁止植物に指定されている。アメリカ合衆国やカナダでは、花粉症対策の研究や防除のために、国家的な規模で多額の研究資金が使われている。原産地では野生の七面鳥の食餌にされる。つまり各国でやべー奴扱いされている。きっと異世界でもやべー奴。
アメリカやカナダで研究されているのに、薬用にも食用にもなっていないという事はきっとそういうこと。
・ムラサキカタバミ
その名の通り紫の綺麗な花を咲かせる。文久年間(1861~1863 年)に観賞用として導入された。本州以南でみられる。
温帯~熱帯に分布する。畑地、空地、樹園地、路傍、荒地、芝地、庭などに生育する。日当たりの良い肥沃地を好む。
きれいだけど要注意外来生物です。
◆《気候や土地》◆
●ワイン栽培で見る気候・土地
ワイン作りに必要なものは知っての通り、『ブドウ』です。ヨーロッパといえばワインというイメージがありますので、ブドウに適した土地を調べてみましょう。
<ブドウ栽培に適した土地>
気温:年間平均温度10~20℃(ワイン用ブドウ栽培では10~16℃)
日照量:ブドウ生育期間中、最低1300~1500時間
雨量:年間降水量500~900mm
地球の地図上でこれらの条件を満たす地域を観ますと、おおよそ北緯30~50度、南緯20~40度のエリアです。これにはイタリア・スペイン・フランスなどの、我々のイメージで真っ先に出てくる『ヨーロッパ』と、『アメリカ』『日本』『南アフリカ』『オーストラリア』『ニュージーランド』『チリ』『アルゼンチン』などの国が挙げられます。
日本でワイン作りがとくに盛んな地域は『山梨・長野・山形・北海道』なので、その地域に住む方の感じている『気温・降水量』等はヨーロッパに近いものと考えて大丈夫だと思います。
この基本の生育条件に『日照』『気温』『水分』『土壌』が関わってきます。日照は『色素・糖分・酸・タンニン』の生成に影響しますし、気温は『酸味・果実味』に影響します。土壌は水はけがよく、やせた土地の方が果実に複雑味が増すと言われます。また水分は、多すぎると樹の成長が過剰になり、果実に栄養が行き渡りません。
さらに『標高・傾斜・河川』等も関係し、気温が高い地域でも標高で調整したり、傾斜で水はけを良くしたり、河川での照り返しによる日照量の増加が見込めます。
こららのことから、異世界であってもワインが作られるのならば、『10~20℃』『年間降水量500~900mm』という事が分かります。気温が高い地域、降水量の多い地域があったとしても、『標高』『傾斜』で調節しているでしょうし、物語や時代考証には影響はありません。
ですがこれさえも基準にすぎません。ドイツは北緯50度と生育地域としては北限ですが冷涼な気候のため、より熟したブドウを使うため甘味があります。もっともそのイメージが強いだけで、甘口から辛口までバラエティに富んでいるようですが。
何が言いたいかというと、冷涼な地域でもワインは工夫され作られます。ワインやブドウが作られているかで、ある程度の推測はできますが、その必ず土地はこうだと断言はできません。
今回はヨーロッパに似た地域が舞台というだけで、石灰岩が地中に埋まっていなければ、水も軟水で長期保存の利くワインも作らずに済んだでしょう。
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