第6話 不気味の谷

 助けるはずだった子供――ブラウから何かを感じ少し固まってしまったが、よく見ても違和感の正体がわからない。


「僕を助けに来たの」

「えっ、あ……ああそうだ。今日はもう遅いからここに一泊してからになるが、数日もすれば町に戻れるよ。怪我はない?」

「ん、ない」


 子供に声をかけられ我に返る。ざっと怪我の確認もしたが何の傷もなく健康だった。確認した後はここに来るまでに狩った魔物や、持ってきていたもので適当に飯をつくる。料理中はずっと小屋の隅で火や俺を見ていたが、料理ができると近くまで来てもそもそ食べていた。

 何度か救助の依頼をやってきたから会話がないことは辛くない。おしゃべりな奴もいれば無口な奴もいるし、魔物や戦争によるショックでしゃべりたくない奴もいるしな。


 しばらく観察していたが至って普通の人間だ。俺は何に違和感を感じていたんだろう。もう今日は寝てしまう。そう思い、小屋の周りにこのあたりに住む魔物が嫌う粉を撒く。複数人いるなら見張りを立てたほうが安全だが一人でやる奴はこういう魔物避けの道具を持っていることが多い。俺を含めクレール王国の人間は服に組み込んだ魔術のおかげで不意の危険にもある程度対応できるしな。

 粉も撒き終わり軽く見回りも終わり、異常がないことを確認しその日は床に入った。

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