第5話 小屋
森に入ると少しひんやりとした空気になった。涼しくてよろしい。ざっと森を見たがそれらしいものはまだ見つかっていない。この森は何度か来たことがあるがあまり奥には行かないため地理を完全に把握しているわけではない。森を越えると国境だが、わざわざ森の中を通る訳がないから、この森を狩場にしている冒険者か狩人じゃないと奥の事まではわからないんじゃないかと思う。小屋は森の奥にあると聞いたが日が暮れるまでには見つけたいな。
しばらく森を進み出会った魔物を殺していく。小型の個体や弱い魔物は逃げていくので、出会うのは知能が低いか好戦的な魔物だ。
基本装備は刀とメイス。防具はスクロール技術が組み込まれた着物。刀を使っても良いが血が付いた後の処理が面倒くさいのであまり使わない。一応魔術加工された鞘があれば血を拭わなくても錆びないものもあるが高価なのでまだ持っていない。なのでメイスで済む相手はメイスで殴っている。
何度か魔物を撃退したところで小屋を見つけた。だいぶ痛んだ小屋だ。もう使われていないことが一目でわかる。中に入って子供がいるか確認するか。いなかったらこの小屋で一泊してまた森を歩き回ることになる。
小屋の扉を開け中を覗くと、薄暗い小屋の奥に子供が一人顔を伏して座っていた。子供の名前なんて言ったかな。
「えーっと、君がブラウくん?
俺は君の母親に依頼されて助けに来た冒険者……うおっ!」
話しながら近づくと床が腐っていたのか足元が盛大に抜けた。痛ってえ……少し擦りむいたかな。抜けた床の先にナメクジが数匹いた。普通のナメクジか魔物の方かよくわからんが、魔術で燃やしておく。
とりあえず子供の無事を確認して大丈夫なら一泊して帰ろう。そう思い顔を上げ子供の方を見ると、子供は俺の事をじっと見ていた。普段ならアホやって恥ずかしくなるところだがなぜかぞっとしてしまった。なにもおかしいところなんてなく、しばらく森にいたというのに汚れている程度で一見健康的に見える。しかしそれは俺とは決定的に何かが違うと思わせるような雰囲気を感じさせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます