第2話 傭兵的日常

「ガハハ、ダグの国も大変だよな」

「そうだなあ、帝国も飽きないもんだ。まあ友人の国だから助けるし、稼がせてもらっているけどな」


 ガハハと熊のような大男が笑う。

 ダグというのは俺たちの友人でシベリアンハスキーのような獣人の男だ。何度も世話になった。


「噂をすればだ」

「アイロ、ディラン無事か」

「なんとか」


 アイロというのは俺、ディランは隣の大男のことだ。

 この世界の戦争はまだ銃のようなものが未発達なこともあり、一人で何人も屠るようなことはあまりない。だが魔術があるせいで長距離攻撃等ができてしまう。今回は防御重視の陣形であらかじめ塹壕を築いていたから俺たちはそこにいるんだが、魔術兵の弾幕が厚くて顔を出せばハチの巣にされるような状況だ。


「今回は帝国軍1万9000に対して俺たちは1万6000だったか?」

「まあまだ始まったばかりだ。互いの魔術兵の魔力が少なくなってきたら歩兵の殴り合いになるだろうな」

「魔術が撃ち始まって二時間。そろそろ魔力が切れてもいいころ合いなんだが……おっ、動くか」

「じゃ、今世でまた会おうぜ」

「当たり前だ、死にゃしねえよ」


 魔術戦が終わり、こちらの右翼騎兵が敵左翼に向かっていく。俺達も歩兵として敵正面に突撃していく。


 今世ではそんな生活を続けている。まあ、前世でどんな生活していたかも朧気だがな。傭兵や冒険者は死と隣り合わせだが金になる。つり合いが取れているかと言われると微妙だが。



 そんな傭兵生活も秋が近づき、戦闘が終わる。帝国側は徴兵制で兵を集めているから、収穫の時期になると撤退することがある。


 ひとまず戦争は終わった。国の依頼がギルドに来てそれを受けるか、戦争起業家が平民や冒険者などを雇って俺たちは戦争に参加している。今回は後者だったが契約料や戦利品で想定していたよりも多い金額を得ることができた。これでしばらくは弟が薬に困らないだろう。

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