影に呑まれて血を散らす夜影に叫んだ。

 それでも、もう、止まりもせず。

 手を伸ばそうとした。

 その腕を掴まれる。

「今度こそ貴方まで無事じゃ済まない!」

「黙れ!!!己の死が怖くて愛しきを殺せるか!!」

 振りほどいてこの両手でその顔を包む。

 激痛と、影の刃が腕に突き刺さるのも、どうでも良かった

 失いたくない。

 幸せに笑ったまま、目を閉じる夜影の息が、止まりかける。

 死ぬな。

 自分へ引き寄せて抱き締めても、鼓動は、感じられない。

「嘘だろ。死ぬな」

 頭を撫でても、何の返答もない。

 ピクリとも、動かない。

 嘘だろ?

 死ぬな。

 死ぬな!

 また、死ぬのか。

 何処かで、また、会えるか?

 今度こそ、それはないことを、察してしまう。

 それでも、それでも。

「夜影。待ってろ、ワシも逝こう。」

 呪いがなんだ。

 何がなんでも。

「おやめなさい。貴方が死ぬ必要は、」

「黙れ。ワシの生きる意味はもうない。邪魔をしてくれるな。夜影が逝ったなら、ワシも逝く。共に逝くと、約束を交わした」

「だからなんだというの?約束?そんなもので、命を捨てるっていうの?」

「お前にとっては、そんなものだ。元々、この命なんざ、使って捨てられるものだ。」

 涙が止まらないのも、代わりに泣く夜影が居ないからだ。

「影猫に依存してるということね。なら、その記憶すら消せばどうなるか」

「なんだと?」

「依存するように術をかけられているのなら、それを解けばいい。そうじゃないのなら、記憶を消せばいい。」

「ふざけるな。外野のお前が余計な手を出すな。邪魔だ。」

 フッ、と気配がした。

 夜影を抱いたまま、飛び退く。

 睨めば、さっきの男が現れた。

「なんだと?影猫が死んだ、のか?」

「自害した」

「自害?どういうことだ、、、聞いてないぞ?」

「どうもこうもない。昔と違った。死なないはずが、死んだ。」

「蘇生は!?」

「影で死なれたら、もう、不可能。それも、影猫自身の影。」

 察するに、死なせるつもりはなかった、と?

 そんな演技で死なせた、だと?

 ふさけるな。

「どうするつもりだ?このままだと、」

 一か八かだ。

 夜影が気付くかどうかも、また死ぬかもわからん。

 試してもいい。

 どうせだ。

 逝くなら、共に。

「禁術、命入命呼、影・代・双・換」

 これで、、、いい、、、はず、だ。

 意識が落ちていく。

 頼む。

 生きろ

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