「さて、身体に慣れたしこんなもんかね」

「なるほど。人型にもなれるか」

「いや、何処ぞの人間ひとの身体を貰ったよ。死にかけだったしね」

「猫は!?」

「安心しなさいな。取り憑いただけみたいなもん、だし、、、?」

 取り憑いた、、、?

 頭の中にぎったのは、ぼんやりとした風景。

「どうした?」

 記憶を封じたのであれば、それは過ぎらないのでないか。

 じゃぁ、忘れている?

 思い出しそうだということ?

「おい、何処ぞの人間の身体と言ったな?じゃぁ、それはお前の持ち物じゃないってことか?」

 指さされるそれに目をやると、なんとも懐かしい短刀があった。

 何故、気付かなかったのか。

「あぁ、これこれ!」

「は?」

「これかもしんない!」

「知らずに移ったのか?にしても運がいいな。」

「さぁ、どうだか?吉と出るか凶と出るか。何を封じたかさえ封じられたドッキリ箱といったとこかね。」

 短刀を真上に高く高く投げ上げた。

 太陽の光を反射して、キラリと鋭く光った。

 あぁ、封印の痕がクッキリと見えるじゃないか。

「封印の解き方は?」

「こちとらのかける呪いも封印も、みーんな解く時は決まって危ういんだ」

 真っ直ぐ刃先を下にして落下してくるのを口を開けて待っていた。

 それは喉を突き刺し、それでもドロドロと溶けていく。

 飲み込んだら血が口に溢れ出す。

「まぁ、、、こんなもんか」

「それは大丈夫なのか?」

「傷くらい直ぐに塞がる。問題は記憶の方」

 喉を指差す。

 此処、だと。

 脳内再生される記憶は多く、ゆっくり処理されていく。

 何が出るかはこれからだ。

 バシュッと身体から意識を切り離されて、ただ宙に浮く。

 霊体というに近い。

「へぇ、こりゃまた面白い」

「どうなってやがる?」

「どうやら、こちとらはあやかしだったらしい。」

「妖、、、だと?いや待て、お前のそれは知ってる。書物に載っていた」

「それが正しいとは言えないけどまぁ、待ってよ。まだ記憶の処理が、、、」

 だんだん、曖昧な風景がハッキリしてくる。

 これは、、、いつの話だ?

 いいや、妖なのはわかるけど、どの妖か、どれに属するか、、、。

 それじゃない、それでもない。

 ぐるぐると回るのが、ピタと止まれば酷い勘違いだったと気付く。

いにしえの大妖怪、じゃないのか?」

「そう、、、みたい。影猫エイネコって知ってる?」

「あぁ、わしがいっているのはまさにそれだ。まさか、それだと言いたいのか?」

「どうやら、封じていた記憶ってのはいくつかにバラけたもんじゃないみたい。全部、短刀にしまってたらしい。説明させてもらうよ。一気に解決に踏み込む」

「あぁ、頼む」

「こちとらは、戦国時代より過去の古の大妖怪、影猫という猫又ねこまた。時の門を開く妖術を持って、様々な時を歩く。人間等に取り憑いては世を動かすことが出来る。こちとらが今までやってきた開門かいもん術は、そもそも元から出来たのにその方法さえ封じたばっかりに生み出す必要が生じて新たに作り出されたものだったわけ。ここまではいい?」

「長いな。」

「じゃぁ、やめようか?」

「言え。お前の長話は好きだ」

才造サイゾウだけだよ、、、そう言ってくれるお人なんて、、、」

 ぞく、、、

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