正体
「
「おぉ、で、なんだったんだい?」
「
「天狐!?っていうか、黒竜の子供!?黒竜って言ったら、あの!?」
「そうよ!凄いじゃない!!」
二人で盛り上がる。
それを裏音は欠伸をしながらソファから見つめてきている。
黒竜といえば、竜の中では最も強く賢いのだ。
他の竜とは違って、真っ黒な鱗と、手足そして翼に刃のように鋭い角か爪のようなモノを生やしているのが特徴だ。
そして天狐は、
妖自体が数が少なく珍しいが、天狐となればもう珍しいどころじゃない。
絶滅危惧種、が正しい。
世界単位で数匹いるかもういなくなってるか、ってくらいで、目にすることはない。
だから、もし出会ったり、見てしまったらこの二択の前兆だという噂まである。
その二択とは、「幸福の前兆」と「絶望の前兆」だ。
神の使いだと古くから言われているんだけど、実際はそうじゃないらしい。
九尾の狐に翼が足されただけの姿ではあるけれど、まったくの別種類らしい。
「それでね、天狐っていうのは九つの力を持っていて、使う力によって目の色が変わるんだって!闇、光、氷、水、風、雷、炎、葉、そして
「そうなのか!凄いんだな!裏音!」
「、、、?おう!」
わかってないようだけれど、返事はしてくれる。
今は小さいサイズになっているから、可愛いもんだ。
「でも、書物にあった姿とちょっと違うのは、黒竜の影響でしょうね。ほら、黒竜にある翼や手足の刃が、天狐の裏音に生えてるし」
「本当だ。あぁ、それと目がそれぞれ違うね」
「片方が黒竜の目なんでしょうね。」
まじまじと見られるのが居心地悪いんだろう、顔を伏せてしまう。
「あぁ、ごめんごめん」
取り敢えず、裏音の正体が黒竜と天狐の掛け合わせだってことはわかった。
普通の天狐というより、別名が付きそうだ。
「それと、裏音はまだ大人じゃないみたい。通常の天狐より一回り大きいようだし」
「えぇ!?まだ子供だったのかい!?」
「ビックリよね。でも、本当なのよ」
バサバサと数回羽ばたいてから、ペロペロと翼を舐め始める。
毛ずくろい的な感じかな?
ノックが聞こえて、何も言わずに入ってきた。
こういうのは、
「
「まぁ、そうだけど」
「裏音を借りてもいいか?」
「何かあったのかい?」
「あぁ、俺のとこでちょっとな」
「今、毛ずくろいしてるよ」
裏音の方を見ながらそう答える。
裏音は変わらず翼を舐めている。
「毛ずくろい、、、か?」
「羽根ずくろい?まぁ、取り敢えず途中で邪魔しちゃうのはあんまりよくないんじゃないかなぁ?」
「何かあったのか?」
「俺、食べられかけたんだよね」
「お前、裏音に食料として見られてないか?」
呆れたようにそう返されて、ちょっとそうかもしれないな、、、と思ってしまう。
これじゃぁ、どっちが上司なんだか。
「裏音、仕事を手伝ってくれないか?」
「とーしろー、きょか、でた?」
「いいか?」
「構わないよ」
「たった今出た。来てくれるか?」
「おう!」
零の肩に飛び乗ると、翼をたたんだ。
慣れた様子なので、何処か見えないところで仲良くしてたりするのかもしれない。
少し悔しいなぁ。
「裏音ー、零の言うことちゃんと聞くんだよー?」
「おう!」
零は肩に裏音を乗せたまま、部屋を出ていった。
「いいの?そんなに気軽に自分の部下を借しちゃって。」
「まぁまぁ。零だから」
「確かに同じ隊だし、信頼感はあるけど、あんまり借してたら向こうに懐いちゃうわよ」
「そんなことない、、、で欲しいかな」
「自信じゃなくて、願望なのね」
珈琲を飲み終えると、少しの雑談をして希空は部屋を出ていった。
さて、希空も裏音もいない。
その間に書類処理をするかな。
それとも、調べ物を済ませるかな。
36番隊が
1番隊から9番隊は第一特殊部隊。
10番隊から19番隊は第二特殊部隊。
第一特殊部隊が対応を投げた仕事を拾い上げる、なんて雑なことを言われてる部隊。第一特殊部隊が様々な理由で第二特殊部隊に仕事を回すからそれを延々とやるだけ。それでも死者怪我人はそれなりに出てくる。
20番隊から29番隊は特殊研究部隊。
親玉のことから
そして30番隊から39番隊、俺たち36番隊が含まれるこの範囲は、全般部隊。
取り敢えず、何でもやりますよ、って部隊。
一番ゆるーい部隊だ。
何でも出来る範囲ならばどんな仕事もやるからくれ、というやつ。
勿論、そこそこ強い部隊だから特殊系でもサポートくらいは出来るぞっていうやつだからサポート部隊とも言われてる。
1番隊から29番隊の雑用をやって、40番隊から以降の援助をするような感じだ。
40番隊から49番隊は普通戦闘部隊。
延々と出てきた雑魚をぶっ潰すだけの仕事。
強敵は上の部隊へ任せて雑魚処理はこの部隊。
地味に人数が多いから、あんまり困らない。
50番隊から59番隊は、普通研究部隊。
小さいことから特殊に入らないぎりぎりの範囲までの研究をする。
内容は俺たちの隊は用がないというか、利用はほとんどしないから曖昧にしか把握していない。
そして60番隊から65番隊は特殊医療部隊。
特殊な傷や呪い、病にかかった隊員を誰彼構わず治療する部隊。
細かいことはまだ知らない。
なにせ、未だに世話になったことがないからだ。
66番隊から70番隊は普通医療部隊。
ただの病気、怪我等の治療するところ。
何気に俺はこっちの方が世話になっている。
ちょっとした怪我しかしないからだ。
この機関は、1番隊から70番隊がある。
それぞれ隊の人数が違うから、部隊の人数も違う。
俺たち
この機関は世界中何処にでも出動するからこの前たまたま近かったけど、外国へ飛ぶことも珍しくない。
特に、36番隊と32番隊は何故か外国へ向かわされる仕事を受けることが多い。
隊の中にも隊長がいて、その人が誰をそこに向かわせるかとかを決めるし、俺はその指名を受けることは少ない。
だって、まだ部下持ってなかったし、今もまだたった一匹しかいないんだ。
だから部下が増えるまでは指名はないだろうな。
残念!
この機関の名前といえば、知らない人はいない(一般人を除いて)と言われているくらいの有名さ。
微妙だけど。
というか機関の本拠地は、此処だけどいろんな国にサブ拠点を幾つか置いているから、外国に出動する時は一番近くの拠点を利用することになっている。
勿論、サブ拠点にもそれぞれ部隊はあるけど、そこともヨロシクしている
ほとんどが、、、研究部隊と医療部隊だということとか。
サブ拠点にいるほとんどの隊員は、まだ経験が少なかったり技術が足りなかったりの入隊したばっかの者が多くて、本拠地に入るのが夢だと頑張っているって感じ。
いや、勿論、本拠地から遠征にきた俺たちみたいなんを受け入れる為にプロだっているけど、戦いには向いてないのがいっぱいいるってことだ。
だから、簡単にはサブ拠点は本拠地の隊員からしたら宿代わりとか休憩所的な感覚なんじゃないかな?
俺の後輩もサブ拠点で頑張ってるし、俺の先輩もサブ拠点で本拠地からの遠征を待ち構えてるし。
裏音は、地下最奥の牢屋に居たから本当は出発地点で正しいのは
っていうか、懐かしいなぁ。
俺もサブ拠点にいたんだった。
サブ拠点で経験を積んでも、どれだけ強くなっても、本拠地に行けない奴は勿論居る。
本拠地から遠征に来た俺たちやサブ拠点の様子見に行った上司から指名されて「本拠地に来い」ってならない限りは一生サブ拠点で仕事をするんだ。
俺はその様子見できた上司に指名されていきなり36番隊に組み込まれたから今まで部下持たずだった。
理由なんてわからないけれど、奇跡だと今でも嬉しい。
ノックが聞こえた。
「はーい、どうぞー」
「お邪魔しまーす!」
「おや?君は初めて見る子だねぇ」
「はい!この前この本拠地にご指名で入りました!
「そっかそっか、よろしくね」
「はい!それで、是非冬志郎さんの部下になりたく!」
「それは嬉しいけど、直ぐには無理かな。俺の部下が帰ってくるまで待ってくれるかい?」
「わかりました!何時間でも待ちますよ!」
「ごめんよ」
「いえ!気にしないで下さい!」
さて、裏音が嫌がらなかったら新しい部下として迎えようかな。
裏音だけは絶対だし、手放せないね。
なにせ、黒竜の天狐だ。
上司の言うこと無視して無理矢理部下にしたんだから、裏音を基準に決めよう。
俺、判断緩いし、、、。
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