挨拶
朝になり、
何処へ行った?
キョロキョロと部屋を見渡して、後ろを振り返ったら、天井に座る裏音が居た。
「裏音、ビックリするから、こういう部屋の中では逆さまになっちゃダメだよ」
「
翼を広げるので、飛ぶのかと思ったら、そのまま床にしゅたっと降りただけだった。
変化に体力は要らないみたいに、相変わらずその姿のままだ。
構わないけど、仕事時にバテちゃったら意味が無い。
「さて、挨拶にいこうか」
「
音もなく着いてくるから、時々チラチラとちゃんと来ているか確認する。
そんなに静かに歩くのか。
気配もさっき無かったから、敵に気付かれずに仕留めるのも出来るんだろう。
廊下を歩いていると、裏音を見た人がヒソヒソと何かを言っている。
裏音は俺の半歩後ろを歩く。
チラと見れば、目の色が青く変わっていた。
目の色は何を示すのだろう?
「皆、トウシロー、味方?」
「うん、一応ね」
ドアの前に立ってノックする。
「36番隊の
「入れ」
ドアを開けて入る。
裏音がドアの前で固まって、入っていいのかどうか迷った顔をしているので手招きをした。
「新たに部下として、36番隊に加わりました、裏音です」
「そうか。獣人族だな?」
「いえ、裏音によれば、変化している姿なだけであり、
「妖?敷地内にいない筈だが。何処から連れ出した?」
「地下の最奥の牢屋です」
「何!?そこにいるのを連れ出しただと!?危険だと、思わなかったのか!?」
「裏音はいい子ですよ。俺に任せて下さい」
「いいや、認めん。事が起こってからでは遅いのだぞ」
「ですが、貴方は敷地内であれば誰でも良いと許しを既に俺に与えています。ですから、変更は致しません」
「、、、フン。なら、ソイツを使いこなしてみろ。過去にソイツが何をしたか、勉強するんだな」
「はい、有難う御座います。それでは失礼します」
一礼して、部屋を出る。
相変わらず、姿すら見せてくれない上司だ。
わからない。
あんなに暗くして、ライトを俺だけに当てる必要はあるんだろうか?
まぁ、いいか。
「裏音、仕事場に行こうか」
「
目の色は赤に戻っている。
もしかして、感情が目に出るのかな?
そうだったら、さっきは緊張とかしてたのかもしれない。
「おはようございまーす」
「おはよう、冬志郎。遅いじゃん!」
「ちょっと上司にご挨拶に」
「何そいつ。いたっけ?」
「裏音っていうんだ。新しい部下だよ」
「へぇ。獣人族を部下にするなんてあんたやるじゃない」
「妖だけどね」
「嘘でしょ!?だってそんな珍しいの普通いないよ!!」
「嘘じゃないさ。なぁ?裏音」
「
まじまじと見られて、裏音は顔を背けた。
嫌そうだ。
「そんなに見ないでやってくれ。嫌そうだろう?」
「ふーん、ま、妖だろうが獣人だろうが仕事出来なかったらしばくけどね!」
「それはやめてやってくれないかい?」
大きな銃を抱えて不機嫌そうに、
愛は、36番隊の中でも結構強い。
俺はやっと部下を持ったくらいだから、そんなに強くはない。
「ほら、
「わかったよ」
「敵、来る?」
「うん、そうだよ。
「機械。水、効く、か?」
「それが、効かない
「
裏音は目の色を様々に変えて、尾を揺らした。
やっぱり何を表しているかはわからない。
[36番隊、出動せよ]
「行くわよ!」
「街のど真ん中だね」
裏音を振り返ると、翼を広げてバサバサと羽ばたいて閉じた。
飛べないのか、準備運動的な何かなのか、これも謎だなぁ。
「裏音、行くよ。街の中心部で
「遠い?」
「うん、遠いよ。だから、」
「我、飛ぶ。トウシロー、我、乗れ」
裏音は姿を大きな獣へと変えた。
獣、、、で合ってるよな?
翼も倍以上に大きくなる。
凄い、、、。
飛び乗ってみれば、裏音は走って飛び出し、翼を広げて滑空した。
他の36番隊の皆よりも出遅れたのに、直ぐに追いつく。
「なにそれ!ズルくない!?」
「俺の部下だからなぁ」
「乗せなさいよ!」
「裏音が良いっていったらね」
ヘリを追い抜いて、目的地へ一足もふた足も速く向かう。
風を直接受けるけど、その風が気持ちいい。
双剣を構える。
見えてきた。
「裏音、わかるかい?アレだよ」
「
裏音はまっすぐ
俺が切り刻みに離れようとした時だった。
裏音が火玉を
「裏音って、炎を扱えるのかい?」
「
クルリと向きを変えて、ビルにガシリと足をついて停った。
翼をたたんで、キョロキョロと周囲を見て探している。
裏音が透けていることに気付いたのはその時だ。
ビルの中の人達は、裏音に気付いていない。
裏音を透かして外を見ることが出来ている。
それのついでに俺のことも見えていないようだった。
妖の力なのかもしれない。
裏音はまた空中へと飛ぶ。
ガバッと大きく口を開けて、
そして首を左右に振って食いちぎる。
バキ、バキ、と音を立てて噛んでいる。
「飲み込んじゃダメだよ?」
「
吐き出すと、それはドロリと溶けて消えた。
待ってくれ、俺、全然働いてないぞ!
裏音が狙うのとは別の
首を落として、核を狙って突き刺した。
核が何処に埋め込まれているかは経験の目でしか探せない。
裏音のように全てを一気に潰せるのなら早いけど、俺はそうはいかない。
落下する俺を裏音がその背中で受け止め、上昇した。
「もう終わりよ!」
「あれ?早いなぁ」
「あんたンとこのがほぼ片付けたからね!あんたより有能よ!」
「酷いなぁ」
笑いながら帰還する。
やっぱり、裏音は速い。
誰よりも速く戻れたが、出入りの穴に入り切れない裏音はそこでガシリと掴まって、翼をたたんでよじ登った。
翼をたたんでやっと入れる。
狭く感じたのはきっと、
これじゃぁ、俺の部屋には入れないなぁ。
味方も遅れて帰ってくる。
「無駄に大きいわね」
「変化を解いたからね」
裏音の頬を撫でながら、どうしようかと考える。
今回この程度で済んだけど、もっと動くとしたら肉が必要だな。
でも、裏音はどっちの姿で食べるんだろう?
ガバッと口を開けたので、なんだろうと思ったら、パクリと頭を食われた。
「わー!?裏音!ダメだって!食べないで!?」
「食われてどうすんのよ」
解放されたと思ったら、翼を広げようとする。
「ちょちょっ、裏音!此処で翼広げたらダメだって!!」
「
広げかけた翼をたたんで、伏せをする。
裏音で凄いこの部屋を取ってしまっているが、仕方が無い。
「その新入りをどうにかしろ」
「どうにかって言われてもなぁ」
「片腕食われてるぞ」
「裏音!?」
ガジガジと左腕が噛まれている。
お腹が空いたんだろうか。
「人を食べちゃダメだよ?」
「
口を離して尾を揺らす。
よく見れば尾で隊員が巻き込まれている。
「あー!?大丈夫かい!?」
「いや、構わないでいいから。凄い、、、ふわっふわ、、、」
「楽しんでいるなら、、、いいのかな?」
「で、新入りは小さくならんのか」
「裏音、変化してくれないかな?こう、小さく」
「
ぼふん、と煙を上げて小さくなった。
のは、いいけど最初出会った時とは違う。
というか、さっきの獣の子供版みたいな、猫くらいの大きさになっている。
やっぱり翼も大きさに合わせて小さくなってるんだな。
「小さくなると可愛いもんだな」
「うちの子を連れ帰ろうとしないで欲しいかな」
「安心しろ。世話は出来る」
「そういう問題じゃないんだけど!?」
「裏音と言ったか。俺のところへ来るか?」
首をかしげている。
そして、口を開けたかと思うと火を吐いた。
もう少しで顔面火傷を負うところだったのに、
「火を扱うのか。それは便利だ」
「おう」
「このサイズになると、声の調子も変わるな」
「もうそろそろうちの子返して欲しいんだけどなぁ」
溜め息をついて、抱っこしていた裏音を返してくれた。
のは、いいんだが何故かよじ登って頭の上で満足げに落ち着いた。
「俺も腕の中に収まってくれよー」
「いいじゃねぇか。頭の上でも」
クックック、と抑えた風に笑われる。
小さな翼をバサバサと羽ばたかせながら、尾を揺らす。
サイズはいくらでも変えられるのなら、本当に便利だなぁ。
「あ、そうだ、食堂に行こうか」
「その前に頭を食われるなよ。既に噛まれて血が出てるぞ」
「うわぁ!?ダメだって言ったのに!」
「お前、痛覚が鈍すぎないか?」
零にそう呆れられながら、食堂へ向かった。
「よぉ、なんだそのチビは?」
「部下ですよ、先輩」
「部下?ペットの間違いじゃねぇのかぁ?」
「いな!」
「喋ってるのか、鳴き声わかんねぇな、おい」
「われ、ぶか!」
「一応、喋ってるんですけど、このサイズになると声も幼くなるようで」
「このサイズ?じゃぁ、もとに戻るとどうなるんだ?」
「デカイんですよ。ですから、小さくなってもらいました。人型にもなれるんですよ」
「じゃぁ、なってみろよ、チビ」
「おう!」
ぼふん、と煙が上がる。
煙が消えればあのカッコいい姿に戻った。
うん、俺としてはやっぱりこれが一番しっくりくるなぁ。
目付きが悪いせいか、先輩を睨んでいるように見える。
「お、おう、、、。まったく違ぇな、こら」
「俺もそう思います」
「チビ、、、じゃねぇな。お前名前は?」
「我、裏音」
「そうかよ。じゃぁ、リオだ」
「、、、貴様、名前、何」
「結構な口だな。オレは、ローズっていう。」
「ろーず?」
「そうだ」
「覚えた」
あ、また目の色が変わった。
先輩はそれを見て笑う。
「便利な目だなぁ。それ」
俺と裏音は一緒に首をかしげた。
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