第29話 襲撃犯の正体
扉の向こうへ背を向けた状態で息を潜め、再び相手の出方を伺うエレン。すると扉の向こうから、二人の男性の声が聞こえてきた。
「…なあ、まだ起きてないんじゃねぇの?」
「でも、俺らがここで待ち続けるのも時間の問題だぞ」
「そうだけどさぁ…」
「あまり大声も出せないから、手短に済ませねぇと…エレン! エレン・ティリアス! 起きているのなら、返事をして欲しい。君に何かをする訳じゃないんだ。ただ、話を聞いてもらいたい」
「…おい、それ傍から聞いたら、逆に何かするフラグだぞ…」
「えっ!? そうなの!?」
(この声…何処かで聞いたことがあるような…でも何処で聞いたんだっけ…?)
聞き覚えのある声にエレンは少し警戒を解き、力を抜いた。その様子を見ていたミントも威嚇をやめ、ベッドの上に座り込む。意を決して扉を開けようと、ノブへ手を伸ばすエレン。すると、扉の向こうから、また別の声が聞こえた。
「…何してるんですか、二人とも…」
「「うわぁっ!!」」
(あれ…? この声…)
「…エヴィ君…?」
「あ、エレンさん!」
気付いた時には、エレンは何の躊躇いも無く部屋の扉を開けていた。扉を開けた先には、先ほどの声の主であろう少年ら三人が、軽く驚いた表情でこちらを見ている。そのうちの一人、エヴィはすぐに安心したような笑顔になり、エレンに対し軽く会釈をした。そんな様子を見て驚いていた他の二人に対しても、エレンはもう警戒していなかった。
「えっと…確か以前お会いしました…よね…」
「へっ!? あ、あぁ…あれは…会ったというか…」
「オレらが仕掛けたって言う方が正しいような…」
「エレンさん、こちらマーベラさんとヘラスさんです」
どこかしどろもどろしている二人をよそに、エヴィは丁寧に彼らを紹介した。するとエレンは、柔らかく微笑み、快く三人を部屋へ招き入れた。
「以前の襲撃や皆さんがエデンに居る理由は、何か事情があるんですよね? とりあえず、部屋でお話を聞かせてください…あ、私の部屋じゃないので、こんなこと言うのもおかしいですが…」
「え…そんな、俺らのこと簡単に信じちゃっていいの!?」
「騙してるかもしれないんだよ!?」
「お二人はそんなことしませんよ。だってエヴィ君がいますし、それに、あの襲撃の時から、アールの知り合いだということは気付いてましたから」
「「お…お察しの通りで…」」
エレンの推測に唖然としている二人を見て、傍らでエヴィが声を抑えて笑っていた。そして促されるままに、三人は部屋へ案内された。
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