第30話 行方をくらませていた理由(ワケ)
三人が椅子に座ると、エレンだけはベッドへ腰掛けた。彼女の隣には、先ほどから部屋に入ってきた三人を警戒するように見ているミントが座っている。それを見たマーベラとヘラスは、突然椅子から立ち上がった。
「み、ミュレー!?」
「どうしてここに!?」
「え? あぁ…私がここに連れて来られる時に一緒にいたので、巻き込んじゃったみたいで…」
「マーベラさん、ミュレーがどうかしたんですか?」
「…っ」
エヴィの素朴な質問に、二人は「どうする?」と相談している。そして、ヘラスが重々しく口を開いた。
「ミュレーの持つ魔力は、"あいつ"にとって、エレンと同じく都合の良い"材料"に過ぎない…今回の目的はエレンだが、ミュレーもいるとわかれば、必ずその子も利用される。あいつに見つからないよう、その子は早くガーデンに帰してあげるべきだ」
「あのっ…"あいつ"って誰なんです? 私は一体何の為に連れて来られたの…!?」
「エレンさん…」
「きゅーー!!」
「んがっ!?」
エヴィがエレンを宥めようと立ち上がるのと同時に、ヘラスの額にミントが突然頭突きをかましていた。
「ヘラス…大丈夫か…?」
「な、なんとか…」
「ミント! ダメでしょう、そんなことしちゃ…」
「きゅー! きゅー!」
「なんか…怒ってます…?」
「ミント?」
「…ヘラス、お前がこの子を帰した方がいいって言ったことに怒ってるみたいだぞ」
「みゅ!!」
「え、マジで…? でももし見つかったら危な…てかマーベラちょっと待て。何でお前ミュレーの言葉がわかった?」
ヘラスの言葉に、一斉に視線がマーベラへ向く。しかし、当の本人はきょとんとしている。
「え…さあ?…なんとなく…?」
「なんとなくでわかるもんか!? 今の!」
「ミント、今マーベラさんが言ったことは合ってるの?」
「みゅ!」
「…合ってるみたいです…」
「そうか…じゃあマーベラ、引き続きミュレーの通訳よろしく」
「通訳!? いや今のは偶々であって…」
「大丈夫、お前ならできる!」
「やめろその謎の自信!」
「あの、お二人共…漫才はやめて、そろそろ本題に入りません?」
「…すんません…」
これから漫才でも始めそうな二人の間に、エヴィが割って入り制す。そしてエレンの方へ向き直り、話し始めた。
「それでエレンさん。先ほどおっしゃった通り、僕らは敵じゃありません。ここにいる三人の他にも、まだ何人かいるのですが、僕たちはガーデンのスパイとして、長期に渡る潜入捜査をしていたんです」
「ガーデンの…!? でもそんなことセラヴィさんは…」
「もちろん、副司令官以外のガーデンメンバーには誰にも話していないと思うよ。仲間内で連絡を取り合って、それがエデン側にバレたら作戦も失敗に終わるからね」
エレンが言いかけたところで、マーベラが引き継いで話した。すると突然、奥の窓の方から、また別の声が聞こえた。
「…そういうことだったのか…」
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