第16話 『人魚』の警告
「メリヴァさん…?」
シェリーとセーラを呼び止めた女性──メリヴァは、じぃ…っと二人を見据えた後、ゆっくりと話し出した。
「シェリー、私と一緒に司令官からお呼びがかかってるわ。来て頂戴」
「えっ…あ、はい! セーラちゃん、ごめんね! また今度!」
「はい、行ってらっしゃい」
シェリーは慌ててメリヴァのもとへ駆け寄り、司令官室へ向かった。それを見送り、セーラも自室へ戻っていった。
普段、あまり誰とも交流を持たない彼女から声をかけられたことで、少なからず動揺を隠せないでいるシェリー。互いに何も話さないまま、だんだん司令官室が近づいてくる。ふと、もう目の前に目的地が見えるというところで、メリヴァが立ち止まった。
「?…メリヴァさん?」
「…シェリー…」
先に進んでいたシェリーは、立ち止まったメリヴァのもとへ戻る。何か具合が悪いのか、と心配していたところで、思いもよらない言葉が投げられた。
「…エレンのことは、もうこれ以上詮索しない方がいいわ」
「!? どういう、こと…ですか?」
「そのままの意味よ。根掘り葉掘り彼女のことを知ろうとしても、ただ彼女を傷つけるだけ…妹であるあの子も同じ」
「…まさか、それを言うために私をここまで連れてきたんですか?」
「そうね…あれ以上あの話題を続けていたら、セーラを苦しめるだけだったからね…それに、わざわざ"それ"を隠している彼のことも…」
「あなたは…! メリヴァさんは、エレンの何を知っているの!?」
「……」
シェリーが声を荒げる。先ほどセーラと話している時にも言っていたが、シェリーはエレンとの付き合いが長い。メリヴァとは、もちろんガーデンに入ってから知り合ったため、付き合いの長さ故にエレンの事をよく知っているのは、当然シェリーの方だ。
それなのに、まるでエレンの『秘密』まで知っているかのような口ぶりに、シェリーは気が気じゃなかった。困惑しているシェリーを、メリヴァはまたじっと見据えてから、落ち着いた表情で口を開いた。
「…『エレン』のことについては、もちろん知らないことの方が多いわ…でも私は、──…のことは知ってる」
「…え?」
「これ以上言わないわ。あまり深入りしすぎて、狙われないよう気をつけなさい」
「えっ…ちょっ…」
シェリーに何かを言わせる間もなく、それだけ言ってメリヴァは来た道を戻って行ってしまった。その場に一人残されたシェリーは、ただただどうすればいいかわからずにいた。
(メリヴァさんは、エレンの一体何を知っているの…!? 私が知らない事…確かにエレン自身が隠していることだって少なからずあるわ…あの子だって、全部を話してくれているわけじゃないもの…でも、なんでそれをメリヴァさんが知っているの? 私やエレンがガーデンに入ったのは初等部の頃…その前からあの人とエレンに関わりがあったとは、到底考えられない…じゃあ、どうして…)
シェリーはひたすら考えをめぐらせて悩んでいた。廊下の真ん中で一人悩んでいる彼女を、離れたところから気配を消し、まるで監視しているかのようにメリヴァが見つめていた。
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