第12話 明かされぬ真実

 なるべく破片を踏まないよう注意しながら、近辺の調査を始める二人。近くにあった林も見てまわり、草原の方へ戻ろうとした時、アールが異変に気付いた。


「エレン、気をつけろ…誰かこっちに向かってくる…」

「え…っ」


 アールの言うとおり、林の奥から、何者かの足音が聞こえてくる。澄まして聞くと、二人分の足音であることがわかる。エレンとアールは背中合わせになり、じ…っと神経を張り巡らせる。

 そして、突如茂みの中から銃声が聞こえ、二人に向かって発砲された。それをアールがとっさに結界で弾く。


「エレン!!」

「っ!?」

「さぁすがエリート。反応が違うな」

「…お前…!」


 声と共に、茂みの奥から、マントを纏いフードを目深に被った二人の男が現れた。一人の手には、先ほどの発砲元であろう拳銃が、微かな煙を立てて握られている。もう一人は、創造して具現化した剣を取り出した。


「まさかこんなところで会えるとはなぁ…なあ、アール?」

「…お前ら…ここの魔珠を盗みに来たのか? それとも、もう既に持っているのか!?」

「魔珠? あぁ…いいや、俺らは今日はまた別の任務で来たんだよ」

「別の任務だと?」

「そっ! 俺らの今回の任務は…」

「そこの"彼女"…エレン。君に来てもらいたい」

「えっ…!?」

「やはりそういうことか…!!」

「素直に彼女を渡してくれれば、おとなしく退散する。だが…」

「誰が渡すか!!」

「…だよなぁ…だったら…!」

「力ずくでも連れて行くだけだ!」


 マントを纏った二人が一斉に、アール目掛けて攻撃を仕掛ける。二人からの攻撃にも素早く反応し、的確に防いでいくアール。エレンも、彼が防ぎきれない分の攻撃を弾いて援護にあたった。そして、激しい攻防が繰り広げられている最中、エレンが先ほどから気になっていたことを聞いた。


「ね、アール! この人たちって!?」

「もちろん、エデンの奴だ!」

「そうじゃなくて! この人たちとは、知り合いなんじゃないの!?」

「…それは…!」


 アールがまた何かを言いかけたが、相手の言葉を引き金に、戦況が大きく変わった。


「さあ、アール! さっさと『女神の写し子』を渡せぇ!」

「…え? どういう…こと?」

「っ!!」


 剣を持った男の一言で、その場の空気が一気に張り詰めた。相手の二人も動きを止めて、不思議そうにアールを見ている。


「あ…アール…?」

「…せろ」

「「…っ」」

「…さっさと失せろ」

「!?…っ退くぞ!」


 相手の二人も、エレンも感じ取っていた。表立った激しいものではないが、静かで、それでいて強い怒りが彼から露わになっていた。それに危険を感じ、バタバタと去っていく二人。

 再びアールと二人だけになると、エレンはおずおずと彼に声をかけた。


「あ、あの…アール…?」

「…あぁ、怪我は無いか?エレン」

「私は…大丈夫……それより…」

「そうか、よかった…」

「えっ…あっ…!?」


 慌てふためくエレンをよそに、アールはホッとした表情で彼女の頭を抱え込む。そんな彼の行動に、終始エレンの心臓は高鳴っていた。

 そして…


「…ごめん」

「えっ…? 何、が……ぅっ」


 アールは、彼女の頭を抱えていた手で、そのまま首の裏に手刀を入れた。当然エレンは気を失い、彼の腕に倒れ込む。アールはそれをしっかり受け止め、抱きかかえた後、彼女の頭に手を載せ、光を浴びせた。


「…お前はまだ…いや、このままずっと知らなくていい…俺が…俺が守るから…」


 普段の彼からは、想像もつかないような震える声で、気を失っているエレンに呟いていた。彼女の頭から手を離すと、しっかりと彼女を抱えて大花盤に乗り込み、ガーデンへの帰路についた。

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